2023.12.26
12月23日開幕の「ウインターカップ2023」にあわせて、過去にウインターカップで輝いたスター選手をピックアップ。今回は尽誠学園高校で輝いた渡邊雄太の活躍を振り返る。
渡邊雄太が高校2年の2011年の冬、尽誠学園はウインターカップで準優勝へと駆け上がった。それまでの全国大会ではベスト16が最高成績だったが、一気に壁を破ったのだ。そのとき、色摩拓也コーチが話した一言が忘れられない。
「周りの人は僕たちの準優勝が奇跡だと言うけれど、僕は選手たちが一生懸命に練習してきたのを毎日見てきたので、奇跡と言われるのはかわいそうと言いますか、なるべくしてなった結果だと思います。ただ、僕の思っている以上に選手たちはこの大会で成長しました」
尽誠学園がウインターカップで躍動した年の夏のインターハイ。渡邊雄太は195センチに到達しそうなサイズと長い手足を生かし、ダイナミックなドライブインを披露して大物の片鱗をのぞかせていた。その将来性が高く評価され、インターハイ後に開催されたジョーンズカップに出場する日本代表に選出されている。
準優勝へと駆け上がった2年生のウインターカップで転機になったのが、2回戦で福岡第一を86-70で破ったことだ。福岡第一はその年のインターハイで準優勝しており、1回戦はシードされていたために2回戦からの登場だった。相手にとっては初戦ということでエンジンがかからなかったこともあるが、尽誠学園は37得点と大暴れした3年生ガードの笠井康平を筆頭に、練習でやってきたことを出し切っていた。この試合で29得点、10リバウンドと奮闘した渡邊は、「福岡第一に勝ったことで『自分たちのやってきた練習は間違いではなかった』と自信になり、この試合が僕たちの転機になりました」と語っている。
その後、準々決勝で強豪の洛南高校を66-65の1点差で下すと、準決勝では猛威を振るっていた留学生のシェリフ・ソウを擁する沼津学園高校に63-58で勝利して決勝に進出。決勝ではインターハイの覇者である延岡学園の前に88-55で大敗して力尽きてしまったが、渡邊雄太という将来性あるスターの台頭と、粘り強さこそが尽誠学園の武器であることを印象づけた大会になった。
3年生になって身長が197センチに伸びた渡邊雄太は、前年のウインターカップで注目されたこともあり、さらに期待される存在になっていた。しかし、夏のインターハイでは初戦(2回戦)で正智深谷高校に84-94でよもやの敗戦を喫する。初戦敗退のショックに渡邊は「何の保証もないのに最後は勝てると思っていた」と慢心があったこと認め、「自分がもっとエースとして成長しなければ」と誓うのである。
このときすでに、高校卒業後にアメリカに渡ることを心に決めていた渡邊にとって、インターハイの初戦敗退は大きな試練だったと言えるだろう。さらに試練は続いた。インターハイ直後に開催されたU18アジア選手権では、佐藤久夫ヘッドコーチのもとでエースとして鍛えられることになるが、大会中に捻挫をしてしまったことで思うようなプレーができず、勝っても負けても、「まだまだ自分の力が足りない…」と悔し涙を流していた。それでも、渡邊は従来の4番ポジションのほかに、国際大会でポイントガードに挑戦する貴重な経験を積み、アジアベスト4へとけん引するリーダーシップを身につけ、一歩一歩、力をつけていくのだった。
延岡学園との決勝は2年連続の顔合わせで、結果は前年と同じく準優勝だった。だが、前年と違ったのは、前半で15点差をつけられながらも、最終的に66-68の1ゴール差までカムバックしたことにある。前年の決勝では33点差で大敗した相手に対し、2点差まで猛追したことに、昨冬よりも、夏の初戦敗退からも、大きく成長したことを示してみせたのだ。大会6試合で渡邊が叩き出したスタッツは、平均26.7得点、17.3リバウンド、2.5ブロック。まさに、大黒柱と呼ぶにふさわしい頼もしい活躍だった。
文=小永吉陽子
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