2022.11.04

轟琉維を筆頭に堅いディフェンスで流れを引き寄せた福岡第一…福岡頂上決戦を制してWCへ

福岡大学附属大濠高校との一戦を制した福岡第一高校 [写真]=佐々木啓次
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 祝日となる11月3日、「ウインターカップ2022 高校バスケットボール福岡県大会」の最終日を迎えた会場のアクシオン福岡は独特の空気に包まれた。

 最終日の最終試合は、4チームによる決勝リーグでどちらも2勝を挙げている福岡第一高校と福岡大学附属大濠高校との一戦。勝った方が優勝となる事実上の決勝戦だ。

 福岡を代表するこの2チームは、言わずと知れた全国屈指の強豪校。福岡第一は今夏の「令和3年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」で優勝を果たしており、一方の福大大濠も、6月の福岡県予選では福岡第一に敗れてインターハイ出場はならなかったものの、昨年の「SoftBankウインターカップ2021 令和3年度第74回全国高等学校バスケットボール選手権大会」で日本一に輝いている。それだけに、今夏のチャンピオンと昨冬の覇者との一戦は、福岡王者という称号だけでなく、ウインターカップ本番を占う意味でも、どちらも負けられない戦いとなった。

 注目の試合は、序盤から両者譲らず。それでも1クォーター中盤から轟琉維、小田健太の3ポイントシュートなどで連続得点を挙げた福岡第一リードを奪う。しかし、第2クォーター中盤からは積極的な攻めが光った広瀬洸生に得点を許し、終盤には福大大濠に追いつかれてしまう。すると、後半には一時逆転を許す展開に…。

 だが、この状況で福岡第一は真骨頂ともいえるディフェンスを披露。オールコートで当たってボールを奪うと、そこから轟、城戸賢心らがシュートを沈め、約1分半の間に逆転、そして一気に7点のリードを奪ったのだ。

「(逆転されたときに)タイムアウト取ろうと思ったのですが、ディフェンスで防ぐことができました。流れを向こうに渡きなかったのが良かったですね」と、井手口孝コーチ。

 その後も、再三にわたる福大大濠の追撃を振り切った福岡第一は、最後は83-76でインターハイ予選に続いて勝利を飾った。

福岡第一をけん引し続けた轟琉維(中央) [写真]=佐々木啓次

 試合では、幾度となくピンチの場面が訪れたが、それに動じることなく、むしろ落ち着いているかのようにも見えた福岡第一。これには「ポイントガードの力が大きい」と、井手口コーチは攻防においてチームを引っ張った司令塔の轟の存在を挙げる。

「何とかしてくれるというか、何とかしなくてはいけないのがポイントガード。今日はうまくパスをさばけなかったり、時々ミスもあったりと苦労していたけれど、立派なガードになりつつありますね。やっぱり背番号8番だな。元8番が頑張ってますからね」と、井手口コーチは轟自身も目標とし、同校の卒業生である河村勇輝(日本代表/横浜ビー・コルセアーズ)を引き合いに出し、目を細めた。

 チームとしても攻撃力が高い福大大濠に対して「相手の好きなようにオフェンスをされなかった。何本か広瀬くんのドライブや、芦田(真人)くんの3ポイントシュートがあったけれど、湧川(颯斗)くんと川島(悠翔)くんのところで失点しなかったかなと思います」と、福大大濠の得点源2人に大量得点を奪われなかったことが勝因につながったと指揮官は振り返った。

 高い集中力を発揮し、苦しい時間帯にルーズーボールやリバウンドを取り切る。我慢比べの中で体力や気力、粘りといったものがわずかに相手より上回ったといえるだろう。

 それでも、「うちの選手たちもへばっていましたよ。セカンドユニットがあと5分ぐらい(出場時間を)稼いでくれると良かったけれど」と、井手口コーチ。今年のチームの武器でもあるセカンドユニットがこの試合では本来の調子とはいかなかったことを課題に挙げた。

 福大大濠との熾烈な頂上決戦から見えてきた課題や収穫はほかにもあるだろう。今回の勝ちにも驕ることなく、福岡第一は、12月のウインターカップに向けて、さらにレベルアップを図っていく。

取材・文=田島早苗
写真=佐々木啓次

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