2024.01.15
12月23日開幕の「ウインターカップ2023」にあわせて、過去にウインターカップで輝いたスター選手をピックアップ。今回は2000年代後半に洛南高校で輝いた比江島慎の活躍を振り返る。
2006~2008年にかけてウインターカップ3連覇を遂げた洛南高校。この記録は能代工業高校に続く、史上2校目の快挙である。
2006年のエースは湊谷安玲久司朱。決勝で40得点と大爆発したことが注目されたが、この年の洛南は、準決勝では橋本竜馬と金丸晃輔を擁して下馬評の高かった福岡大学附属大濠高校を下し、決勝では篠山竜青がけん引したインターハイ覇者の北陸高校に勝利したことで、目を見張るような成長ぶりが印象的だった。
続く2007年、洛南は爆発力あるシューターの辻直人がエースとなり、1学年下の比江島慎とともに得点源となって2連覇を達成。この年は満原優樹、長谷川技らが軸となる能代工業がインターハイを制し、並里成が猛威を振るう福岡第一が本命に挙げられていたが、またも冬に向けて力をつけてきた洛南が、能代工と福岡第一とのライバル決戦を制して頂点へ駆け上がっている。
3連覇がかかった2008年は得点力に磨きをかけた比江島と、199センチの高さを持つ谷口大智を軸にチーム作りが進められた。ウインターカップ決勝では、シューター狩野祐介と高さのあるセック・エルハジ・イブラヒマを擁する福岡第一と激突。最後まで大接戦となるが、この激闘を2点差で制した洛南が、悲願のウインターカップ3連覇を達成した。
洛南3連覇の中心となったのが比江島慎だ。1年生の時はリバウンドや球際に強いシックスマンとしてキーマンとなり、2年生では辻直人とコンビを組んで得点源へと成長。3年になると内外角を自在に攻めるエースとして活躍している。
ただ、比江島がいた3年間、洛南はすべての大会で決勝に進出していたわけではない。インターハイの成績は1年次が準優勝で、2、3年次はベスト4が最高成績。洛南は伝統のパス&ランを主体に、チームプレーの中に個々の能力を生かすスタイルなだけに、チームが完成するには時間を要している。それゆえ、冬に向けてチームの完成度を高め、夏から見違えるほどの勝負強さを備えて東京体育館に乗り込んでいくのだ。実際、比江島が3年次の国体では洛南主体の京都が優勝しており、冬に向けてメキメキと力をつけていた。比江島は3連覇がかかるウインターカップを前にしてこう言っていた。
「インターハイから成長したところを見せたい。洛南は冬に強いんです」
高校生最後の冬、比江島はエースの力をいかんなく発揮した。この年の洛南はディフェンス力が上がっており、準決勝でインターハイ覇者の延岡学園高校を70-58で下して決勝に進出。決勝はインターハイの準決勝で21点差という大差で敗れた福岡第一と対戦。夏に大敗した苦手意識からか、ウインターカップ決勝も前半は福岡第一のペースで進み、10点ビハインドで折り返す。このとき比江島は、「インターハイの二の舞になるのでは」と不安がよぎったというが、後半は持ち前の勝負強さを発揮する。
今で言うところの「比江島スイッチ」が発動する合図となったのが、洛南がじわりじわりと差を縮めた第3クォーターの終盤。吉田コーチは約2分半、比江島をベンチに下げる決断に出ている。
「吉田先生が少し焦っていた僕を一度ベンチに下げてくれたので、第4クォーターからは思い切り行くぞと決めていました」と決意したエースは、第4クォーター開始早々に2連続ゴールをゲット。これで洛南が1点差まで迫ると、さらに1−2−2のオールコートプレスを仕掛けて勝負に出る。比江島は得点だけでなく、リバウンドやスティールなどディフェンスでも貢献し、エースとして最後のシュートを託される。
残り22秒、比江島は得意の1対1からボール浮かせてスクープシュートを放つ。そのボールは、リング上で何度か跳ね返ったのちにリングに吸い込まれていった。73−71。洛南が1ゴール差で激闘を制し、3年連続4回目となる日本一に輝いた。
3連覇がかかる決勝の舞台で仕事をやり遂げた比江島慎。試合後には、プレッシャーからか、極度の緊張を抱えたまま決勝に臨んでいたことを明かしている。それゆえに硬いゲームの入りになってしまったが、4クォーターでの勝負強さは圧巻だった。重責から解き放たれたエースは、試合後に安堵の表情を見せてこう語っている。
「決勝ではチームが苦しいときに点を取ることができて、3年間で一番エースらしい仕事ができたかなと思います。僕自身が重圧に勝てた試合でした。やっぱり冬に強いのが洛南です。ウインターカップだけは譲れませんでした」
文=小永吉陽子
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