2021.10.11

【短期連載・TOKYOの先へ】町田瑠唯(富士通/女子日本代表)

富士通では絶対的司令塔でキャプテンも務める町田瑠唯[写真]=Wリーグ
フリーライター

 東京2020オリンピックでは、3x3女子日本代表がメダルこそ届かなかったものの5位と健闘。そして5人制では快進撃を続けて準優勝、銀メダルを獲得した。

 日本だけでなく世界を熱狂させた日本代表選手たちにオリンピックのことや10月から始まるWリーグ、さらにはその先についての話を聞いた。

 第15回は日本が誇る司令塔の町田瑠唯富士通レッドウェーブ)。大会ではオリンピック新記録となる1試合18アシストを記録し、FIBAが選出する同大会のオールスター・ファイブ(ベスト5)にも選ばれた。銀メダル獲得の功労者であるポイントカードが感じた母国開催のオリンピックとは。

五輪での活躍に「ちょっとは期待に応えられたかな」

――オリンピックはどんな大会になりましたか?
町田 最高でした。ただ、最後に負けているので悔しい気持ちは残っています。もちろん、メダルを取れたことはうれしいのですが、どこか引っかかっていて…。たぶん、メダルの実感がなかなかわかないのは、負けた悔しさがあるからだと思います。

――自身のプレーを振り返ってください。
町田 今回は自分のプレーをみんなに生かしてもらったと思っています。みんなは私に生かしてもらったと言ってくますが、みんながいないとできないプレーばかりでした。

 ガードとして『この選手ならここに動くだろうな』と考えながらプレーしていたのですが、信頼関係からか、それが何も言わずに周りの選手たちに伝わっていた。私の動きに対してみんなが合わせてくれたからアシストの数が増えたと思います。

――準決勝のフランス戦では大会新となる18アシストを記録しました。
町田 歴史に名を刻めたことは素直にうれしいですが、アシストは自分だけではつかない数字なので、みんなに感謝しています。確かにフランス戦はすごく合っていたんですよ、みんなと。もうズレがないぐらいハマっていたし、きれいなバスケットをすることができたので楽しかったですね。

――好成績を残した大会を終えてどのようなことに喜びを感じましたか?
町田 うーん…(しばし考えて)。リオのオリンピックが終わって、リュウさん(吉田亜沙美/現・東京医療保健大学アシスタントコーチ)が引退した時、リオでセカンドのガードが私だったので、周りからは『次は町田』という声や期待がありました。でもそれになかなか応えることができなくて。なので今回は、少し遅くはなりましたが、ちょっとは期待に応えられたかな、自分のプレースタイルで結果を残せたのかなと思い、良かったなと感じました。

 特に家族は口には出していないですが、期待をしていたと思うし、もっと頑張れという気持ちもあったと思うので、少しだけ親に恩返しできたかなとも思います。

――トム・ホーバスヘッドコーチは、ガードも積極的に点を取るように求めます。ただ、町田選手はアシストが持ち味。自らの得点と周りを生かすことの棲み分けはどのように考えていましたか?
町田 点を取ることは私の課題で、それができたらいいとは思っていました。一方で、(アシストを武器とする)自分のバスケットのスタイルで結果を残したいという気持ちもありました。もちろん、私の得意とするプレーが通用していないのなら変えなくてはいけないのですが、そこまで世界を相手に止められたという感じもなかったので、周りの良さが消えてまで私が攻めるのは私のプレーではないなと。こんな素晴らしい選手たちを生かさないのはもったいないという思いから、私より点を取れる選手たちをどう生かすかという方にシフトしていったところはありました。もしそれで試合に出られず、メンバーにも選ばれなかったら、それは私がトムさんの求めるバスケットに合わせることができなかったということ。そこは自分のプライドじゃないですけど、これまでの経験もあり、自分のバスケットをブレずにやりました。

――東京オリンピック出場への思いもある中、ブレずに自分のバスケットを貫いた。
町田 懸けですよね(笑)。意地かな…。でも、ガード3人がそれぞれタイプが違うから、いろんなバスケットができるとは思っていました。

