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「手の届かない存在になってはいけない」琉球・仲間社長に聞く…チケット価格改定やLEDフロア設置の狙いは

ホームコートの沖縄サントリーアリーナでインタビューに応じた琉球の仲間陸人社長[写真]=長嶺真輝
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 Bリーグ創設から10年。2026-27シーズンから新制度の下で始まる「Bプレミア」は、日本バスケットボール界にとって新たな時代の幕開けとなる。ライセンス付与基準の引き上げや平日開催の増加などにより、各クラブにはこれまで以上の経営努力が求められることになる。

 大きな節目を前に、リーグの成長をけん引してきたクラブのひとつである琉球ゴールデンキングスは、一部値下げを含めたチケット価格改定や、新たに沖縄サントリーアリーナに導入されるLED搭載フロアを、アジアで初めてシーズンを通して使用するなど、独自色の強い新施策を次々と打ち出した。

 大胆な取り組みは、「沖縄をもっと元気に!」という活動理念の下、地域に根付いてきたクラブとしての矜持や、「沖縄を世界へ」を掲げる成長戦略と密接に結び付いている。運営会社である沖縄バスケットボール株式会社の仲間陸人社長に狙いを聞いた。

インタビュー=長嶺真輝

■リーグの発展をけん引してきた自負

琉球の歴史を振り返る仲間社長[写真]=長嶺真輝

――昨シーズンは5大会連続でファイナルに進出し、準優勝となりました。

仲間 ファイナルの敗戦はもちろん悔しかったのですが、このチームを本当に誇らしく思いました。桶谷大ヘッドコーチを中心にキングスのウィニングカルチャーを積み重ねていった結果がファイナル進出につながったと思います。EASL(東アジアスーパーリーグ)参戦や海外遠征に挑戦している中で、チームは体のケアなどで工夫を凝らし、メンタルの強さが毎シーズン増していると感じています。

――琉球は競技、経営の両面でBリーグの発展をけん引してきました。

仲間 2007年にbjリーグへ参戦し、2016年にアルバルク東京と歴史的なBリーグ開幕戦を戦いました。そして、2021年には沖縄サントリーアリーナが開業し、日本のバスケットボール界が新たな時代に突入しました。キングスとしても、その中でさまざまなチャレンジをし、沖縄にとってのキングスの価値を高めていくことができたと感じています。近年は5年ごとに大きな節目を迎えているので、2026年のBプレミア開幕というタイミングをさらなる成長の契機にしたいと考えています。

――Bリーグが進める構造改革「B.革新」の評価はいかがですか?

仲間 世界基準のリーグになるというチャレンジの姿勢はとても評価しています。サラリーキャップの導入はコーチ陣や社員の待遇改善にもつなげる狙いがあるので、それは経営者として強く意識しています。一方で、制度設計を始めた段階の見通しからすると、近年のリーグの成長はかなり上振れしているため、現時点では少し歯止めを利かせる設計になってしまっているとも感じています。リーグは運営しながら、現状に合わせて随時見直していくのだと思っています。

■「挑戦し続ける」FIBA認証のLEDフロアの活用

――Bプレミア元年に向け、琉球はすでに新たな施策を打ち出しています。まず、アジア初となるLED搭載フロアの活用の狙いを教えてください。

仲間 沖縄サントリーアリーナの開業から5年が経ち、さらにBプレミアにおいては「世界一型破りなライブスポーツエンタメ」というビジョンが掲げられている中、新しい世界観の構築に挑戦したいという思いがありました。これまで、キングスはBリーグで初めて「夢のアリーナ」をホームアリーナにしたり、初めて欧州遠征を実施したりして、多くの方の力を借りながら、Bリーグ、そしてバスケットボール界の発展を引っ張ってきた自負があります。だからこそ、これからも多くの方に「挑戦し続けるキングス」の姿を見せたいと考えています。

――LEDフロアといえば、Bリーグの幕開けを飾った2016年の琉球対A東京戦で、世界で初めて公式戦に導入されたことが印象に残っています。

仲間 2026年9月開幕のBプレミアに向けて、何に挑戦するか施策を考え始めた時、Bリーグの歴史的開幕戦の試合映像をもう一度見直す中で、LED搭載フロアの活用を着想しました。同時にグループ会社である沖縄アリーナ株式会社でも、アリーナをさらに活用していくために次なる設備投資を考えている時期でした。準備を始めたのは、2024年の10月頃です。ドイツのメーカーが生産するFIBA認証済みのLED搭載フロアを採用し、すでにホームコートに常設しているバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)、パナシナイコスBC(ギリシャ)の2チームとコミュニケーションを取って運用方法に対する理解を深めました。担当スタッフは交渉と視察を目的に、計3回にわたって欧州に足を運びました。

――どのような運用を想定しているのでしょうか?

仲間 選手紹介やハーフタイム、タイムアウトの演出などで、メガビジョン、リボンビジョンと連動したダイナミックな演出が可能です。客席、映像のいずれで観戦する場合でも臨場感や没入感が増し、新たな観戦体験を提供することができます。素材は従来の木床とは違い、ガラス床になります。NBAのオールスターゲームやFIBAの国際大会でも活用事例があり、滑りにくさや汗が落ちたときの乾燥する速さなど、安全性の評価項目はFIBAの基準をすべてクリアしています。

■チケットの一部値下げで新規客開拓へ

価格改定を決断した背景を説明する仲間社長[写真]=長嶺真輝

――2026-27シーズンにおけるチケット価格改定の概要を教えてください。

仲間 沖縄サントリーアリーナの上部にある4階の一部座種について、これまで以上に気軽にホームゲームを楽しんでもらうため、値下げを行います。最低価格は、大人は2400円から1400円(ファンクラブ価格1300円)、子どもは1200円から800円(同700円)となります。一方、コートサイドなど人気の高いエリアや体験価値の高い座種については、サービスの強化と合わせて価格改定を実施します。

