2022.04.27

栄地区の中心にスポーツによるまちづくり拠点『DOLPHINS PORT』が誕生…名古屋ダイヤモンドドルフィンズの担当者が語る設立の経緯と今後の狙い

4月28日、オアシス21内にオープンする [写真提供]=名古屋ダイヤモンドドルフィンズ
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 名古屋ダイヤモンドドルフィンズは、新たに設立したスポーツによるまちづくり拠点『DOLPHINS PORT(ドルフィンズポート)』が4月28日にオープンすることを受け、22日にメディア向けのオープニングセレモニーを開催した。

 名古屋Dが発起し、愛知県スポーツ局スポーツ振興課、名古屋市スポーツ市民局スポーツ推進部スポーツ戦略室、名古屋商工会議所商務交流部、一般社団法人Co Create Capsule、株式会社MTG Ventures 代表取締役の藤田豪氏(メンター)、中京大学スポーツ科学部スポーツマネジメント学科准教授の舟橋弘晃氏(メンター)、追手門学院大学社会学部スポーツ文化学専攻准教授の上林功氏(メンター兼名古屋Dアドバイザー)で地域共創プラットフォームワーキンググループを組成。地域社会の課題解決や活性化を地域自らがアップデートし続けられる仕組み「地域共創プラットフォーム」の構築を目指しつつ、誰もが集まりたくなるようなオープンスペースを提供し、「名古屋をもっと楽しく!」を合言葉にした様々なイベントを行っていく。セレモニー後、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ ドルフィンズポートプロジェクトマネージャーの園部祐大氏に詳しい話を聞いた。

ー改めて『DOLPHINS PORT』設立のきっかけを教えてください。
園部 Bリーグ開幕に伴うドルフィンズのプロ化から6年が経過しました。名古屋市の「栄地区グランドビジョン」に則り、ホームアリーナのドルフィンズアリーナがある名城エリア、名古屋市の玄関口でもある名古屋駅に加えて、栄地区と3つの拠点で様々なプロモーション活動を行ってきました。名古屋市では名古屋城天守閣の木造復元、リニア開通などが予定されており、3拠点の回遊性を高める計画を進められています。先行して名駅エリアの再開発が進み、次いで栄地区では公園の整備などが進んでいます。

クラブ創設以来、いきなりホームタウンである名古屋全域へプロモーションを図るにはそのエリアは広く、リソース配分が求められました。ビジネス的な意味も含めてプロモーション活動を図っていくために、なにか大義名分があれば、よりそれがプラスアルファの価値になります。そういったことも踏まえ、ここ6年間は「栄地区グランドビジョン」の名駅、栄、名城エリアを中心に力を入れてきました。ただ、取り組んできた内容としては、スクールを開校したり、商店街と連携してバナーを掲出したり、イベントに参加するなど、点と点を結ぶことは意識しつつも、一つひとつの点の活動であったように感じます。「プロのスポーツクラブとして本質的に求められているのはどのようなことなのか」。名古屋市民の立場でもある自分自身にそう問いかけてみたんです。自分から情報を発信できたり、発信した人の情報を見たりして、余暇の過ごし方を考えるような個人の主体性に重きを置かれる社会になってきていることを鑑みると、僕らがいいと思って、関わる方々もいいと思っていることに取り組んでいくのはもちろん大事です。ただ、名古屋の街を好きになるとか、名古屋の街が活性化していると、個人個人が感じるには少し距離がある。もっと多様な人を巻き込み、主体的に一緒に取り組めることが求められるなと、ここ2年ぐらいで感じてきました。そこで出てくるキーワードが「地域貢献」ということから、「地域共創」になると考えています。

ー今回のプロジェクトはいつ頃から動き出したのですか?
園部 地域共創の議論については約2年前からありました。国内では横浜DeNAベイスターズさんの『THE BAYS(ザ・ベイス)』が共創的取り組みの代表例です。プロ野球とBリーグでは歴史が違うので、『THE BAYS』をそのまま名古屋で展開するのは、クラブのまちへの浸透具合や名古屋の風土や気質から難しいのではないかという議論があって。まずは多様な人を巻き込む土台づくりから必要ですし、スポーツによるまちづくり、すなわち本質的なエリアマネジメントに取り組むには、僕らプロスポーツクラブだけではなく、行政や経済団体と横並びに、ともにこのプロジェクトを進めていくことが必要だなと。そしてスタートアップ支援など名古屋の未来をつくりあげていこうとされている方をはじめ、共創というわかりづらい概念の成果や価値を可視化できるような研究に取り組まれている方々にメンターとして関わっていただきながら、一緒になって取り組むのが大事だということが明確になっていきました。

ー栄地区では近年、ヒサヤオオドオリパークが誕生するなど賑わいを見せていますよね。
園部 久屋大通公園が整備され、ヒサヤオオドオリパークができたのは、名古屋市が進めている「栄地区グランドビジョン」に沿った取り組みの一つです。もともと、栄町駅前に装飾を施させていただいていますし、このエリアに、オアシス21が20周年を迎えるこのタイミングでオープンスペースを構えるのは意義がありますし、今後大きなつながりが出てくると思っています。