東京オリンピックでは、いかんなくその実力を発揮した[写真]=fiba.com

「オリンピックの熱が冷めないように、頑張って行きたいです」

――大会ではアメリカと2度対戦。あこがれのスー・バード(シアトル・ストーム)ともマッチアップしました。
町田 うれしかったですね。スー・バードは、スピードがすごくあるわけでもなく、キレがあって自分からアタックしてパスをするわけでもない。本当に『ゲームメイク』で、空いた時だけ3ポイントシュートやジャンプシュートを打つという感じですが、対戦していて『頭がいいな』と思いました。立ち振る舞いもかっこよくて、表彰式の後もしばらく同じ空間にいたので、ずっと見ていました。めっちゃファンなので(笑)。本当に、あこがれの人はかっこよかったです。

――もう一人、アメリカ代表のレジェンドであるダイアナ・タウラシとはハグをしている写真がFIBAのサイトにアップされていました。
町田 記者会見で入れ替わる時にハグをしてくれました。ダイアナはみんなにフレンドリーじゃないですか、話しかけたり、ハグしてきたり。でもスー・バードはそうじゃないんですよ。笑顔で凛としている感じ。あのペアは最強ですよね。

――話は変わり、Wリーグの開幕が迫ってきました。ここまでの手ごたえは?
町田 富士通のバスケットは、一人ひとりの判断でプレーするところもあり、移籍メンバーたちがまだしっかりと噛み合ってはいないので、もう少し時間は必要かなと思います。でも、アース(宮澤夕貴)もニニ(中村優花)も、バスケットIQが高いし、チャンピオンチームでやってきた2人なので、時間さえあれば合わせていけると思います。

――2人の加入は大きいですね。
町田 2人ともリーダーシップを取ってくれます。練習の中で話をする選手が増えたことはいいですね。そこは今までのチームに足りないところだったので。(ベテランが引退したことで)昨シーズンは私とシィ(篠崎澪)さんしか話をしていない状況もありました。アースやニニが話をすることで、他の選手も話をするようになるなど、いい影響を受けています。

――今シーズンの富士通には周囲の期待も大きいです。
町田 ですよねー(笑)。期待されていることは感じます…。

――得点力が上がりますか?
町田 シューターやインサイドで体を張れる選手が入ったことで選択肢が増えたという感じですね。得点の選択肢が増えたことは感じています。でも、一番はリバウンド。アースとニニが入って、リバウンドの意識がすごく強まったと思います。

――得点の選択肢という点ではガードとしてパスの出しがいがあるのでは?
町田 あるのですが、最近は打てるけど隣が空いてる→打てるけど隣が空いていると、みんなパスをして、結果、打てなくってしまう…というのにハマっていて。点を取る人たちはもう少し積極的に打ってもいいのかなと思っています。そこは一人ひとりの武器、役割をはっきりさせることで良いバスケットができるとも感じています。

――自身の役割は?
町田 これまでと大きく変わらないと思います。アシストもそうですし、ゲームコントロールのところ。それと、得点も昨シーズンよりも取る意識でやらないと。アシストとドライブは警戒されると思うので、シュートを意識的に狙っていきたいです。

 日本代表のように必ずガードが崩してとか、ガードがゲームメイクをしてシュートチャンスを作るというよりは、富士通は全員でボールを回して全員で動くバスケットなので、ボールにからんでない時もしっかりプレーを作っていけるように。いい選択をできるようにやっていきたいです。新しく入ったアースとニニにも伝えながら引っ張っていきたいですね。

――最後にシーズンに向けての意気込みをお願いします。
町田 オリンピックを通してたくさんの方にバスケットを見てもらい、バスケットは楽しい、面白いと感じてくれる方がすごく増えました。もう一度、Wリーグを通して女子バスケットが盛り上がるように。一番はチームの優勝、勝つことですが、個人的にはそれに加えて、見ていて楽しいバスケットができたらいいなと思います。オリンピックの熱が冷めないように頑張っていきたいです。

取材・文=田島早苗

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