2025.09.06
観客席からの温かい拍手は、両チームの健闘を称えるものだった。しかしその多くは、最後まで諦めずに戦い抜いた敗戦チームへと向けられていた。
7月31日、ジップアリーナ岡山で行われた「令和7年度全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会(インターハイ)」男子準決勝で、鳥取城北高校(鳥取県) と仙台大学附属明成高校(宮城県)が対戦した。
仙台大明成は第1クォーターからリードを許し、試合終了残り3分半で14点を追う状況に追い込まれた。しかし、そこから驚異の追い上げを見せる。攻めては小田嶌秋斗(3年)が連続で3ポイントを沈め、守っては全員で体を張り、足を止めずにダブルチームを仕掛けて猛追。残り6秒には三浦悠太郎(3年)のフリースローで68-70とした。
最後の攻撃は、相手に1本のフリースローを決められて迎えた残り3.2秒からだった。スローインからパスを受けた三浦がバックコートから両手でシュートを放つと、ボールは綺麗な弧を描いてリングへ一直線。そのまま吸い込まれるかと思われたが、わずかにリングに弾かれた。
最終スコアは68-71。「僕自身も含めて、(優勝までの)5試合を戦い抜く気力がまだまだ足りないです」。激闘を終え、畠山俊樹コーチはそう振り返りながらも、最後まで逆転を信じて戦い抜いた選手たちを称えた。
「最後まで諦めなかった彼らの気持ちというのは、明成高校らしいと思いました。私自身もこのチームに帰ってきて“明成らしさ”を取り戻したかったという思いがありましたので、そこはすごく体現してくれたかなと思います。本当にあと一歩でしたけど、それは私自身の責任でもあります」
同校のOBである畠山コーチは、2023年に逝去した佐藤久夫コーチの後を引き継ぐ形で仙台大明成のコーチに就いた。就任して「明日(8月1日)で3年目」という指揮官は、この2年余りが「10年、15年ぐらいの長さを感じました」と口元を緩めながら話した。しかし、その裏にはさまざまな葛藤、たくさんの支えがあった。

ベンチから指示を出す畠山コーチ [写真]=小沼克年
「急な交代でしたので最初は右も左もわからない状況でしたけど、本当にいろんな方に声をかけていただいてここまで戻ってこられたと思っています」
感謝の言葉を述べた畠山コーチは、「高校生らしく一生懸命がんばることや、久夫先生もよく仰っていましたけど、『当たり前のことを当たり前にできる』。 そういう人間になってほしいなと思っています」と、これからも選手とともに成長する未来を描く。
準決勝で20得点を挙げた小田嶌は、東山高校(京都府)を破った準々決勝で30得点の活躍を見せた。それでも、「自分が止められたときは三浦や(新井)啓太など周りの選手がやってくれましたし、1人に頼らない“全員バスケ”がチームの持ち味」と強調。「(畠山コーチには)ディフェンス、リバウンド、ルーズボールの部分は口酸っぱく言われてきました」と、165センチながら強度の高い守備でもチームを鼓舞し続けた。
1年生のころからスタメンを張ってきた小田嶌に対し、「私もポイントガードでしたので、ガードとして大切なことを伝えていきたい」と畠山コーチ。「彼自身も、なにくそ根性が出てきました。これからは、どうチームを動かしていくのかという部分をもっと成長させなければいけません。それができれば彼自身のプレーの幅も広がっていくと思っています」と指揮官はチームの要のさらなる成長を見据えていた。
「もっと足を使ったディフェンスで相手に苦しいプレーをさせて、リバウンドとルーズボールも一つひとつ徹底していきたいです。明成らしい泥臭いバスケで、日本一を取りたいと思います」(小田嶌)

これからの成長にも期待 [写真]=小沼克年
2021年以来となる全国ベスト4。惜しくも決勝進出とはならなかったが、名門復活への狼煙が岡山の空に上がった。
文・写真=小沼克年
2025.09.06
2025.08.10
2025.08.04
2025.07.31
2025.07.30
2025.06.22
2025.08.13
2025.08.08
2025.08.03
2025.08.01
2025.07.31
2025.07.29