2020.12.25

関西大北陽・金近廉が見せたエースとしての自覚、この1年での成長

関西大学北陽のエースとして戦い抜いた金近廉[写真]=日本バスケットボール協会
フリーライター

 12月25日、大会屈指のオールラウンダー金近廉(3年)がウインターカップを去った。

「SoftBank ウインターカップ2020 令和2年度 第73回全国高等学校バスケットボール選手権大会」2回戦で、昨年度準優勝校の福岡大学附属大濠高校(福岡)に挑んだ関西大学北陽高校(大阪)。試合は終始相手に先行される展開となったが、粘り強く食らいつき何度も点差を1ケタまで詰めた。だが、差を詰める度にターンオーバーを犯し、さらには3ポイントシュートを許してしまい福大大濠の牙城を崩すことはできなかった。

 関西大北陽のエース金近廉(3年)は、百戦錬磨の相手にも持ち前のオールラウンダーな動きを存分に発揮した。立ち上がりから3ポイントシュートを2本打ったかと思えば、今度は196センチの長身を生かしインサイドでポストアップ。自分にマークが寄ってくれば、それをいなしてアシストをさばき、味方のイージーシュートを演出した。

 後半からは自らアタックする頻度を増やしてスコアを重ね、終わってみれば計34得点12リバウンドに加え、10アシスト。しかし、試合は84-92で敗戦した。3ポイントシュートに至っては試合終了と同時に決めた1本以外の11本は不発に終わり、“トリプルダブル達成”とひとえに喜べるものではなかった。

 渡辺真二コーチも、金近の出来には「目標の30点は達成しましたけど、もっと中盤に外角のシュートが入っていれば面白い展開になったと思います。まあ、彼も高校最後の試合だったので、若干肩に力が入っていたような気もしますけど……」と複雑な心境を吐露した。それでも、「精一杯やった結果なので、選手たちはよくやってくれたと思います」と、最後まで戦い抜いた選手たちを称えた。

「福大大濠は1人抜いても、次のマークマンも僕と同じくらいの身長の選手が出てきて、それに慣れるのに時間がかかってしまった。前半のうちに修正したかっです」(金近)

 毎度のように経験している執拗なマークも、高さのある福大大濠の守備は一味違った。金近は最後まで追いつくことできなかった相手の強さをこう分析する。「福大大濠は県の中でもずっと福岡第一とやり合っていますし、全国レベルをずっと経験しているチーム。僕たちは大阪ではある程度抜けている部分がありましたし、今年はインターハイもできなかたので、その経験の差だと思います」

 昨年も上級生に混じりチームの主軸を担っていた金近だが、当時の渡辺コーチは「高さとセンスは持っているけども、やっぱりまだ2年生ですね」と金近について話していた。しかし、この1年を経て「よくぞここまで成長してくれた」と手放しで褒めた。

「自粛期間中は3カ月間全く練習ができなかったのですが、それが開けた時に体つきが変わってました。みんなで練習ができない中、しっかり個人のトレーニングをやっていたんだなと。プレーを見ても大学生に負けないくらいのパワーがついた印象でした。そうやって意識的にやるべきことをやっていたので、すべてにおいて自覚が出てきました。キャプテンシーもありますし、コートの中で一番声を出して周りに声をかけているのは金近です。よくぞここまで成長してくれました」

フリースローでも11得点を獲得した金近廉[写真]=日本バスケットボール協会

 金近には関西大北陽OBでもある2つ上の兄がいる。3年前、渡辺コーチが金近をリクルートした際は「お兄ちゃんがいるから行きたくないです」と、一度入学を断られたそうだ。それでも、熱心に声をかけてくれた恩師のもとで世代を代表する選手にまで成長を遂げた。

「これからも大学で活躍して、U22などの日本代表に入ってもらいたいですね。そして行く末はBリーガー、これは金近の夢でもあるので、僕が教えきれなかった部分もいろいろと経験してもらいたいです」

 これからも、金近廉の成長を楽しみにしている。

文=小沼克年

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