2019.03.01

近未来のスポーツの楽しみ方、次世代スポーツ観戦スタイル「B.LIVE in TOKYO」

品川のステラボールに約1000人のファンを集めた「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2019 B.LIVE in TOKYO」[写真]=B.LEAGUE
バスケットボールキング編集部。これまで主に中学、高校、女子日本代表をカバーしてきた。また、どういうわけかあまり人が行かない土地での取材も多く、氷点下10度を下回るモンゴルを経験。Twitterのアカウントは @m_irie3

最新テクノロジーが集約されたBリーグ発の新しい試み

 1月19日に富山市総合体育館で行われた「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2019」は、昨年の11月28日にB1/B2ファンクラブ入会者向けの先行販売と12月1日のB.LEAGUEチケット先行販売でも即完売、さらに12月8日に行われた一般販売でも6分で完売したという人気のイベントとして話題を集めた。さらにこの模様を東京でも味わえる次世代型ライブビューイング「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2019 B.LIVE in TOKYO」(以下B.LIVE in TOKYO)が品川のステラボールにおいて開催されたのは記憶に新しい。

 会場がほぼ満員となる926人のファンが駆けつけたB.LIVE in TOKYOでは、富山会場で行われているゲームの最中はスーパープレーに一喜一憂するとともに、ゲストの折茂武彦レバンガ北海道)、太田敦也三遠ネオフェニックス)、小林慎太郎熊本ヴォルターズ)とMCを務めた田中 大貴アナの掛け合いなどで、会場は大いに盛り上がった。

 実はB.LIVEは昨年に続き、2回目の開催となる。Bリーグのパートナーである富士通が持つ最先端のICT(情報通信技術)テクノロジーを用いて、まるで試合会場にいるような感覚を味わえることが最大の特徴だ。さらに今年は富士通と同じくBリーグのパートナーであるソニー・ミュージック・エンターテインメントも加わり、演出面での強化が成されている。もちろん、富士通も昨年以上のICTテクノロジーがB.LIVE in TOKYOに投入され、B.LIVEを支える「臨場感」「一体感」「高揚感」を5つの革新によりさらにパワーアップされている。

 プレーの迫力を高める臨場感の拡張を目的とする革新1は、会場正面に設置された幅14メートルのワイドスクリーンに8K映像を投影。加えて左右のサイドスクリーンにはベンチや観客席の様子も映し出されて、さながら会場にいるかのような錯覚を覚えたファンも多いだろう。

会場正面に設置された幅14メートルのワイドスクリーンに8K映像を投影 [写真]=B.LEAGUE

 富山の最前席で応援している迫力を味わえる360度サラウンド立体音響が革新2。「選手のプレー音」「試合会場の歓声」と3D音響で再現している。

 革新3は、プレーの迫力を触感でリアルに共有できるHaptics(振動)ゾーン。ドリブルやプレーヤーのフットワークで起きる振動を拡張する「振動スピーカー」を設置し、コートにいるような感覚を創出した。

 富山のプレーヤーやファンと一つになる一体感を生み出したのが超高最細・低遅延の双方向伝送が革新4。膨大なデータを圧縮するHEVCにより、8Kワイド映像を100Mbps以下の回戦でも高品質に伝送することにより、これによるテレビなどの中継でよく見られる映像と音声のズレをほぼ解消。富山と品川の会場の盛り上がりを共有することができるようになり、インタラクティブな会場間の掛け合いを実現させている。

ほとんど時差のないやり取りに、富山と品川との距離は感じられなかった [写真]=B.LEAGUE

 革新5では、ICTガジェットを使って観客の高揚感を扇動。ファン参加アプリ「WAVY proto.」はステージ上の演出に用いられ、ファンの思いや行動をリアルタイムに反映させた。遠隔操作ロボット「ANA AVATAR」は富山と品川間のコミュニケーションツールとして、ハーフタイムの演出に大活躍。チームや得点者を予想し、ビンゴゲームで勝利者を決める試合展開予想「ビンゴアプリ」は、アプリをダウンロードすればすぐに参加できる優れモノだ。

