2023.09.01
8月27日、日本バスケットボール界にとって歴史的な日となった。
沖縄アリーナで行われた「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」の1次ラウンド第2戦、フィンランド代表(FIBAランキング24位)戦。第3クォーターの終盤に一時18点のビハインドを背負った日本代表(同36位)は、第4クォーターで35点を奪取すると、相手のオフェンスも15点に封じて98-88で勝利。ワールドカップでは17年ぶりとなる白星を逆転の末につかんだ。
第4クォーターで得点を奪取したのは、河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)や富永啓生(ネブラスカ大学)、ジョシュ・ホーキンソン(サンロッカーズ渋谷)など。だが、苦しい時間帯、特に前半で気を吐いたのが比江島慎(宇都宮ブレックス)で、第1クォーターでは“バスケットカウント”の3ポイントシュートを皮切りに、ドライブからのシュートやそこでファウルを得てのフリースローなどで加点。22-15と第1クォーターでリードを奪う試合運びに一役買うと、同点に追いつかれた第2クォーターでも相手ディフェンスの状況を見ながらのシュートと積極的に攻撃を仕掛けた。実に前半だけで14得点。フィンランドに突き放されそうなところ、日本が前半を10点ビハインドで踏みとどまることができたのは、まさに比江島の貢献が大きかったと言えるだろう。
「この試合に負けるとワールドカップが終わってしまうぐらいの気持ちで臨みました。実際に前回の試合での『もっとやれたな』という反省を活かして、ゴールだけを見ていました」という比江島は、「相手の守りがスイッチをしてこなかったので、多少のズレさえ起きれば自分のものだと思う。実際にファウルをもらう技術も向上させてきたので、意識してやりました」と、自らの得点シーンを振り返った。
「自信は前からあったし、そのなかでやっと自分の持ち味をしっかり出すことができました」と、胸を張った比江島。後半こそ「悪くなかったけれど、18点差がついたので、ディフェンスよりもスコアリングかなと思って富永を入れた」(トム・ホーバスヘッドコーチ)という理由から出場時間は短かったが、「ディフェンスやゲームのペースもよく読める。彼が前半にあのプレーをしていなかったら(日本は)負けたかなと思います。本当にいい仕事しました」と、指揮官は、比江島の働きを手放しで称えた。
フィンランド戦では持ち味のペイントアタックが効果的だったが、このことについて「ファウルをもらう技術。今までは(ディフェンスを)よけてタフショットのようになっていたと思うのですが、体をぶつけながらスペースを確保するなど、そういった技術の向上は大きいと思います」という。またそういった技術は国内で培ったものでもあるようで、「Bリーグで技術を向上して、世界で戦えるというのは証明できたと思います」とも口にした。
これまで日本に高い壁として立ちはだかってきたヨーロッパのチーム。そこに1勝を挙げ、「自分のバスケ人生の夢の一つでもあったし、バスケット界にとってすごく大きな勝利といいますか、日本中が応援してくれているなかでのこの1勝は大きいと思います」と、語った比江島。同時に「準備は整っていました。なかなかトムHCのバスケットに自分の持ち味を出すことが難しい部分はありましたが、世界の舞台では絶対に自分の力が必要だと思っていたし、世界に勝つには自分の活躍が絶対に必須だと思ってやってきました。自分を信じてやってきた結果です」とも発した。
「田臥(勇太/宇都宮)さんや竹内兄弟(公輔/宇都宮、譲次/大阪エヴェッサ)と一緒にやってきて、そういった土台の積み重ねが今にあり、徐々に世界を経験して自信がついていきました。先輩方には感謝しています」
20代前半からトップの日本代表として戦ってきたベテランは、これまでの先輩たちの思いを問われ、このように感謝の言葉を口にした。
河村、富永と22歳コンビが躍動した後半へとつながったのも比江島の奮起があってのこと。
試合後、歓喜の輪の中にいた比江島は、その時のことを「本当に見たことない景色だった」と言い、笑顔を見せた。一方で、「本当はもう泣きそうになるぐらいうれしかったんですけど、試合は続きますし、僕は我慢しました」とも冷静に語る。
世界大会のレベルや怖さを知っているからこそ、この1勝に満足することなく、チーム最年長は、次なる戦いに気持ちを切り替えていた。
文=田島早苗
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