2018.06.17

ファジーカス、八村加入の効果は十分。仙台での第2戦でさらにチームの質を高めたい

ファジーカス、八村らを新たに加えてチーム強化を進める日本代表[写真]=山口剛生
バスケットボールキング編集部。これまで主に中学、高校、女子日本代表をカバーしてきた。また、どういうわけかあまり人が行かない土地での取材も多く、氷点下10度を下回るモンゴルを経験。Twitterのアカウントは @m_irie3

イージーシュートとフリースローが増えた韓国との第1戦

ファジーカスは28得点のうち、11得点はフリースローによるもの[写真]=山口剛生


 6月15日、大田区総合体育館で行われた「バスケットボール男子日本代表国際強化試合2018」。29日に予定されているFIBAワールドカップ2019アジア1次予選Window3、オーストラリア、チャイニーズ・タイペイ戦を控える男子日本代表は、ニック・ファジーカス川崎ブレイブサンダース)、八村塁(ゴンザガ大学)、シェーファー アヴィ幸樹(ジョージア工科大学)の3名を新たにロースターに加えて韓国代表との一戦を迎えた。

 韓国との初戦、ファジーカスが両チーム最多の28得点、八村が17得点をあげるなど、これまでなかなか勝てなかった韓国に勝利したことは、新たな陣容で臨む今後の戦いに明るい材料を得られたと言えるだろう。ディフェンスの厳しい韓国に対して88得点をあげたことも評価していいはずだ。

 実際のところ、シュートの成功本数は日本が27本(2ポイント22本、3ポイント5本)だったのに対して、韓国は31本(2ポイント27本、3ポイント4本)と多かった。しかし、大きく差があったのがフリースロー日本が29本を成功したのに対して、韓国は14本。実に15本の差があり、ここがこの試合の結果を大きく分ける結果になっている。さらに日本はこれまで課題の1つと言われていたフロースローの成功率が第3クォーターまでは100%と失敗はゼロ。第4クォーターに6本をミスしたものの、全体での成功率が82.5%を記録。アジア1次戦4試合では1試合平均の成功本数が15.2本(試投数22.8本)成功率67.7%だった
だけに大幅にアップしている。

 もちろんこの試合が公式戦ではなく、加えてホームでのプレーだけに選手にかかるプレッシャーがそれだけ大きくなったことも加味する必要はあるだろう。ただし、注目したいのが試投本数。フリオ・ラマスヘッドコーチが語った「ペイントエリアにタッチする(シュートを打つ)」ことができていたからこそシュートファウルを受けたわけであり、攻める姿勢が韓国のファウルを誘発させたからに他ならないからだ。

ファジーカス、八村のパフォーマンスに一定の評価を与えたフリオ・ラマスHC[写真]=山口剛生


 また、司令塔の富樫勇樹千葉ジェッツ)と篠山竜青川崎ブレイブサンダース)が試合後、異口同音に語ったように、2人の加入により得点が止まる時間帯がほとんどなくなり、日本は第1クォーターで逆転した以降、ややもたついた場面もあったが最後まで韓国にペースを渡すことはなかった。これが決してファジーカスや八村にボールを預けて1対1を仕掛けさせたわけではなく、リバウンドからの速い攻めを徹底できたからこそレイアップなどのイージーシュートにつなげられ、オフェンスリバウンドを拾ってセカンドチャンスでの得点も目を引いた。 

日本代表は反省を生かしてチーム強化を進めていく

さらに徹底マークが予想される韓国との第2戦で八村塁はどのようなプレーを見せてくれるだろうか[写真]=山口剛生


 ただし、すべてを手放しでほめていいような試合内容ではなかったと思える。それは選手たちも認識しているようで、「自分たちのミスから得点を奪われる場面が多かった」と反省の弁を語る。韓国のディフェンスは不用意なパスを狙っていた。さらにドリブルで抜かれたとしても、後ろから手を出してスチールを試みるシーンも数多くあり、そこからの失点もあった。ベストメンバーではないといえ、韓国から88得点をあげたのは評価していいが、失点が80に達したのは修正の必要がある。

 対戦相手が繰り出した戦術・戦略、さらに個人の癖などにアジャストする能力が韓国の武器でもある。試合の間、韓国のホ・ジェヘッドコーチはほとんど席を立つことはなかった。国民性もあると思うが、アルゼンチン出身のラマスHCが一つひとつのプレーに大きなリアクションを取るのとは対照的に、元々ホHCは動きが多い方ではないが、日本の、特にファジーカスや八村の動きをじっくり観察していたようにも見えた。第2戦の仙台大会で、韓国がファジーカスや八村に対してどのような守りを見せるかも注意しなければいけない。

韓国のホ・ジェHC(写真右)がどのようなバスケで対抗してくるかも注目[写真]=山口剛生


 だとしても今の日本にはポジティブな要素が多い。ファジーカスは「自分たちは日に日にコンビネーションが良くなっている」と前を向けば、篠山は「もっとニックの良さを引き出せるはず」と心強い。10得点8リバウンド4ブロックショットをたたき出した竹内譲次は「(八村)塁の良さを引き出すことを模索している」と語るなど、オーストラリア戦に向けてチームケミストリーを急速に構築中だ。もっとさらなるコンビネーションプレーも見られるようになるだろう。

 それだけに韓国との第2戦はさらに進化した日本を見たい。韓国のアジャストにどのように対応できるか!? 勝敗だけでなく、内容にこだわったプレー見せてほしい。残された時間はそれほど長くないはずだ。

文=入江美紀雄

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