「経営者なので色々と考えながらイベントを見ていました」(折茂)

イベントを盛り上げた田中 大貴アナと折茂武彦太田敦也小林慎太郎の各選手(左から)[写真]=B.LEAGUE

 イベント終了後、会場を盛り上げた折茂、太田、小林の3選手にB.LIVE in TOKYOの感想を聞いてみた。

――B.LIVEの第一印象を教えてください。
折茂 まず加藤ミリヤさんをはじめとするアーティストの皆さんの音楽シーンを見たときに、「ミュージックビデオ見てるんじゃないか?」というくらい演出だったり画質や音にびっくりしました。一言で言えば本当にすごいなと。

太田 本当に僕もビックリしました。映像に音や振動が加わることで臨場感がすごく伝わってきました。

小林 振動や音のクオリティが非常に高くて、映画館でバスケットボールの試合を見ているような印象です。今まで見ていたテレビやスマートフォンから映像とは違う新感覚が生まれたと感じました。

――折茂さんが大活躍されたアバターはいかがですか?
折茂 あれが一番面白かったです。みんな「ん?」という感じでしたけどね(笑)。僕もああいう取り組みは楽しいなって思いました。ファンやブースターの方が知らない、見たことがないシーンも良かったと思います。例えばロッカールームに帰って行くシーンとかロッカーの中だとか、そういうシーンは見たことがないと思うので、それを見られるって楽しいことだし興味のあることでしょうし。非常に面白かったなと思います。

“折茂アバター”とのやり取りで会場が大いに沸いた [写真]=B.LEAGUE

――アプリはどうでした?
小林 激しかったですね(笑)。流れが早すぎて。でもインパクトのあるコメントは結構見てました。「折茂と飲み行きたい」とか、そういうことばっかり書いている人もいましたね。「(太田)敦也かわいい」というのも目に付きました(笑)。

――ライブビューイングをリーグで行うのはどう思いますか?
折茂 いいと思いますね。僕は(クラブの)経営者なので色々考えてやってますけど、年間半分しかホームとして売り上げない中、それをアウェイでもパブリックビューイングで有料にすれば、それだけ収入源になります。あがった収益は選手の人件費になったり環境改善など、色々なものに還元できるのではないでしょうか。今日の会場を見て、「いくらかかってるのかな?」とか、「入場料を考えてペイできるのかな?」など考えちゃうわけですよ。いずれは各クラブがやっていかないといけないと思いますが、我々のような小さなクラブには、まだまだ先の世界なのかもしれないですけど、でもこれが第一歩となり、もっともっと進化すれば、スポーツ観戦がもっと楽しくなってくると思います。プロ野球やJリーグにバスケも追いつきたいと思っているので、非常に興味のある時間を過ごさせてもらったなと感じます。

太田 オールスターで言えばチケットを買えないとか、リーグで言えばアウェイで見に行けない人に対して、こういう形で応援したり観戦できるのは本当に素晴らしいなと思いました。もっと深く応援したいとか、もっと多くの皆さんにも応援してもらえるような可能性がりますね。

 最新のICTテクノロジーを思う存分導入して、スポーツ観戦の新しい姿を見せてくれたB.LIVE in TOKYO。「クラブはチケットの売り上げ、スポンサー収入で成り立っていますが、このイベントが第3の収入源になる可能性があります」と経営者でもある折茂が語ったように、Bリーグをはじめ、各クラブからも注目を集めている。富士通はそれに応えるべく、大掛かりな機材を持ち込まなくても済むようにイベント自体のパッケージ化にも注力を怠らない。このスタイルがBリーグのレギュラーシーズンに定着したら……、日本のバスケットボールファンは常に“推しクラブ”と一緒に戦うことができるようになり、クラブとファンとの距離はこれまで以上に縮まっていくに違いない。

文=入江美紀雄

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