2023.05.22

ファイナルの舞台に帰ってきた今村佳太「自分が優勝に導ける選手だという自信もある」

再度、初のリーグ優勝を獲りにいく権利を得た今村[写真]=B.LEAGUE
スポーツライター

無念のファイナル敗退から、一段上のレベルへ

 琉球ゴールデンキングス横浜ビー・コルセアーズのチャンピオンシップ・セミファイナルは、前者がスイープでシリーズを制し、2年連続でファイナルへの切符を手にした。

 昨年は果たせなかった初のBリーグタイトル達成へ向けてファイナルで活躍が必須な男が、今村佳太だ。

 琉球に移籍して3年目の今シーズン、チームの核として大きく飛躍した。名古屋ダイヤモンドドルフィンズが相手のCSクォーターファイナル、27歳のシューティングガード兼スモールフォワードは2試合で平均20.5得点を挙げた。同シリーズ第1戦での試合残り30秒強に、レッグスルーからの3ポイントを決めて勝利を手繰り寄せた場面は、彼がチームの“ゴー・トゥー・ガイ”になった証となるような、象徴的な瞬間だった。

 自他ともにエース格へと成長した昨年、宇都宮ブレックスを相手にファイナルで敗退した後「悪い流れのときに救ってあげられるような、チームに何かをもたらせるような選手になりたい」と無念さを滲ませながら述べたが、今シーズはその言葉通り、一段上のレベルへと到達した。

 今シーズン、チームは正ポイントガードだった並里成群馬クレインサンダーズへ移籍したこともあって、ボールハンドラーを複数置き、かつコートの様々な場所から得点チャンスをクリエイトできるような“ポジションレス”のスタイルの構築に務めてきた。その中で、元来からオールラウンダーだった今村は、さらにプレーの幅も質も上げてみせた。

「チームに何かをもたらせるような選手」になるべく、今村はさらなる成長を遂げた[写真]=B.LEAGUE

 横浜BCとのSFではファウルトラブルに見舞われたところもあって平均11.0得点と QFほどの数字ではなかったものの、味方を生かしたプレーぶりで光り、QFでは2.0本だった平均アシスト数は、SFでは同5.0本となった。21日の第2戦では、ドライブインで複数のディフェンダーが寄ってきた際に、落ちついてアシストパスをさばいた場面が2度ほどあった。

「今シーズン、山下(恵次)スキルコーチが来てくれて、スキルに対するアプローチは変わったので、自分としては去年とはぜんぜん違う部分かなと思っています。それに加えて、去年のファイナルでの悔しさもあって、やっぱりもっと周りを巻き込んで、生かしていかないとファイナルでは勝てないんだなと感じたので、その積み重ねが今日の試合でもそうですし、結果につながったのかなと思います」

 強度の高いディフェンスを敷いてくる横浜BC相手でも、上述したようなアシストパスを、余裕を持って供給できた理由について、今村はこのように話した。

エースとして覚悟を持って臨む、2度目の大舞台

 今回、対戦相手となった横浜BCの青木勇人ヘッドコーチと今村は、以前はともに新潟アルビレックスBBに在籍していた。当時、同チームでアソシエイトHCだった青木は、今村について「エースの自覚を持ってプレーしている」ことが以前とは変化したところだと挙げた。

「新潟のときは先輩方に見守られながらプレーしているところもあったとは思います。あのときもエースとしてやっていくという気持ちはあったとは思うんですけど、今、チームが変わって努力をしながら自分の技を磨いて、琉球というチームを勝たせるんだという気持ちが彼のプレーからすごく伝わってきます」

 昨年のファイナルでも、平均14.0得点と悪くはなかったが、大事な終盤にフリースローを連続して外すなど、後悔が残った。その悔いは、エースの自覚があるからこそのものだったし、今シーズン、一段上の選手となる決意が確固たるものになったのはその経験が起点であり、彼の背中を押す根源だ。

昨年の悔しさを晴らす準備は万端だ[写真]=B.LEAGUE

 横浜BCとの激闘を制し、再度、初のリーグ優勝を獲りにいく権利を得たが、昨年のように喜びは爆発させるというよりも、唯一目指す舞台へたどり着いたことで安堵の心境をより強く感じた。「とりあえず勝利して、ほっとしています」という言葉は、その証左だ。

 横浜アリーナで行われるファイナルの相手は、3月の天皇杯決勝で完敗に近い内容で破れた千葉ジェッツに決まった。今村は、口の中に苦い味が残った1年前のリーグ王者決定戦を思い出してこう話した。

「去年、負けて、優勝トロフィーを掲げているところを自分たちは見せつけられたので、そこに対する悔しい思いがありますし、ファイナルを誰よりも意識して1シーズン取り組んできたのは自分たちだと思っています」

 そして、今年の今村は、もし琉球がファイナルで勝利するならば、必ずその中心にいる選手となった。

「今、プレーしていて、自分が優勝に導ける選手だなという自信もありますし、それだけのシーズンを送ってきたと思っています。と言っても、今シーズン、どれだけ周りを巻き込んでチームとしてやっていけるかというのを課題としてやってきたので、その部分の思いや覚悟を見ていただければ」

取材・文=永塚和志

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