2022.02.19
ロサンゼルス・レイカーズが開幕前に思い描いた青写真は、白紙に戻っている。優勝候補の一角と謳われた頃の輝きは消失し、現在は何とかプレーオフ圏内にしがみついているような状況だ。
その要因のひとつには、ビッグ3の最後のピースとして加入したラッセル・ウェストブルックの不調がある。『Yahoo! Sports』は、今シーズン最大の“期待外れ”となってしまったウェストブルックの苦戦の理由を、データを基に分析している。
はじめに、『Yahoo! Sports』は“リングへ迫る回数の低さと効率の低下”を挙げている。ウェストブルック最大の持ち味と言えば、爆速的な勢いでリングに到達するダイナミズムだった。しかし、同誌によれば、ウェストブルックのフィールドゴールアテンプトのうち、リングから3フィート(91センチ)以内で放ったショットが34.4パーセントしかなく、これはキャリアで6番目に低い数値だという。比較対象として、ヒューストン・ロケッツ在籍時には、41.5パーセントを記録していた。
さらに、回数のみならず、成功率も大幅に減少しており、成功率58.2パーセントはキャリアワースト5位の成績で、2019-20シーズンの64.0パーセントから約6パーセントも成功率が低下している。アテンプトに関しては、レブロン・ジェームズという絶対的な支配者の存在も起因しているはずだが、成功率の悪さはチーム内でリズムをつかめていない証拠と言える。
また、“トランジションでの脅威”も大幅に薄れている。数年前は毎試合のようにリバウンドを取っては瞬く間にリングへと到達していたが、『Synergy Sports』の計算によると、同選手は今シーズン205回のトランジションチャンスでわずか171点しか得点できず、得点効率を示すポゼッション・パー・スタッツ(PPP)は0.88と低調。これは、パトリック・ベバリー(ミネソタ・ティンバーウルブズ)よりも低く、エバン・モーブリー(クリーブランド・キャバリアーズ)やケイド・カニングハム(デトロイト・ピストンズ)といったルーキーと同様の数値だ。
戦術とのミスマッチという観点では、“ピック・アンド・ロールとの相性の悪さ”も特筆すべきだろう。『Synergy Sports』の計算では、ウェストブルックの得点チャンスのうち28.1パーセントがピック・アンド・ロールから生まれているという。しかし、このプレータイプに限定した得点は0.826PPPと、こちらも低調な数値をマーク。過去のピックの採用率は、ワシントン・ウィザーズ時代が19.1パーセント、ヒューストン・ロケッツでの最後の一年が12.4パーセントであることを踏まえると、フランク・ヴォーゲルは今すぐに新たなオプションを検討する必要があるだろう。
さらに、オフェンス効率の悪さを示す証拠として、“フリースロー獲得率の低下”が挙げられる。シューティング関連のアドバンススタッツのひとつに、フィールドゴールの試投数でフリースローの試投数を割ったフリースローレート(FTr)という項目が存在する。このスタッツで、デビュー3年目のウェストブルックは45.4パーセントをマークしていたが、今シーズンはキャリアワースト3位の32.3パーセント。加えて、フリースロー成功率もキャリアワースト3位の67.3パーセントと決して褒められるものではなく、こちらもレイカーズのオフェンスを停滞させている要因のひとつと考えられる。
得意とするトランジションでパフォーマンスを発揮できないため、ファウルラインにも到達できず、これまでのキャリアとは全く別の役割が求められているウェストブルック。以上を踏まえると、レイカーズが最高の居場所でないことは明らかだが、その高額契約により移籍も容易にまとめることはできない現状だ。彼本来の実力を発揮するためには、レイカーズが球団単位でシステムを見直す必要があるのではないだろうか。
文=Meiji
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