2021.07.24
■東京2020オリンピック5人制男子日本代表
#2 富樫勇樹(PG/千葉ジェッツ)
#6 比江島慎(SG/宇都宮ブレックス)
#8 八村塁(SF/ワシントン・ウィザーズ)
#9 ベンドラメ礼生(PG/サンロッカーズ渋谷)
#12 渡邊雄太(SF/トロント・ラプターズ)
#14 金丸晃輔(SG/島根スサノオマジック)
#18 馬場雄大(SF/メルボルン・ユナイテッド)
#23 ギャビン・エドワーズ(PF/千葉ジェッツ)
#24 田中大貴(PG/アルバルク東京)
#32 シェーファーアヴィ幸樹(C/シーホース三河)
#34 渡邉飛勇(PF/琉球ゴールデンキングス)
#88 張本天傑(SF/名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)
男子日本代表☆予選リーグ☆テレビ放送予定
7月26日(月)21:00~(サブch:20:45~) vsスペイン NHK Eテレ 生放送
7月29日(木)13:05~ vsスロベニア NHK総合 生放送
8月1日(日)13:30~ vsアルゼンチン NHK BS1 生放送
5月にBリーグのレギュラーシーズンが終わってから、オリンピックに臨む男子代表の合宿がスタートした。代表を指揮するフリオ・ラマスヘッドコーチはこれまでトライしても果たせなかったチームのサイズアップを断行。具体的には192センチの田中大貴(アルバルク東京)をポイントガードにコンバートし、これまで先発を務めていた篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)と富樫勇樹(千葉ジェッツ)をベンチスタートに替え、本番に向けた準備を進めていった。
6月には国内組だけでFIBAアジアカップ予選を戦い、フィリピンから帰国。この時点で篠山とアキ・チェンバース(当時横浜ビー・コルセアーズ、現群馬クレインサンダーズ)が離脱することになった。ゲームの司令塔だけでなくチームリーダーとしてこれまで代表チームをけん引してきた篠山の落選は、特に衝撃的だったと言えるだろう。ラマスHCはその後の会見で理由を問われ、「チームに180センチ以下は2人はいらなかった」こと、さらに「長年、チームを支えてくれた篠山を外すことは苦渋の選択」だったことを明かした。
さらにイラン代表との国際親善試合を経て、東京オリンピックに出場する12名が絞られていく。ここで大学時代から18年もの間、代表を支えてきた竹内公輔(宇都宮ブレックス)、竹内譲次(当時A東京、現大阪エヴェッサ)がチームから離れることが発表される。ともに自身のSNSで悔しさをにじませながら、後輩たちへエールを送るメーッセージを送り、今後を託す気持ちを伝えたことが印象的だった。
そして、埼玉で行われたベルギー戦、フランス戦では八村塁(ワシントン・ウィザーズ)と馬場雄大(メルボルン・ユナイテッド)も加わり、いよいよ本番を戦うフルメンバーがそろった。沖縄の再戦となったベルギーとの試合では、いきなり八村が24得点とリーディングスコアラーとなり、渡邊同様、NBAを主戦場として、そこでプレーを続ける今の実力を示してくれた。
八村はチームに合流して間もないということで、調整の意識も少なからずあったことだろう。それでもシュートの決定力、特にゴール下で決めきるテクニックとパワーをベルギーは止めることはできなかった。「チームでも若いんですけど、そのなかでも経験は豊富。レベルの高いところでずっとやってきましたのでそういう経験を生かして、チームにも自信を与えたり、アドバイスもできると思うのでそういうところを生かしていきたい」と意気込みを話している。
さらに八村の加入は他のメンバーへも好影響を与えている。バスケットボールは5人で争うスポーツだけに、個人がチームにもたらす影響力がサッカーなどに比べて高いと言われる。実際、八村が合流した2試合で43得点をあげて勝利へ大きく貢献したが、八村でなければ決めきれなかった場面もあっただろう。加えて、八村がボールを持つことで、相手チームは時にはマッチアップの1人だけではなく、2人、3人とマークを加えることもある。すると、それによりスペースができ他のメンバーが得点できるチャンスが増えることになる。
また、ディフェンスでは確実にセンターのギャビン・エドワーズ(千葉)の負担が減ったと言えるだろう。八村が加入する前には他のメンバーのサポートをしなければならない場面があり、リバウンドに関しても孤軍奮闘の場面もあった。それが八村の加入で自身の仕事を全うすればいいことになり、攻防について何か吹っ切れたようなプレーを見せるようになった。
もちろんこれはエドワーズだけでなく、比江島慎(宇都宮ブレックス)、金丸晃輔(島根スサノオマジック)、張本天傑(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)らにも好影響を与えている。八村だけでなく、渡邊、馬場の海外組の加入で確実にチーム力はアップした。
フランス戦では八村が19得点7リバウンド、渡邊が18得点9リバウンドを叩き出し、粘るフランスを振り切って勝利。日本に到着して間もなく、メンバーも温存して本来の力を出していなかったフランスだったが、2019年のFIBAワールドカップでは準々決勝でアメリカを破り3位入賞を果たしたヨーロッパの強国に勝てたことはチームの成長を示すものとなった。
フランス戦の勝利でオリンピックに向けた強化試合が終了。ラマスHCは「完璧な内容でプレーしたと思う。40分間通して集中力が研ぎ澄まされていた。ターンオーバーも少なく、各シーンで主役が現れるなど流れも良かった。今の我々の実力のすべてがコートで表現された」と選手をねぎらった。
日本代表の新司令塔の田中は常々2019年のワールドカップでの反省を口にする。「ワールドカップを経験して、常にイメージを持ちながら、レベルは違えどBリーグで意識を持ってやってきたつもりです。あのとき経験もなく迎えたワールドカップとは違って、今は一度体感した圧や高いレベルを、常に想定できているのが一番違うのかなと思います」と語り、苦い経験がオリンピックに生かされると強調した。
それは比江島などの国内組も同様だ。Bリーグでのこの2シーズンで自身の成長を促したのは、その時の悔しさが胸に刻まれているから。確かにワールドカップの予選で戦ったアメリカを除けば、今回オリンピックの予選で戦うスペイン、アルゼンチン、スロベニアは格上とも言えるが、国際大会の経験を持つ選手たちがどのようなプレーを見せてくれるのか、楽しみにしかない。
史上最強と言われる男子日本代表でラマスHCが目指すのは「奇跡の1勝」だ。今の日本のランキングであれば、どのチームに勝っても奇跡だと言える、さらにグループ内の勝ち負けにもよるが、この勝利が決勝トーナメントに導く勝ち星になるかもしれない。だからラマスHCは「奇跡」と呼ぶのだ。
ラマスHCは来るオリンピックに向けて改めて誓う。
「(予選リーグで)何をやらないといけないのか、我々のスタイルをもう一度みんなで確認して、初戦のスペイン戦への準備をしたい。そして、たとえスペインに勝ったとしても負けたとしても、すぐに次の試合に向けて頭を切り替えて、調整していかないといけません。もちろん簡単ではなく、本当に難しい挑戦だと思います。我々は今までの日本のバスケットの歴史に挑戦しています」
出場チームがワールドカップ以上に本気で臨むのは当然のこと。それだけ厳しい戦いが繰り広げられることが明白だ。ただワールドカップに出場してわかったように、この舞台に立たなければ得られない経験がある。仮に奇跡を起こせないにしても、これを今後の強化の糧にしなければならないミッションもあるのだ。
文=入江美紀雄
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