――物価高や人件費の上昇が続く中、一部座種の値下げには驚きがありました。決断の背景を教えてください。

 個人的な話にはなりますが、僕自身そこまで裕福な家庭で育ったわけではありません。そして、スポーツは本来、すべての人にとって平等なものだと思っています。キングスが沖縄の皆さまにとって、手の届かない遠い存在になってはいけない。その思いが、今回の価格改定を考える上での出発点でした。すべての席を一律に値上げするのではなく、最も価格の低いチケットは、これまで以上に手に取りやすい価格にする。観戦スタイルや席種ごとの価値に応じて価格を見直しながらも、誰もがキングスの試合を楽しめる選択肢を残す。その考えを軸に、2年前の2024年頃から今回のチケット価格の詳細を設計していきました。

――一部値下げによる客層の広がりも想定していますか?

 これまで価格的に来場が難しかった方には、ぜひアリーナに来てみてもらいたいです。また、Bプレミアでは集客のハードルが高い平日開催の回数が増えます。定期的に来ていただいていた方の来場頻度が減る可能性もあるので、低価格帯の座種を入口にして、新しいお客様が増えていくことを期待しています。エンターテインメントには自信を持って運営してきたので、一度来ていただければ、キングス観戦にハマってもらえると思っています。

――一方で、価格調整する座種の付加価値はどのようにして高めるのでしょうか?

 早い時間の来場でも満足してもらえるように、1階の座種のお客様が利用できるコートサイドラウンジのサービスを拡充します。提供する飲食物の幅を広げ、オリジナルの家具を設置するほか、ここでしか購入できない限定グッズも販売します。3階のテーブルシートの後方にもラウンジを新設し、このシートで観戦する方が利用できるようになります。私たちは、チケットの値付けはとてもシビアに見ています。たとえ50円ほどだとしても、ただの値上げは絶対にしません。LED搭載フロアの活用や、新たなエンタメコンテンツの拡充などにより、これまで以上にエンターテインメント空間を進化させ、体験価値を向上させていきます。

――リーグの大半のチームが、需要に応じてチケット価格が変動する「ダイナミックプライシング」を導入しています。チケット需要が高水準にある琉球が、なぜ今回導入を見送ったのでしょうか?

 これまでbjリーグを含めて19シーズンを戦ってきましたが、キングスは一貫してチケットの価値にこだわってきました。創設当初は、当日券売り場で「なんでバスケの試合にお金を払うんだ」と言われ、そのまま帰られてしまうこともありました。それでも、私たちはチケットを無償で配って応援してもらうのではなく、試合やアリーナ体験の価値を高め、一人ひとりファンをつくってきました。チケット価格は単なる売り上げではなく、お客様とクラブが信頼関係を築くうえで重要な要素です。もちろん、目先の収益だけを考えれば、価格変動システム(ダイナミックプライシング)の導入によって利益を伸ばすことはできるかもしれません。しかし、一時的な利益のために、これまで積み重ねてきたファンとの信頼を損なうことの方が、私たちにとっては大きなリスクです。また、需給だけで価格を決める段階には、まだないとも感じています。だからこそ現時点では、お客様にとって納得感があり、分かりやすく、公平だと感じていただける価格設定こそが、キングスにとって最適な形だと判断しました。

■「飽き性」の社員増加に手応え

マスコットのゴーディーを軸にした「キングスわいわい広場」を新設する芝生エリア[写真]=長嶺真輝

――アリーナ内外に新エリアも誕生します。

 2016年に爆誕したマスコットのゴーディーは、はじめは「気持ち悪い」「怖い」などと酷評も受けましたが、今ではファンに人気が定着し、オリジナルIP(知的財産)として経営の軸のひとつになっています。将来的にゴーディーが独り立ちし、IPビジネスをさらに拡大させていけるように、ゴーディーを核としたエンタメ空間をつくりたいと考えました。そこで、アリーナの4階と5階にプレイランドとカプセルトイステーションを設置し、さらにアリーナ横の広い芝生エリアには大型エア遊具などをそろえた「キングスわいわい広場」を新設します。

――人の流れが変わりそうです。

 アリーナは試合開始の2時間前に開場していますが、お客様の来場時間は数十分前に集中するため、飲食エリアの混雑が課題でした。魅力的なエリアを新設することで来場時間と滞留場所を分散し、より快適な時間を過ごしてもらいたいと考えています。芝生エリアの遊具は無料なので、地域の方など観戦者以外も楽しめます。設備投資や人件費がかかるため、当初は有料化も検討しましたが、社員から「多くのお客様に楽しんでもらうため、無料にしたい」という声が多く、決断しました。不定期のイベントやパブリックビューイングの開催も視野に入れ、沖縄サントリーアリーナの楽しみ方を外に広げていきたいです。

――現場社員が声を上げやすい風土は、成長の糧になりますね。

 さまざまな施策を考える過程でうれしかったことは、社員が「これではおもしろくないよね」「1年やったらファンに飽きられます」「どんどん新しくしていきましょう」などと活発に会話をしていて、組織としての成長を感じられたことです。みんながよい意味で飽き性になってきており、挑戦し続けるキングスの文化がさらに根付いてきています。

――長期目線では、どのようなクラブになっていきたいですか?

 キングスは定量的にも定性的にもアジアNo.1のクラブを目指しているので、競技面、ブランドの両面で強くあり続けたいです。新しいチャレンジを続けながら、それをしっかりと次の投資に回せる経営力を身につけていく。ファンの皆さんには、今のキングスを楽しみながら、将来のキングスも楽しみにしていてもらいたいです。

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