2022.05.16

自慢のホームで夢を絶たれた千葉ジェッツ…宇都宮はライバルの思いを背負い再びアウェー決戦へ

ライバル対決を制した宇都宮がセミファイナルへと進出した[写真]=B.LEAGUE
フリーライター

「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2021-22」のクォーターファイナル第2戦、初戦を落とした千葉ジェッツは動いた。

「昨日の出だしが悪かったですし、短期決戦ということもあり、何かを待つのではなく自分たちから仕掛けなきゃいけないという思いで変えました」

 レギュラーシーズン最終節に大倉颯太を抜擢したように、大野篤史ヘッドコーチは先発メンバーの変更を決断。「なかなか変えるのには勇気がいりましたけど、どうしてもそこしか打開策が見出せなかった」とも吐露した指揮官は、前日から大倉とジョン・ムーニーに代わり、ギャビン・エドワーズクリストファー・スミスに立ち上がりを託したが、またしても先手を取ったのは宇都宮ブレックスだった。

 最初の10分を終え、9-23。しかし、第2クォーター終盤に巻き返し10点ビハインドで試合を折り返した。「20点開いてもおかしくないような内容でしたけど、何とか10点差まで戻せたことはチームとしてポジティブに捉えて、第3クォーターの出だしからしっかり入ろうという話をしました」と富樫勇樹。その富樫の先制点からスタートした後半には一時4点差まで詰め寄り、試合の行方は最後まで分からなかった。

第4クォーターだけで11得点を挙げるなど、最後まで奮闘した富樫[写真]=B.LEAGUE

 千葉はキャプテン兼エースが“いつも通り”とも言える勝負強さを発揮し、逆転のチャンスを最後まで残し続けた。それでも、チャレンジャーとして敵地に乗り込んできた宇都宮はこれまで以上に激しく、強かった。68-71で迎えた残り12秒、遠藤祐亮に決められた3ポイントシュートが決定打となり、70-77でタイムアップ。この瞬間、千葉は2連覇への道が絶たれ、今シーズンの戦いに幕を下ろした。

 今シーズンの千葉は、レギュラーシーズンの60試合中15試合が中止を余儀なくされ、チーム作りが難航したことは否定できない事実だ。しかし、その点を踏まえてもホームゲームでは25勝2敗の勝率を残しており、過去のチャンピオンシップを遡っても船橋アリーナで敗退したケースはない。

「結果はどうであれ、ホームで連敗したことが一番悔しいですね」

 以前から「CSをホームでやるためにレギュラーシーズンを戦っているようなもの」というような発言を繰り返していた富樫が試合後に述べた言葉からも、第3戦まで持ち込む自信があったことがうかがえた。

遠藤の3ポイントシュートが宇都宮の勝利を確実なものとした[写真]=B.LEAGUE

 一方、敵地で会心の勝利を収めた宇都宮の安齋竜三HCは「今シーズン最高のゲームを2試合続けて、しかもアウェーでやってくれたことが本当に素晴らしかったと思います」と選手たちを称え、こう続けた。

「千葉さんのホームで2つ勝つことはすごく難しいことですし、逆に千葉さんが強いチームだからこそ、僕らも本当に向かっていかなきゃいけないというメンタルになれました」

 Bリーグ開幕以降、千葉と宇都宮は互いに認め合うライバルとして凌ぎを削ってきた。2016-17シーズンこそ、千葉をホームで破った宇都宮が初代王者まで上り詰めたが、その後は千葉が天皇杯決勝、Bリーグファイナルの舞台でも宇都宮を下して頂点に立った。過去5シーズンで多くの悔し涙を流してきたのは、宇都宮の方が多いと言えるだろう。

「宇都宮は天皇杯も(Bリーグ)ファイナルも僕らと反対の思いをしてきた中で、今回はワイルドカードからですけど、かなり強い気持ちを持って千葉に乗り込んで来たと思います。でも、近くにこういう関係性があるクラブがあることはすごく大事だと思いますし、今後もたくさんの試合を重ねていくと思うので、今回ホームで負けた悔しさを来シーズンしっかり晴らさなきゃいけないと思っています」

 2015年から千葉に在籍する富樫がそうコメントすれば、Bリーグ初年度から千葉を率いる大野HCもこんな言葉で宇都宮への思いを語る。「1年目に宇都宮さんのホームでズタボロにされたときから、勝つためにはあの強いメンタリティーが必要だと感じてやってきましたし、常に意識して戦ってきた相手です」。

リーグ連覇の夢を絶たれた直後でも、選手たちはブースターへの挨拶を欠かさなかった[写真]=B.LEAGUE

 チャンピオンシップを勝ち上がるということは、無念にも敗れた相手チームの想いも背負って次に進むことでもある。宇都宮が「B.LEAGUE SEMIFINALS 2021-22」で激突する川崎ブレイブサンダースも、満身創痍の中で死力を尽くした名古屋ダイヤモンドドルフィンズの勇姿に刺激を受けたに違いない。

 2度目の栄冠をつかむため、宇都宮は1週間後に再び敵地へ乗り込む。試合後、コート上で安齋HCと健闘を称え合った大野HCは、こんな言葉を送ったようだ。

「おめでとう。強かった。次は(安齋)竜三が笑う番だよ。セミファイナルがんばってね」

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