2025.05.28

最後まで貫いた“団結の力”…ベンチで戦いを見守った岸本隆一はチームメートを称えながらも複雑な心境を吐露

チームメートに寄り添い、鼓舞し続けた琉球の岸本隆一 [写真]=B.LEAGUE
編集者、ライター

 5月27日に横浜アリーナで行われた宇都宮ブレックス琉球ゴールデンキングスによる「りそなグループ B.LEAGUE FINALS 2024-25」GAME3は、ハーフタイムの時点で琉球が12点をリード。小野寺祥太松脇圭志などが相手のお株を奪う3ポイントシュート攻勢を見せ、前半から試合を優位に進めた。

 ところが、宇都宮の反撃に遭った後半は接戦の展開。さらに、7点リードで迎えた第4クォーター開始4分12秒にはインサイドの要を担うジャック・クーリーがファウルアウトでコートを去った。ワンポゼッション差に詰め寄られると、D.J・ニュービルに逆転の3ポイントを献上。ケヴェ・アルマのフリースロー2本で再びリードを奪ったものの、前半無得点だった比江島慎に決勝点となる長距離砲を許し、惜しくも優勝を逃した。

 今シーズンの琉球は9月にイタリアで行われた国際トーナメント参戦からスタート。シーズン中はリーグ戦に加え、天皇杯やEASL(東アジアスーパーリーグ)など国内外の戦いを含めて計85試合をこなした。「りそなグループ B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2024-25」を前に負傷で戦線離脱を強いられた岸本隆一は、4年連続でファイナルに駒を進めたチームに胸を張る。

「個人的にはレギュラーシーズン終盤からチャンピオンシップにかけてプレーできずもちろん悔しいですけど、今日を含めみんなから勇気をもらうというか、心に来るようなプレーを感じて。望んだ結果ではないですけど、自分たちの過程はすごくいいものだったと思っています」

 2013年の加入から琉球一筋の岸本は、ファイナルの舞台をコート外から見守ったことについて聞かれると、「難しい」と一言。積極的にチームを鼓舞する姿が見られたが、複雑な思いを抱えていたようだ。

「強いて言うなら、ファンと同じ気持ちというか。自分はコート内でどういった仕事ができるかということに対し、とにかくこだわりを持っているタイプだと思うので。自分が何かしらの形でチームの力になりたいという思いで応援していたのと、あとは何とも言えない気持ちですかね。プレーできなかったのは何もスッキリしていないです、正直。これは必ず何かしらの形で今後、自分の力に変えたいと思っています」

 試合に出られなくてもチームメートへ声を掛け続けた。戦術的なアドバイスもあったというが、「1つのミスに引っ張られていたら試合は終わってしまいますし、逆に1つのいいプレーに必要以上に気分が高揚するという隙がチャンピオンシップでは命取りになる。僕は経験上、そう思っているので。ベンチにいても試合に入っている状態を保ってほしいという意味合いで、できるだけ言葉を掛けるようにしていました」と明かした。

 指揮を執る桶谷大ヘッドコーチも「最後に結果が出てほしかった」と率直な思いを語りつつ、「シーズンをとおして本当に大成功だと思います」と堂々のコメント。ルーキーの脇真大が台頭し、崎濱秀斗平良彰吾といった途中加入のメンバーも存在感を発揮した。

「間違いなくみんながそれぞれの持ち味を出して、役割をしっかりと担ってプレーしてくれた。みんなが成長するチームになったということです。どこのチームも『シーズンをとおしてそういうチームを作りたい』と言っていると思います。ただ、優勝するのは1チームしかない。悔しさはありますけど、本当にみんながよくやってくれたし、ここまでこられたのはみんなのおかげだと思っています」

 セミファイナルでは松脇の“神の右手”が望みをつなぎ、GAME3でヴィック・ローが30得点の大爆発。あとがないなかで迎えたファイナルGAME2ではベンチ出場の荒川颯が13得点と躍動した。練習生から昇格したウィタカ ケンタは時に通訳を務め、HCを支える佐々宜央アソシエイトヘッドコーチは熱く指揮。そして、どんな時もファンがチームを後押しした。「選手だけではなく、スタッフ、ブースター、沖縄全員が団結してここまでこられたと思います」(伊藤達哉)。“団結の力”を示して戦い抜いた琉球にも賛辞を贈りたい。

文=酒井伸

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