2021.11.10
日本大学のルーキー・米須玲音は、「第70回関東大学バスケットボール選手権大会」の優勝とともに、もう1つの目標を叶えた。
真剣勝負の場で「河村さんに勝つ」という、これまでも追い続けてきた想いがある。
米須と河村勇輝(東海大学2年)のマッチアップは、次代を担う司令塔として2人が高校時代から注目を集めてきた。実際のところ、1学年下の米須が河村に対して強烈なライバル意識を持っていると言ったほうがいいかもしれない(当然そこには尊敬の意味も含まれる)。
東山高校時代には全国の舞台で3度、河村擁する福岡第一高校に敗れた。今年の2月には一足早くプロの舞台での対戦も実現したが、プレータイムが短く“勝負”と言えるものではなかった。
しかし、米須が日本大に進学して最初に迎えた大会で東海大との対戦が実現。しかも優勝を決する大舞台だ。
日本大の背番号3を背負う米須は、さっそく先発ポイントガードとして主軸を担い、緩急自在のゲームメイクとピンポイントパスで決勝進出に貢献。さらに今の米須の強みはそれだけに留まらない。大学進学前に特別指定選手として加入していた川崎ブレイブサンダースでの日々が、米須のディフェンス力を大いに向上させたのだ。
「Bリーグで学んだことはたくさんありましたけど、やっぱりディフェンスが一番学んで成長できた部分です。川崎に特別指定で加入させていただいて本当に良かったですし、日本大学に入学してからもディフェンスを頑張っていこうと思いました」
東海大との一戦でも、日本大は今季から一層注力しているチームディフェンスが結実。61−57というロースコアゲームに持ち込んだことが大きな勝因となった。
「オフェンスよりディフェンスで河村さんと駆け引きをしながら止めようと思っていました」と、米須も積極的に河村との間合いを詰めて立ち向かった。前日の準決勝で23得点5アシストをマークしていた河村を4得点2アシストに抑え、自身は6得点1アシストを記録。その結果により、米須は河村を1本差で勝り、計19本で今大会のアシスト王に輝いた。
「昨日の時点で河村さんと2本差だったので、そこはちょっと意識しながら試合に入りました。そこでしっかりと自分のディフェンスでアシストをさせないように徹底して、アシスト王をとることができて素直に嬉しいです」
「この負けは自分に一番責任があると思います」
一方の河村は2年生らしからぬリーダーシップで仲間を引っ張った。けれども、東海大の司令塔としてチームを優勝に導けなかったことに人一倍責任を感じていた。
「チームのみんなが試合に向けて最善の準備をしてくれた中で、ポイントガードとしてチームをまとめられなかったです。自分がシュートセレクションやゲームコントロールの部分をまとめて試合をやり通すことができれば勝てた試合だったと思います」
それでも、試合直後は素直に敗戦を受け止めたかのようにキリッとした表情を見せていた河村。米須とも笑顔で健闘を称え合い、一通りの挨拶を終えたあとに向かった先は、現在全治12カ月と診断された大ケガからの復帰を目指している大倉颯太(4年)のもとだった。
「まず、『ごめん…』と謝りました。自分たちはずっと大倉選手の気持ちを背負いチーム全員で戦ってきた部分もありましたし、まだプレーはできていないですけど、本当にたくさんのことで助けてくれている先輩なので。結果で恩返しできなかったのが本当に悔しくて、申し訳ないという思いで謝りました」
「今回の負けを単なる負けにしたくなかった」と河村は、陸川章ヘッドコーチから「我々の頭脳」とも評される大倉からすぐにアドバイスをもらった。
「やっぱりくよくよしていてもしょうがないので、負けてしまったことは素直に受け止めて、外から客観的に見ていて何が良くて何が悪かったのかをすぐ教えてもらいました。そうやってすぐにフィードバックすることで次に生かせると思ったので、高いバスケットIQやレベルの高いものを持っている選手からアドバイスをもらいました」
春のトーナメントで負けた経験があったから――。
今シーズンが終わった時にそんな言葉が言えるよう、これからの東海大、これからの河村勇輝はさらに自らを追い込むのだろう。
文・写真=小沼克年
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