2022.09.12
9月7日(現地時間6日、日付は以下同)。サンアントニオ・スパーズで4度の優勝に貢献したほか、アルゼンチン代表としても活躍したマヌ・ジノビリの記事が『ESPN』へ公開された。
ジノビリはティム・ハーダウェイ(元ゴールデンステイト・ウォリアーズほか)やジョージ・カール(コーチ)らと共に、11日にマサチューセッツ州スプリングフィールドにあるシンフォニー・ホールで、バスケットボール殿堂入り式典へ出席することとなる。
この記事の中で、スパーズCEOのRC・ビュフォードは「彼には情熱があり、ものすごい競争心を持ち合わせていた」と語れば、グレッグ・ポポビッチHC(ヘッドコーチ)は「初めて彼に会った時、彼はそれまで見てきた中で最も恐れ知らずの競争者だった。彼は細身でハートがあり、強い意志があった。それはコート上のどの選手とも異なるものだった」と、ジノビリの第一印象について話していた。
1999年のドラフト2巡目全体57位でスパーズから指名されたジノビリは、イタリアで腕を磨き、ユーロリーグファイナルでMVPを獲得する選手へと成長。
のちにスパーズのアシスタントコーチ(AC)も務めたエットーレ・メッシーナは、才能が開花したジノビリについて「彼はジャンプショットが向上した。それにドライブしている時のオープンなチームメートたちを見つけ出す能力も伸ばしたんだ。そこでピック&ロールをしている時でもベストシューターがどこにいるかを把握できるようになった」と振り返る。
そして2002年のFIBA世界選手権(現ワールドカップ)で、ジノビリ擁するアルゼンチン代表は、アメリカ代表と対戦。「彼はユーロリーグやイタリアリーグの決勝のように、重くプレッシャーがのしかかるようなゲームでポゼッションの価値を理解し始めていた」(メッシーナ)と評されたジノビリは、同大会でアメリカを撃破。NBA選手を送り込んだ国際大会で、初めて黒星を見舞ったのである。
「アメリカはもはや世界でベストではない。彼らはハッピーではないと思うよ」と言い放っていたジノビリは、02-03シーズンからスパーズでNBAデビューを飾った。NBAキャリア16シーズンをスパーズ一筋で過ごした男は、優勝4度に加えてオールスターとオールNBAチームにそれぞれ2度、08年には最優秀シックスマン賞にも輝いた。
片腕だけでクロスオーバードリブルを繰り出したり、目の覚めるような鋭いパスを通してディフェンス陣の度肝を抜いてきたジノビリは、変幻自在の動きで予測不可能とも評され、数多くのハイライトシーンを残してきた。
そんなジノビリにとって、最も有名なスキルと言えば、ユーロステップだろう。ドリブルからペイントエリアでショットを放つうえでマッチアップ相手を惑わすステップワークを見せてきた男について、ポポビッチHCはこう話す。
「彼はスタイルを変えた男になったんだ。それに数多くのことをやってきた。それはアメリカの選手たちがコピーし始めるほどだったんだ」。
ジノビリはこのユーロステップを初めてNBAに持ち込んだ選手ではないものの、この男が巧みに繰り出して見事に決めていったことでNBAでも有名となり、今ではスーパースターたちが当然のように使ってくる。
一般的に、NBAへユーロステップを持ち込んだのはシャルーナス・マーシャローニス(元ゴールデンステイト・ウォリアーズほか)だと言われているのだが、このマーシャローニスとジノビリともプレー経験を持つブレント・バリー(元シアトル・スーパーソニックスほか)はジノビリの影響力をこのように評していた。
「僕はシャルーナスともたくさんプレーした。彼にはそれ(ユーロステップ)があったけど、もっとコンパクトにやっていた。彼には(ジノビリのような)歩幅はなかったんだ。(ユーロステップに)ダンサーのような美しさやテンポを変えるほどの優雅さを持ち込んだのはマヌ・ジノビリなんだ」。
ジノビリは1歩目で相手に近づき、瞬時に繰り出す2歩目で出し抜いてレイアップまで持ち込む鮮やかさもあり、当時のリーグでも異色と言えるプレーだった。そのため、ルーキーシーズンではトラベリングをコールされてしまうこともあった。
また、ジノビリは殿堂入り式典でプレゼンターを務めるティム・ダンカン(元スパーズ)、トニー・パーカー(元スパーズほか)とスパーズでビッグ3を形成し、感情をむき出しにして戦う姿勢やリーダーシップで手本を示し、スパーズのハートとして君臨してきたことも見逃せない。
NBAという世界最高のプロバスケットボールリーグで平均20.0得点超えやMVP獲得経験こそないものの、ジノビリはスパーズという球団にとどまらず、NBAいやバスケットボール界に多大な影響を与えてきただけに、今回の殿堂入りは当然の結果だろう。
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