2020.11.13
「B.LEAGUE ALLSTAR GAME 2019」出場メンバーで、最後のSNS投票によって選ばれた男、水戸健史(富山グラウジーズ)。今回オールスターが開催された富山の南西部にある南砺市出身で、プロデビューした2008年から計11シーズン、富山一筋でプレーする選手である。1年前にオールスター開催が富山に決まった瞬間に、彼なしでは富山でのオールスター開催はある意味ありえないと思っていた。
地元への想いは誰よりも強く、彼のオールスター出場への周囲の期待感は時間を経ていくにつれて増していったが、自身は控えめな性格でもあり「自分なんて……」ということを出場が決まるまで言っていた。「終わってホッとしていますね(笑)。もう始まるまでの緊張が本当にすごかったので。地元という部分での緊張というか、僕が出ていいのかなという想いが心の中ではすごく感じてました。終わって楽しむことができましたし、ホッとしています」とオールスター開催が決定してからの1年間という時間を、安堵の表情で振り返ってくれた。
富山市総合体育館で自身の名前をコールされ、どの選手よりも大きな歓声を浴びてコートに足を踏み入れた瞬間、彼自身緊張感が最高潮に達していたと話す。「実は緊張していて何も入ってこなかった感じでしたね。どうやって入場しようかなと考えていたんですけど、そんな面白いこともできずサラッとコートに入った感じでした。振り返ると自分はそんなに面白いことできないなと改めて実感しましたね(笑)」。
それでも、その緊張はゲームが進んでいくにつれて解消していった感じに見えた。夢のような40分間を終えて感想を求められると、「今日はすごく楽しい40分間でした。いつもとは違う雰囲気の中でバスケットができたので、すごく楽しかったです。自分は大学も関西でしたし、今まであまり他の選手と話す機会がなくて。代表とかにも入ったこともなかったですし、他のプレーヤーと触れ合う機会って今まで無かったんですけど、今日はチームとして全員で楽しく勝ちにこだわってバスケットすることができたので良かったです」と最高の笑顔を見せてくれた。
ゲーム中にフリーとなり、彼のダンクを久しぶりに見られるかも、というシーンもあった。しかし急遽レイアップに切り替えた瞬間、シュートを落としてしまう場面もあった。会場からは笑いとツッコミが入ったのであったが、水戸はあの瞬間のことをこう振り返った。
「中途半場にダンクに行こうかなと、頭をよぎったのが良くなかったですね(笑)。行けるかなと思ったんですけど、迷いが生じました。それがまさかのリングに当たってポロリにつながりました、恥ずかしいです。自分自身ではやってしまったという感じだったんですけど、それで会場に詰めかけてくれた皆さんが笑ってくれたりしてくれたなら良かったかなと思っています」
そんな夢の時間もあっという間に過ぎ、いよいよ熾烈なリーグ後半戦がスタートする。今シーズンの富山はバスケットボールとともに時が進んでいる。12月に行われた「FIBAバスケットボール ワールドカップ2019 アジア地区 2次予選(Window5)」の開催に続いて、今回のオールスターゲーム開催。そうなると、ここから期待されるのは富山グラウジーズのチャンピオンシップ進出だ。前半戦を終えて中地区首位からゲーム差「4」の3位と過去2シーズンとは全く違う景色が広がっている今、「もう本当にすぐに後半戦がありますけれども、水曜日は中地区首位の新潟(アルビレックスBB)との大切な一戦もありますし、すぐに切り替えて試合に臨みたいなと思います。今は上を狙える順位だと思うので、この調子をもう一段階も二段階もあげて上を目指して結果を残していきたいです」と意気込む水戸。チームの顔である33歳は、最後にこう締めくくってくれた。
「今日は本当にたくさんのファン・ブースターのおかげで素晴らしいオールスターになったと思います。本当に感謝しています。このあと後半戦が始まりますけれども、一試合一試合いい試合をして強いチームになれるようにがんばります」
富山のバスケ熱のために、このオールスターの熱狂を継続させるために、今度は彼が富山をより盛りあげる存在になるであろう。
文=鳴神富一
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