2020.12.29

洛南のエース小川敦也、無念の負傷欠場。「頼りないエースで申し訳ない」の言葉にチームメートは「小川がいたから」

エースの小川敦也(写真中央)を中心に銅メダルを獲得した洛南[写真]=日本バスケットボール協会
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

「小川に今まで頼っていた分、みんなで勝とうと言って準決勝に臨みました。決勝に進出して、『小川をベスト5にする』という思いでした」(淺野ケニー/3年)

「(ウインターカップの)京都府予選で3年ぶりに東山に勝つことができたのは小川が頑張ってくれたおかげです。3年間、小川から学ぶことが多かったので、『3年間本当にありがとう』と言いたいです。その気持ちで準決勝を戦いました」(西村慶太郎キャプテン/3年)

 京都対決となった「SoftBank ウインターカップ2020 令和2年度 第73回全国高等学校バスケットボール選手権大会」準決勝では東山に67-87で完敗。試合後、3年生たちは、負傷のため試合に出場することができなかったエースへの思いを口にした。

 洛南のエース、小川敦也(3年)は準々決勝の正智深谷(埼玉県)戦で左足首を負傷。診断の結果は捻挫。骨には異常がなかったものの靭帯を損傷しており、ドクターストップがかかった。車いすに乗ってチームメートに声援を送り、見守ることしかできなかった。

 10月の京都府予選では東山の208㎝の留学生、ムトンボ・ジャン・ピエールに対しての対策が功を奏した洛南だが、エースの抜けた試合ではチームディフェンスが機能しなかった。大差をつけられて洛南のウインターカップは幕を閉じた。

 試合後、小川は悔し涙で目を真っ赤に腫らしていた。

「自分がコートに立って決勝に導き、吉田先生やチームメートに恩返しをしたかったのですが、大事なところでコートに立てず、みんなに迷惑をかけてしまってしまいました。自分がいたからといって試合に勝てるかどうかはわかりませんが、東山戦で力になりたかったです。チームメートは普段から頼れる仲間で、みんなが僕を決勝に連れて行って優勝させてくれると言ってくれました。みんなには感謝の気持ちしかないです」

 今大会の洛南は2回戦の桜丘(愛知県)戦をはじめ、突き放して快勝するケースはあまりなく、重たい展開のゲーム運びが多かった。小川自身、大会を通してシュートタッチがよかったわけではない。ただ、桜丘戦や準々決勝の正智深谷戦にしても、勝利に導いたのは小川の勝負所の得点によるところが大きかった。それゆえに、チームメートたちは「小川のために」と準決勝を戦ったのだ。

ケガで準決勝は不出場となった小川への思いを語った西村慶太郎(写真左)と淺野ケニー(写真右)[写真]=日本バスケットボール協会

 洛南にとっては不本意な内容の準決勝だったが、ベスト4進出は2012年以来8年ぶりで、現アシスタントコーチの河合祥樹がキャプテンを務めていた時以来となる最高成績だ。吉田裕司コーチはベスト4に進出した背景をこのように語る。

「今回は最低限ベスト4までいくことが目標でした。府予選で東山に勝ったからここまで来ることができたというプライドを選手に持たせてあげたかったのです。うちは小川というタレントを起爆剤にして勝負するチーム。小川が点を取るだけでなく、小川がいることでチームとして点を取るチャンスがたくさん生まれてきます。東山には前半を10点差くらいでついていって、後半ディフェンスで仕掛けたかったのですが…。それでも、ベスト4までたどりついたことは大きな成果です」

 洛南にとってエースを欠いた準決勝は不本意な内容だったかもしれないが、信頼関係を築けたからこそ、銅メダルを獲得できたウインターカップでもあった。最後に小川はこのように大会を締めくくった。

「洛南は個人ではなくチームで戦うので、チームの大切さを知り、みんなが一つの方向を向く大切さを学びました。この大会では調子がいい時も悪い時もありましたが、みんなから『シュートを打て』と励ましてもらい、戦うことができました。頼りないエースで申し訳なかったですが、チームメイトには『本当にありがとう』と言いたいです」

文=小永吉陽子

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