2025.05.23

今夏発足のアジア大学バスケットボールリーグ…目標はNBAに次世代のアジア人スターを輩出

白鷗大学の佐藤涼成[写真]=五島佑一郎

■「若手開発の中心地に」

 今夏、アジアの大学の頂点を決める『アジア大学バスケットボールリーグ(AUBL)』がスタートする。日本・中国・韓国など、アジア各国からトップ大学を結集させるこの試みは、世界最大の大陸の頂点を決めると同時に、アジア出身のスーパースターをNBAへ送り込むプラットフォームになることを目標としている。

 CEOを務めるジェイ・リー氏は『ESPN』に対して、AUBL発足の理由とリーグの目標を語った。

「皆さんにあまり知られていないのは、アジアには世界的に有名な大学が数多くあり、しかも彼らには魅力的なバスケットボールプログラムが存在し、すでに一定のファン層もあるということです。AUBLはまさに、それを次のレベルへ引き上げるものとなります。我々は単なるアジアリーグではありません。アジアの次なるヤオ・ミンや、アジアの次なるジェレミー・リンを育成する、才能ある世界的な若手プレーヤー開発の中心地になり得ると考えています」

■アジア版マーチマッドネスへ

昨年は富永啓生がマーチマッドネスに参戦した[写真]=Getty Images


 AUBLは、“アジアのマーチマッドネス”を目指している。同リーグは“アジアの大学スポーツ”という空白地帯にプロ水準の商業リーグを持ち込み、大学バスケを軸にした新しいタレントパイプラインとスポーツエンターテインメント市場を創出しようとしているのだ。バスケットボールの本場アメリカでは、大学ブランド×スポーツの方程式で大きな商業的成功を収めており、選手個人レベルでもNIL契約(氏名、画像、肖像を使用して商業活動を認める契約)を結び、経済面でプロ選手以上の契約を結んでいる選手も存在。リー氏は、アジアには10億人超のバスケットボールファンが存在するため、大学バスケ市場は急拡大の余地があると考えており、すでにオーストラリアなど世界各地から参戦希望の問い合わせが来ているという。

 第1回大会は、今年8月18日(月)から1週間、中国・杭州で開催される。大会フォーマットは、グループステージ+ノックアウトラウンド方式となり、決勝トーナメントは準決勝からスタートし、初代王者を決定。参加校は全12校で、香港大学、北京大学のほか、日本からは小澤飛悠や西部秀馬を擁する国内トップの実力を誇る日本体育大学と、佐藤涼成をはじめ大学バスケの日韓戦『第48回李相佰盃日・韓大学代表バスケットボール競技大会』に3名のプレーヤーを送り込んだ白鷗大学が参戦する。なお、2026年以降は、6カ月のホーム&アウェイ制+ファイナル4に移行する見込みだ。

 AUBLには、アリババ社の共同創設者であるジョー・ツァイ氏が支援している。ブルックリン・ネッツおよびニューヨーク・リバティのオーナーでもある同氏は、リーグ声明でこのリーグの明るい未来に期待を露わにした。

「私は元学生アスリートとして、大学スポーツが選手とコミュニティにもたらす価値を理解しています。アジア社会では、一流大学自体が最も認知度の高いブランドであり、大学間競争の精神はスポーツへも容易に転化できます。だからこそ、AUBLのビジョンを信じています。アジアの成長するバスケ市場、台頭する才能、そして制度的な支援は、成功する大学リーグの条件をすべて兼ね備えています」

■AUBLからNBAへ「人材発掘プロセスを効率化」

今季NBAデビューしたヨンシー・ツイ[写真]=Getty Images


 中国や欧州の一部ではプロ育成システムが整備されている一方、アメリカでは伝統的に大学バスケがNBAへの主要ルートとなってきた。近年はその図式にも変化が見られ、一例として、Bリーグ入りが噂されている富永啓生の存在がある。日本産ピュアシューターは桜丘高校を卒業後に渡米し、ネブラスカ大学での活躍を経て、インディアナ・ペイサーズとエグジビット10契約を結んだ。

 アジア人プレーヤーも近年は増加傾向にある。日本人としては八村塁渡邊雄太河村勇輝などの活躍が印象的だが、昨年は中国出身のヨンシー・ツイがブルックリン・ネッツと2way契約を締結。また、青島イーグルスのハンセン・ヤンも、今年のNBAドラフトコンバインでニコラ・ヨキッチやアルペラン・シェングンを彷彿とさせるスキルフルなプレーを披露し、久しぶりのアジア人センターのドラフト指名が期待されている。

 AUBLは全試合をストリーミング配信し、SNSでのショート版拡散にも力を入れ、世界規模でリーグの魅力を発信していく意向だ。また、大会公式アプリではファンタジーゲームも構想中で、2028年までに参加校20校以上、視聴可能地域30市場を目標に設定し、女子リーグやeスポーツへの派生も検討している。加えて、高校卒業後にNCAAへ流出していたエリート層をアジア圏の大学に引き留めることができれば、地域内のエコシステムは強化され、NBAスカウトが一括視察できるショーケースとしても大きな価値を持つに違いない。

 CEOのリー氏は、AUBL発、NBA行きのキャリアルート開拓に大きな自信を覗かせている。

「ヨーロッパには若手育成の強固なパイプラインがありますが、商業的価値は必ずしも高くありません。だから、NBAも新リーグ設立を模索しているのです。一方のアジアでは、開発システムが十分でないにもかかわらず、バスケの才能が急速に成長しています。我々はそこからさらに多くのスターが生まれるのを見たいのです。AUBLは大学バスケ界を一元化し、NBAスカウトの人材発掘プロセスを効率化します。そのため、リーグからNBA入りするアジア人選手は確実に増えるでしょう。将来、NBAスカウトたちは、我々の試合を見逃したくないと思うはずです。アジア最高峰の大学チャンピオンが集う場所、そこから次世代のNBAスターが誕生するでしょう」

文=Meiji

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