2017.12.26

【インタビュー】新潟アルビレックスBBの育成担当者が語る、スクールの意義と今後の展望

新潟の下地一明氏(左)と蟻浪亮氏(右)
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「世界に通用する選手の輩出」をミッションに掲げているBリーグでは、B1リーグライセンス付与条件の一つとして2018年の4月よりU15チームの保有を義務づけている。バスケットボール王国の一つ、新潟県を拠点に活動するB1の新潟アルビレックスBBは、2017年7月下旬に公式ユースチーム「新潟アルビレックスBB U-15」の設立を発表。12月11日までに4度のトライアウトを実施し、“ダイヤの原石”を探している。そんな新潟だが、実は2002年にスクールを開校し、現在は約750名の生徒を抱えている。そこで、担当者の下地一明氏と蟻浪亮氏に、スクールでの活動、そしてU15チーム設立に伴う部活動との両立など、育成年代に関する様々な話をうかがった。

インタビュー=バスケットボールキング編集部
写真=新潟アルビレックスBB

――まず、お2人の自己紹介をお願いします。
蟻浪 スクールの普及担当として、指導の傍ら新潟県内の子どもたちをスクールに入会していただけるように営業活動を行っています。一番下は年中さんから始まりますので、保育園でボール遊びをとおしてスポーツって面白いんだよということを伝える活動や、合宿という形で子どもたちを集めるということをやっています。

下地 僕は大学3年のときに、病により現役を引退せざるを得なくなりました。そこからコーチの仕事を始めて、新潟アルビレックスBBでのアシスタントコーチの他、いろいろなチームを経て、今はU15チームのヘッドコーチをしています。

――アルビレックスのスクールは長い歴史をお持ちですよね。
蟻浪 そうですね。2002年に開校して、今では新潟県内に19校、生徒は750人くらいいます。

――生徒数はそんなにいらっしゃるんですね。
蟻浪 新潟県はバスケット王国ですから。

――スクールではどんな運営方針を掲げていますか?
蟻浪 世界で通用する選手を育てたいということは、どのクラブも言っていると思いますが、アルビレックスが掲げているものが3つあります。スクールは年中からのスタートになるので、そういう子にきっかけを作りたい、バスケットボールと出会って楽しんでもらうことがひとつ。そして、バスケットだけが上手になればいいということではなくて、健全な心と体を育むことが2つ目です。挨拶などバスケットボール以外のところでも成長してほしいということで指導をしています。そして大きくなってくるにつれて、バスケット選手としてトップチームに上がれるような子どもを育てる。それを常に考えながら指導しています。

――新潟ならではの地域性や特徴はあるのでしょうか?
蟻浪 まず一つ言えるのは、協会がすごく協力的であるというところですね。体育館がなければできないスポーツなので、そういう施設面での協力とか、体験会をする、何々をするというときにも積極的に協力してくださるのでとても助かっています。同じ新潟県というところで、すごく協力をしてくれるところは地域の特徴だと思います。

――部活動との両立という点はいかがでしょうか? 学校の部活動とスクールと両方やっているお子さんも中にはいらっしゃると思うのですが。
蟻浪 スクールのユースチームは、ただ立ちあげるのではなくて、まず各地区の学校の監督さんに僕たちがご挨拶に行って、こういう活動で今後取り組んでいきますということをお話します。今の段階では部活動とユースチーム活動の両立、つまり二重登録が認められていますので、こちらのユースの活動に専念しなさいとかそういうことは一切なしで、活動をやらせてくださいとご挨拶回りに行かせていただいています。

下地 僕はユースのヘッドコーチですが、子どもたちには部活動に専念しなさいと言っています。僕がいい指導者かどうかはわかりませんが、子どもたちはいい指導者を求めています。いいもんだなと感じたらこちらにもちゃんと来てくれます。それは(部活動の)試合が終わったあとも来るし、練習が終わってからも自然と来るんです。僕が無理してこっち来いとは絶対に言わないですが、僕らが伝えている内容を彼らが感じ取って、いいものであれば自然と選手が来てくれるので、それはすごくありがたいですね。彼らはまだ子どもだけれど、もう選手です。彼らには子どもとは言わず、お前ら選手だぞと伝えています。今の部活動を見ていると、バスケットの指導者のライセンスがない中で、サッカーの指導者が教えていることもあるし、学校の先生は授業と部活動を両立させなければいけません。その負担を軽減させてあげられるように、Bリーグの働きかけでユースができて、それがきっかけで、各クラブのトップチームにつながるようにU-18ができてとなれば、各チームの良さ、色、方針がありながらも、日本全体が大きく強くなっていくと思います。

