2023.12.23

渡邊雄太を形成した原点の大会ウインターカップ…成長過程に意味がある2年連続の「準優勝」

高校時代の渡邊雄太[写真]=小永吉陽子
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12月23日開幕の「ウインターカップ2023」にあわせて、過去にウインターカップで輝いたスター選手をピックアップ。今回は尽誠学園高校で輝いた渡邊雄太の活躍を振り返る。

■奇跡ではないウインターカップ準優勝

 渡邊雄太が高校2年の2011年の冬、尽誠学園はウインターカップで準優勝へと駆け上がった。それまでの全国大会ではベスト16が最高成績だったが、一気に壁を破ったのだ。そのとき、色摩拓也コーチが話した一言が忘れられない。

「周りの人は僕たちの準優勝が奇跡だと言うけれど、僕は選手たちが一生懸命に練習してきたのを毎日見てきたので、奇跡と言われるのはかわいそうと言いますか、なるべくしてなった結果だと思います。ただ、僕の思っている以上に選手たちはこの大会で成長しました」

 尽誠学園がウインターカップで躍動した年の夏のインターハイ。渡邊雄太は195センチに到達しそうなサイズと長い手足を生かし、ダイナミックなドライブインを披露して大物の片鱗をのぞかせていた。その将来性が高く評価され、インターハイ後に開催されたジョーンズカップに出場する日本代表に選出されている。

[写真]=小永吉陽子


 ただ、将来性ある渡邊を擁していても、2011年の尽誠学園の下馬評はそこまで高いものではなかった。それが2回戦で福岡第一高校に勝利したことを皮切りに、次々に強豪を倒して決勝までたどりついたのだから、色摩コーチが言うように、毎試合ごとの成長には目を見張った。練習してきたマッチアップゾーンが効いてディフェンスの粘りが発揮され、一戦ごとに我慢の展開を身につけていった。そうした毎日の努力に対して色摩コーチは「決して奇跡ではない」と選手たちを讃えたのだ。

■福岡第一に勝ったことが転機に

 準優勝へと駆け上がった2年生のウインターカップで転機になったのが、2回戦で福岡第一を86-70で破ったことだ。福岡第一はその年のインターハイで準優勝しており、1回戦はシードされていたために2回戦からの登場だった。相手にとっては初戦ということでエンジンがかからなかったこともあるが、尽誠学園は37得点と大暴れした3年生ガードの笠井康平を筆頭に、練習でやってきたことを出し切っていた。この試合で29得点、10リバウンドと奮闘した渡邊は、「福岡第一に勝ったことで『自分たちのやってきた練習は間違いではなかった』と自信になり、この試合が僕たちの転機になりました」と語っている。

 その後、準々決勝で強豪の洛南高校を66-65の1点差で下すと、準決勝では猛威を振るっていた留学生のシェリフ・ソウを擁する沼津学園高校に63-58で勝利して決勝に進出。決勝ではインターハイの覇者である延岡学園の前に88-55で大敗して力尽きてしまったが、渡邊雄太という将来性あるスターの台頭と、粘り強さこそが尽誠学園の武器であることを印象づけた大会になった。

■同じ準優勝でも前年とは違う成長へのプロセス

 3年生になって身長が197センチに伸びた渡邊雄太は、前年のウインターカップで注目されたこともあり、さらに期待される存在になっていた。しかし、夏のインターハイでは初戦(2回戦)で正智深谷高校に84-94でよもやの敗戦を喫する。初戦敗退のショックに渡邊は「何の保証もないのに最後は勝てると思っていた」と慢心があったこと認め、「自分がもっとエースとして成長しなければ」と誓うのである。

 このときすでに、高校卒業後にアメリカに渡ることを心に決めていた渡邊にとって、インターハイの初戦敗退は大きな試練だったと言えるだろう。さらに試練は続いた。インターハイ直後に開催されたU18アジア選手権では、佐藤久夫ヘッドコーチのもとでエースとして鍛えられることになるが、大会中に捻挫をしてしまったことで思うようなプレーができず、勝っても負けても、「まだまだ自分の力が足りない…」と悔し涙を流していた。それでも、渡邊は従来の4番ポジションのほかに、国際大会でポイントガードに挑戦する貴重な経験を積み、アジアベスト4へとけん引するリーダーシップを身につけ、一歩一歩、力をつけていくのだった。

国際大会で貴重な経験を積んだ渡邊[写真]=小永吉陽子


 立ちはだかった試練を乗り越えるべく挑んだ最後のウインターカップ。2回戦では、またも正智深谷と再戦する巡りあわせに尽誠学園の面々は燃えていた。この因縁の対決を1ゴール差で制すると、福岡大学附属大濠高校、洛南高校との激闘を次々に撃破。まさしく、前年に見せた粘りのチームプレーが表現できるようになっていたのだ。そして、決勝ではナンバーワン留学生の呼び声が高いジョフ・チェイカ・アハマド・バンバを擁する延岡学園との対決を迎える。

 延岡学園との決勝は2年連続の顔合わせで、結果は前年と同じく準優勝だった。だが、前年と違ったのは、前半で15点差をつけられながらも、最終的に66-68の1ゴール差までカムバックしたことにある。前年の決勝では33点差で大敗した相手に対し、2点差まで猛追したことに、昨冬よりも、夏の初戦敗退からも、大きく成長したことを示してみせたのだ。大会6試合で渡邊が叩き出したスタッツは、平均26.7得点、17.3リバウンド、2.5ブロック。まさに、大黒柱と呼ぶにふさわしい頼もしい活躍だった。

バンバとの対戦は大会史に残る名勝負の一つ[写真]=小永吉陽子


 最初からNBAに挑戦するようなスーパースターだったわけではない。目の前にある課題に取り組み、誰もが認めるエースへと成長し、試練を乗り越えたからこそつかんだ2年連続の銀メダル。高校生最高峰の戦いであるウインターカップは、努力して這い上がっていく渡邊雄太を形成した原点の大会なのだ。

文=小永吉陽子

[写真]=伊藤大允

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