栄町駅には様々な装飾が施されている [写真提供]=名古屋ダイヤモンドドルフィンズ

ーこの拠点の名称は『DOLPHINS PORT(ドルフィンズポート)』です。一般市民や企業の方々にクラブ名を周知させるためにはとても大きなことだと思いますが。
園部 このテナントの中では、実はロゴを一つも常設で掲出していないんです。プロスポーツクラブがテナントに出店する場合、多くのロゴが掲出され、クラブカラーに染まった店を連想すると思いますが、あえてそれはしていません。ファンの方々に集っていただくコミュニティーはホームゲーム会場に用意していきます。社会課題の解決、地域社会の活性化に、一緒になってやってくれるような方々との出会いの場という位置づけにしているので、公園であるオアシス21の公園エリアが拡張された空間くらいにふらっと立ち寄ってもらえるようにしています。とはいえ、店舗名は何の脈絡もないネーミングも違和感があるかなと思い、社内で議論を進めた結果、『DOLPHINS PORT』に決めました。様々な人が集まる場、集まった人たちの交流が生まれる場にしたい思いから、交易、港を表す「PORT」という言葉を入れました。港は海との親和性も高いので、『DOLPHINS PORT』と名付けました。

ーWi-Fiと電源が完備された施設の利用が無料です。すごく魅力的な施設だと思いますが、コスト面での心配はないのでしょうか?
園部 経営理念に紐づく中長期の経営計画に資するものですけど、短期的なビジネス面も意識しています。新B1リーグ参入に向けたライセンス判定が2年後に迫っている中、売上基準と入場者数が達成できていない状況です。直近の大きな課題ですが、ここへのアプローチとしてもこのオープンスペースはすごく機能すると思っています。質問いただいたように、使ってみたいと思ってもらえて、実際に足を運んでもらえたらいいですね。先ほども言ったように“ドルフィンズ感”をあまり出さず、拡張された公園の一部のようにしていることで、入りやすい空気感を作られているのではないかと思います。入っていただいてWi-Fiを使うと、実はクラブの公式HPに飛ぶようになっていて、そこでまずはドルフィンズのことを知ってもらうタッチポイントを作っているんです。あとは、試合がある日にはプロジェクターを使って試合映像を放映するとか、ウォーターサーバーのカップにロゴをそれとなく入れるとか。「ここは居心地が良くて、使いやすいな」と、単純に便利と思ってもらう中、まずはドルフィンズを知ってもらうきっかけを作れたらと考えています。加えて、栄町駅の装飾も、ここから徒歩2、3分の通行の導線上にあるので、「あそこで見たロゴはこれと同じだ」というように、単体で完結させず、エリア全体の連帯から認知を獲得し、イベントなどから興味や関心も獲得するテーマも持っています。

ー新B1への強い思いがあるということですね。
園部 新B1にはファンをはじめとする多くのステークホルダーから期待いただいているので絶対に参入しなければならないです。新B1のライセンス基準は事業力が問われています。ここを上げるための投資が必要だという判断で、コロナ禍という難しい状況ですが、今から取り組んでいかないと間に合わない危機感を強く持っています。

齋藤拓実選手発案のプロジェクトなどが予定されています。今後の展望などを聞かせてください。
園部 齋藤選手のプロジェクトに関しては渡りに船な話でした。彼があるテレビ番組を見た時、高校生らが自分の当時と比べて、新型コロナウイルスの影響によって青春を謳歌できていないことを知って、「何かできることがないか考えたいのだけれど」と相談してきてくれました。それがたまたま『DOLPHINS PORT』設立の発表と同じ日でした。「実はクラブではこういうことにチャレンジするんだけど、拓実が考えたことを提供するのももちろん喜ばれると思う。けど、せっかくなら高校生たちと一緒に考えて、一緒に形にしてみるのはどうだろう」と提案したところ、創り上げていく過程も青春だとすごく共感してくれて。このプロジェクトは齋藤選手が主催し、クラブや共創プラットフォームワーキンググループは主管や共催といった立場です。主管、共催する視点からは「これからどういう価値が生み出されていくのか」。注目していただける重要なものだと思っています。選手から社会課題に貢献したい想いが自発的に出て、それを最初のプロジェクトとして一緒に進められるのは非常にありがたいです。今回は新型コロナウイルスに対する社会課題に対してプロバスケットボール選手と取り組むことですけど、名古屋市はもちろん、愛知県、名古屋商工会議所やメンター方々がいるので、バスケットボールに関わらない課題に対しても解決に資する価値を生み出していける姿を目指したいと思います。課題解決というと堅苦しいので「つくりたい未来をつくっていく」と視点を少し置き換えたら、楽しみながら地域の人たちと一緒に取り組んでいけるのではないかと思います。

『DOLPHINS PORT』自体、もっとこうだったら使いやすいなど、取り組んでいくことで、あるべき姿が見えてくると思います。集まる場づくりも利用される方と一緒に考え、つくっていきたいと思いますし、定期的に行うプロジェクトでは楽しく取り組めれば、取り組んでいく過程で自分から今ある課題を考えたり、できることを行動したり、まちの発展に向けて主体性を持つ人が増えていくのではないかと思います。そして、この取り組みが浸透していけばドルフィンズも応援してくれるようになる副次的効果も得られるだろうと思っています。最終的には地域の方が主体となって、自分たちのまちを楽しみながら良くしていけるような仕組みを作っていくことを「地域共創プラットフォーム」のゴールに、取り組んでいきたいと思います。

■『DOLPHINS PORT(ドルフィンズポート)』

・施設概要
DOLPHINS PORTはWi-Fiと電源を完備(利用無料)し、どなたでもお気軽にご利用いただけるよう休憩スペースやテレワークスペース、会議スペースを設けております。

・場所
名古屋市東区東桜一丁目11番1号 オアシス21

・営業時間
10:00~20:00(年中無休)

・利用条件
どなたでも自由にご利用いただけます。

・その他
一部スペースは受付にて申請が必要です。

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