2025.08.27

WNBAにロックアウトの可能性…「払うべきものを払え」選手会側がリーグに数倍の収益分配を要求

WNBAに多大な経済効果を与えているケイトリン・クラーク[写真]=Getty Images

 WNBAが最悪の場合、ロックアウトの危機に直面するかもしれない。

 WNBAとWNBPA(全米女子バスケットボール選手協会)は現在、新たな労使協定(CBA)に向けて交渉を進めている。しかし、批准まで残すところあと60日となった現時点でも交渉は難航しており、『FrontOfficeSports』は「期日の10月31日までに新WNBA労使協定が成立する可能性は低い」と報じている。

 新CBAの交渉に詳しい関係者は、即座の労使協定の停止を避けるべく、現行契約の短期延長が有力との見解を示している。一方、WNBPAの常任理事を務めるテリー・カーマイケル・ジャクソンは、リーグの考えに大きな疑問を呈している。

「選手たちは、女子スポーツとWNBAの成長性、勢い、その他ポジティブなニュースを基盤にした変革的なCBAを実現するべく、精力的に取り組んでいます。60日を切った今、リーグの緊急性の欠如は、本気で取り組んでいるのか、それともただ時間稼ぎをしているのかと、選手たちに疑問を抱かせています。ファンはそんなことを望んでいません。彼らは選手とともに、WNBAの新たな基準を求めているのです」

 WNBPAがリーグに求めること。そのひとつには収益分配構造の改善が挙げられる。NBAでは、選手側がリーグのバスケットボール関連収入の約半分を受け取り、収益に応じてサラリーキャップも上昇するシステムを採用。『FrontOfficeSports』によれば、2025-26シーズンの開幕前にして、NBAのキャップは最大10パーセント上昇したという。

 一方のWNBAでは、サラリーキャップの増加は3パーセントに固定されているほか、収益分配はわずか約10パーセント。NBAの50パーセントと比較すると、選手側が受け取る配分には大きな隔たりがある。これは前回のCBA締結の交渉時期による影響も大きく、前回のCBAが批准された当時、WNBAのビジネスモデルは現在ほど安定していなかった。

 だが、WNBPAが収益分配の改善を求めるには、目に見えたリーグの収入増がある。WNBAは昨年、11年間で22億ドル(約3242億円)という莫大な新メディア放映権契約を締結。また、6月にはWNBAが2030年までに18チームにまでリーグを拡張すると発表し、クリーブランド、デトロイト、フィラデルフィアを本拠地とする3チームから、それぞれ2億5000万ドル(約369億円)を調達することが報告されている。さらに、2023年から2024年の観客動員数は、前年比48パーセント増。それに比例してグッズ販売も飛躍的に増えており、一部の専門家は「選手の給料が倍増しても価値を正確に反映しているかは不確か」と、選手側の主張を支持している。

 7月末に開催されたWNBAオールスターウィークエンドにも、WNBAとWNBPAは会合の場を設けたが、参加した副会長のブリアナ・スチュワート(ニューヨーク・リバティ)とナフィーサ・コリアー(ミネソタ・リンクス)らはリーグ側との隔たりの大きさに「時間の無駄」と一刀両断。また、オールスターゲーム前には選手たちが「Pay Us What You Owe Us(=払うべきものを払え)」という力強いメッセージがプリントされたTシャツを着用してウォームアップを行い、リーグ側に明確な抗議の意を示した。

“選手会が望む変革的なCBA”の合意に至らなかった場合、リーグの未来は大きく分けて2つ。ひとつは、本稿冒頭で可能性が提示された現行契約の短期延長により、交渉期間を延長してリーグ活動を継続すること。そして、もうひとつがロックアウトやストライキといった労使協定の停止だ。

 交渉が合意に至らないままCBAが失効した場合、リーグは試合の中止、フリーエージェンシー遅延に追い込まれるほか、チーム活動も許可されないため、選手のトレーニング環境にも混乱を招くこととなる。さらに、2026年からはトロント・テンポ、ポートランド・ファイアが参戦予定となっているが、これもCBAが締結されて初めて実現に至るため、合意は急務となっている。
 
 選手側は「リーグの成長を支えてきた」と主張しており、それに見合った対価を要求している状況だ。果たして、WNBAとWNBPAは期日までに着地点を見つけることはできるのだろうか。

文=Meiji

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