2023.08.30
8月25日に開幕を控えるFIBAワールドカップ2023。開催国の1つとして大会に臨む男子日本代表は、来たる決戦の日に向けてすでに候補選手たちを集め強化合宿を実施している。
選手たちはこの大舞台に向けて、どのような思いを胸にトレーニングに励んでいるのか。幼少期の思い出から今大会にかける思いまで、一人ひとりに話を聞いていく連載。その6人目として、日本代表デビューから1年でワールドカップの候補メンバーに名を連ねた吉井裕鷹に話を聞いた。
インタビュー・文=酒井伸
ーー2021-22シーズン終了後、トム・ホーバスヘッドコーチに見出される形で日本代表に招集され、7月のWindow3でデビューを飾りました。「まさか自分が選ばれるとは」といった言葉もありました。
吉井 その当時はそういった思いもありました。“ぽっと出”でしたからね。当時はアルバルク東京でルカ(パヴィチェヴィッチ/現サンロッカーズ渋谷)ヘッドコーチの下、下積みを重ねていました。「まさか(日本代表に)入れるとは思わなかった」とまでは言わないですけど、順を追っていくごとに入れる自信がついていきました。ただ、過去を振り返ると、以前の状況では入れると思っていなかったというのが正解なのかなと思います。
ーー大阪学院大学2年次の2018-19シーズンに特別指定選手として大阪エヴェッサへ入団。翌シーズンからはA東京の練習生として、多くのトッププレーヤーと練習を重ねました。
吉井 大阪エヴェッサに加入して、そこである程度やっていけるという自信がついたなか、A東京に来てバスケットボールの基礎を学びました。おっしゃるとおり、A東京は日本のトップチームで、練習から日々の生活まで体験するのは本当に衝撃でした。そこで僕のスタンダードのレベルが上がったのは間違いないですね。
ーー前任のパヴィチェヴィッチHC、2022-23シーズンから指揮を執るデイニアス・アドマイティスHCはともにヨーロッパ出身で、質の高いバスケットボールを求められたと思います。
吉井 ヨーロッパ出身のHCの下でバスケットボールをプレーするのは、学生時代にはなかったことで、新しい感覚でした。基礎を一から叩き込んでもらうには最善のコーチだと思います。今でも学ぶことが多いと感じます。
ーーアドマイティスHCから指導を受けるようになり、自分自身における変化はありますか?
吉井 ベースの部分は変わらなくて、求めることを常にやり続けてほしいということ。各選手の役割が1から10まで決まっていて、それを遂行してほしいというのは基本的にあまり変わりません。ルカHCが求めたのは、チームが決めたものを常に遂行し続けること。逆にアドマイティスHCが求めるのは、相手の弱い部分を常に攻め続けるということ。ベースは変わりませんが、オフェンスが少し変わりました。常に攻められるところを攻め続けよう、相手の嫌がるところを責め続けようというのがアドマイティスHCの考え。ルカHC時代は相手に関係なく、自分たちのオフェンス、ディフェンスをやり続けようという考えでした。アドマイティスHCになって、攻める部分が明確になりました。
ーー2人の指揮官から指導を受けて、印象に残っている言葉はありますか?
吉井 一言何かというより、毎日のようにやってほしいこと、遂行してほしいことを言われ続けていました。遂行してほしいところではない場面で自分のプレーをすると、「そこはお前の仕事じゃない」と言われ続けるので、そういったのは本当に勉強になります。何か一言の名言ではなく、日々の積み重ねの言葉ですね。
ーー2022年7月のWindow3でデビューから現在に至るまで、個人、チームとしての出来をどのように捉えていますか?
吉井 僕自身はもう少しできる部分があります。日本代表としても、全体的に合わせられる部分があると思います。チャンスがあれば3ポイントシュートを決めて、チャンスがあればドライブを狙っていくこと。ディフェンスでもフィジカルに戦い続けるという継続性をもっと出していけると思います。
ーー日本代表デビューから1年間。自身の成長をどのように感じていますか?
吉井 3番(スモールフォワード)ポジションとしてクラブでも成長できています。日本代表でも試合に出させてもらって、ある程度は貢献できたと思うので、その部分は成長できたのかなと。ただ、ここから継続できるかどうか。そこは僕の成長に関わってくると思うので、継続してやっていきたいです。
ーー3番ポジションで最も意識したことを教えてください。
吉井 今回もそうですし、とりあえず外の選手なので、3ポイントを決め続けたいです。あとはディフェンスの部分。そこを遂行し続けられるようにプレーしたいです。
ーーWindow6を終えたあと、ホーバスHCが「きれいな3ポイントシュートを打てるように練習したほうがいい。所属チームと代表では役割が違うかもしれないけど、練習の前後で代表の仕事をできるようにトレーニングしてほしい」と言っていました。
吉井 クラブでのシーズンがあったので、(それだけに取り組むのは)なかなか難しかったです。ただ、約4カ月で自信を持って打ち続けられたと思っています。
ーーワールドカップ本大会ではドイツ、フィンランド、オーストラリアと同じグループに入りました。組み合わせが決まった時、率直にどのように感じましたか?
吉井 メンバーに選出されて試合に出る機会があったら、相手が誰であろうと、常にハードに、求められたプレーを常にできるようにしたいと思っています。
ーーアジア予選とワールドカップ本大会は大きく異なります。世界との戦いについてはどのように感じていますか?
吉井 世界相手ではフィジカルが違いますし、スピードも違います。現役を引退するまでにそれを体験できるのは光栄なことですから、世界と対戦するのは楽しみですね。
ーー日本代表に選ばれれば、世代別を含めて自身初のワールドカップになります。世界大会への思いは強いのでしょうか?
吉井 「これまでメンバーに入れなかったから」という思いはあまりありません。引退するまで、選手として日の丸を背負うのはいい経験になります。それが早ければ早いほど、経験を今後に活かせるので、いい経験を積みたいですね。
ーー日本代表候補に選ばれたからこそ、そういった想いが強くなったのでしょうか?
吉井 置かれている状況において、なるべく最善を尽くそうと思っていただけです。ここ(日本代表候補)に入ってから思いが強くなったというわけではないですけど、意識したのは間違いないですね。
ーーメンバー生き残りに向けて、アピールしたい自身の武器を改めて聞かせてください。
吉井 フィジカルにプレーすること、ディフェンスでもミスなくやりきること。試合に出しやすい選手になりたいと思っているので、自分の特長を活かしたプレーですね。例えば、遂行してほしい場面で、ベンチから出しても遂行してくれないとか。それは各個人に置かれている役割で常に遂行できるのか、できないのかは大事なので。自分に置かれてる役割を常にしっかりと理解して、それを試合でも体現し続けるのが「出しやすい選手」。その都度で要求されることは変わってくるでしょうけど、常に対応できるように頑張っていきたいです。
ーー最後にワールドカップへの想いを聞かせてください。
吉井 ワールドカップの日本代表に選ばれたら、日の丸を背負うことになります。その分、プレッシャーもありますけど、ホーバスHCの下、バスケットボールを楽しんでプレーしたいと思います。
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