――子どもたちはBリーグができたことで、プロチームの下部組織なんだ、という意識が強くなったと思います。
下地 間違いなく影響はありますね。このユースからプロ選手になる。プロ選手から、新潟のトップチームから日本代表になる。日本代表だけじゃなくて、アジア各国のリーグがあり、ヨーロッパのリーグがあって、NBAもあるわけです。いきなりNBAなんていうのは正直まだ偉そうには言えないですが、ステップアップしながらできていけばいい。一歩ずつしっかり階段を登っていって、新潟の代表になったぞと。新潟の代表になれば、日本のトップの人にも目を付けられるかもしれないので、そういう意味では、このユースは本当に価値のある組織だと思います。

――お子さん見るときに一番重視しているのはどんなことですか?
蟻浪 うまい、下手は問わない。これはもう間違いないです。僕は目を見ます。本当に好きな子は、目の輝きが全然違いますし、自分からどんどん来ますね。うまい、下手は問わずに、好奇心があります。

下地 うまい、下手じゃないという点で言うと、田臥勇太(栃木ブレックス)選手ですよね。僕は大学生のときに彼をはじめて見て、最初はこんなちっちゃい選手がバスケットできるのかなっていうふうにしか見てなかったんです。だけど、彼の生き様だとか、彼の取り組みを聞いていたら、やっぱり志が、バスケットに取り組む姿勢が違うと(いうことがわかった)。

新潟の選手で言うと城宝匡史選手です。彼とは、僕が富山グラウジーズのヘッドコーチを務めていたときに出会ったのですが、彼は練習に一番早く来るんですよ。それで、最後に帰るんです。人一倍練習するんです。ということは、バスケットが好きなんですよね。うまくなりたいんです。僕はそういった選手がはいあがっていくと思います。その当時、bjリーグの選手とNBLの選手は絶対戦えないよって言われていたのが、今はどうですか? 戦えているじゃないですか。そういう意味で彼の活躍はうれしいですね。そこにはうまい、下手もなくて、うまくなりたい選手だけが勝ち残っていくのだと思います。

蟻浪 僕は佐藤優樹選手と五十嵐圭選手ですね。特に子どもたちに見てもらいたい選手がこの2人です。佐藤選手は、最後までボールを追いかける姿勢を子どもたちに見てもらいたいです。五十嵐選手に関しては、ドリブルがとても上手なので、子どもたちによく見て真似してもらいたいですね。スクールで行うキャンプには必ず選手が来てくれますし、畠山(俊樹)選手は、都合のつく日は自ら指導をしてくれることもありますよ。

――教えに来てくれるんですか?
蟻浪 そうなんです。なので試合会場に行くと、畠山コーチ頑張れっていう横断幕をスクール生が掲げています(笑)。そのときばかりはコーチなので(笑)。

――最後に、今後の展望を教えてください。
蟻浪 スクールは今、750人の子どもたちと一緒にバスケットをやっているのですが、もっと人数を増やして1000人規模までもっていきたいです。ただ、人数を集めればいいということではなく、バスケットを通じて、人としても大きくなっていってもらいたいし、かっこいい人間になってもらいたいと思います。僕自身もみっともないところは見せれないので、そこは日々勉強しながら子どもと成長していきたいと思っています。

下地 日本バスケットボール界が変わる中で、今の子どもたちは本当に幸せだと思います。僕らの時代からしたらすごく羨ましくて、本当に今、現役復帰したいくらい(笑)。その中で、まず目先の目標としてはこの中から新潟のトップチームに所属する選手を作ること。そして、(選手生活が)終わったあとに指導者になる子たちもいると思うので、彼らがいい指導者になって、彼らがまた日本を強くしてほしい。彼らが教えた子がまた育って、いい伝統を、歴史をつないでいってくれたらいいと思います。

下地 一明(しもじ かずあき)

■生年月日:1976年12月4日
■出身地:沖縄県
■プレー歴:北谷高校→中央大学→OSGフェニックス(2001年現役引退)
■コーチ歴:
2001-2002 OSGフェニックス アシスタントコーチ
2003     男子バスケットボール日本代表 アシスタントコーチ
2004-2009 新潟アルビレックスBB アシスタントコーチ
2010-2011 富山グラウジーズ ヘッドコーチ(シーズン途中から就任)
2011-2012 富山グラウジーズ ヘッドコーチ
2014-2015 埼玉ブロンコス ヘッドコーチ
2016~   D-EQUIPOバスケットボールアカデミー(株式会社T2C運営)U-15、U-11コーチ
2016-2017 富山グラウジーズ アシスタントコーチ(シーズン途中から就任)

 

蟻浪 亮(ありなみ りょう)

■生年月日:1985年10月30日
■出身地:新潟県
■経歴:新潟市立高志高校→アップルスポーツカレッジ

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