2026.06.09
「B.革新」を目前に控え、Bリーグ各クラブはコート上の戦力だけでなく、事業運営を担う「フロントスタッフ」の強化という課題に直面している。そんな中、Bリーグと総合人材サービスを展開するパーソルキャリア株式会社が発表したのが、副業・兼業人材活用プログラム『スキルリターン with SPORTS』だ。
都市部で活躍する高度な専門スキルを持つ副業・フリーランス人材と、地域のプロスポーツクラブをマッチングするこのプログラムは、ベルテックス静岡での先行事例を皮切りに全国のクラブへの波及を目標としている。
なぜ今、Bリーグは外部人材を求めるのか。そして「スポーツ×副業」が地域にもたらす真の価値とは。Bリーグの菅原瑠美氏と、パーソルキャリアの森宏記氏にその意図を聞いた。
インタビュー・文=峯嵜俊太郎(バスケットボールキング編集部)
写真=兼子愼一郎
・地域プロスポーツクラブと副業・フリーランス人材をつなぎクラブの成長と地域活性化を目指すプロジェクト
・多くのプロスポーツクラブは少数精鋭で運営されており、ビジネス人材の不足が構造的な課題
・パーソルキャリアのプロフェッショナル人材の総合活用支援サービス『HiPro』登録者データベース12.5万人を活かし、県外からの人材獲得に加え、プロスポーツクラブと地域企業間の人材シェアリングを推進していく

Bリーグ 事業企画グループ・SR 推進グループ 菅原瑠美氏[写真]=兼子愼一郎
――今回の取り組みの背景として、「多角化したクラブ運営業務を担える人材」が不足しているという状況があるそうですね。
菅原 人材不足は、多くのクラブにとって長年の課題でした。Bリーグクラブの社長は非常に強いリーダーシップを持っていることが多いですが、その「右腕・左腕」となって戦略を立てる人材が地域内ではなかなか見つからない。さらに現場レベルでは、チケットを販売するスタッフさえ不足しているクラブもあり、どのレイヤーやポジションが不足しているかはクラブによってまちまちですが、共通して人材不足の課題は聞いていました。
――先行事例として紹介されたベルテックス静岡では、クラブの事業・運営に関わる領域での副業人材の活用が決定しています。リーグとしてはどのように捉えていますか?
菅原 今回の取り組みは正社員採用も含んでいますが、副業人材の活用はリーグとしても取り組みたいと考えていた点です。とはいえ、受け入れ側が注意すべきポイントも多く、そこが整備されないまま大々的に始めるのは双方にとって良くないという懸念もありました。その点、(ベルテックス)静岡さんは「どのポジションなら活用できるか」という明確な考えをお持ちだったので、一つのモデルケースになると考えています。
――他のクラブからも実施したいという声は挙がっていますか?
森 はい、すでにご相談いただいています。だからこそ今回、(ベルテックス)静岡さんの事例を紹介させていただきました。どういうケースでどんな結果が出たのか、これを各クラブにシェアすることで、新しい価値や共創が生まれ、Bリーグ全体が盛り上がっていく。それがBリーグさん側のやりたいことなので、我々としても今後は全面的に展開していきたいと考えています。

パーソルキャリア株式会社 森宏記氏[写真]=兼子愼一郎
――今回の取り組みの中には、クラブとスポンサー企業間での人材シェアリングも含まれています。これは人材不足解消だけでなく、クラブとスポンサーの関係性をより強固なもの変え得るのでは?
菅原 おっしゃる通りです。クラブの人材強化は優先度が高いですが、それを地域に広げなければ意味がないと思っています。実は「スポーツを活用する側(スポンサーや自治体)」にも人材が不足しているのではないかという仮説があります。スポーツの活用を理解している人がいるかどうかで、取り組みの質やスピード感が全く変わります。そうした人材も強化することで地域全体の活性化に繋げたい。最終的にはBリーグだけでなく、同じ地域のサッカーや野球など他のスポーツクラブともシェアリングしていく形もあり得ると思っています。
――スポーツ業界での活動を望む人材に特徴はありますか?
森 明確にあるのは「“好き”を仕事にできる」という強いモチベーションだと思います。バスケットが好き、あるいは静岡というエリアが好きといった、自分のスキルや経験を好きなものに還元したいという思いが個人側にあります。それがパフォーマンスを上げる大きな因子になっていると感じます。
――外部人材の登用にハードルを感じているクラブもあるかと思います。今回の取り組みにおいて、それを乗り越えるための魅力やポジティブな面はどういうところにありますか?
森 スポーツクラブに限らず、日本の企業では外部人材を活用するにあたり、「情報漏洩」や「コミットメントの薄さ」を懸念する考えがまだ強い印象です。そこを我々が間に入り、企業と個人の間の「掛け違い」が発生した際には一つずつ整えていく、それは我々がこれまで信頼いただいてきた部分だと思います。スポーツ業界においても、そうした事例を一つずつ積み上げていくことが非常に大切だと考えています。
菅原 あとは、今回の(ベルテックス)静岡さんの事例では、募集に集まったプロ人材の方々に、実際にアリーナに来てクラブのフィロソフィーを理解してもらうプロセスをしっかり踏んでいます。そうした点も、今回のプロジェクトを通して外部人材を登用しやすい要素となるのではと感じています。

[写真]=兼子愼一郎
――今回の取り組みは、事業面での人材強化を目的としていますが、各クラブのファン・ブースターの皆さんにはどのような好影響があると思いますか?
菅原 フロントスタッフが何をしているのか、普段はなかなか見えにくい部分かと思いますが、実はファン・ブースターの皆さんの「観戦体験」に直結しています。例えば、アプリのUIが改善されてチケットが取りやすくなる、アリーナの食事が充実する、入場時の混雑を避ける導線設計がなされるといったこと、これらはすべてフロントの成果です。こうしたスタッフの仕事については、本プロジェクトの一環として今後展開する「B.LEAGUE 仕事図鑑」(2026年夏頃公開予定)を通じてぜひ紹介していきたいです。
――その他に今後の目標について、具体的な数字や展開のイメージはありますか?
森 先行して(ベルテックス)静岡さんの事例があったように、すべてのクラブが何らかの課題、ないし潜在的な課題を抱えられていると思います。Bリーグさんのパートナーとして取り組む以上、そうした全チーム・全エリアで本プロジェクトを展開したいです。だからこそ、2026年度中に60件のマッチング創出を目標として掲げております。この「60」という数字は大事にしたいですね。
――Bリーグファンの皆さんにはどのようなところに注目してほしいですか?
菅原 今回の取り組みは、スポーツ業界に限らず一般的なビジネスの仕組みとして面白いものになると思います。昨今、さまざまな場所で“地域創生”という言葉が掲げられている一方で、「“地域創生”って何なの?」と思っている方もすごく多いのではと感じています。今回のプロジェクトが目指す「人が地域に来て消費を加速させる」というのはその答えの一つだと思うので、一つのビジネススキームとして注目していただきたいです。また、「B.LEAGUE 仕事図鑑」は読み物としても非常に楽しい内容になる予定ですので、これを見ることで、普段のアリーナ観戦や配信をまた違った視点で楽しんでいただけるのではないかと思っています。
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