2020.06.16
2月8日の横浜ビー・コルセアーズ戦、この日はADIDAS SPECIAL DAYと銘打たれて、A東京のメンバーは真っ赤な3rdユニフォームを纏って戦った。試合は第2クォーターに一気に突き放し、後半に入ってもそのリードを広げて92−73のスコアで大勝。チームは勝率で東地区首位の宇都宮ブレックスに並んだ。
この試合で小酒部自身は第4クォーター残り4分53秒の場面にコートイン。期待のルーキーの登場もあり、ドライブからシュートを決めるなどすると、3273名のファンで超満員にふくらんだ会場を沸かせたのである。
以前、小酒部も含めた特別指定選手についてコメントを求めた際にルカ・パヴィチェビッチヘッドコーチは「3人(小酒部、平岩玄、笹倉怜寿)は非常に期待感があり、素晴らしい選手で今後のバスケット界を背負って立つと思うのでアルバルクに来てくれて本当にうれしく思っています。1日でも早くチームにフィットしてもらいたいし、できるのであれば試合でもどんどん使っていきたい。しかし、まだ彼らは成長している段階」と話していた。しかし、試合後の記者会見では以前よりもその評価が上昇。
「まだチーム全体のローテーションには入っていませんけども、あと一歩のところですね。もう少し頑張ってくれれば、しっかりと使える選手になるという期待もあります。本当に彼は練習での姿勢もいいですし、もちろんハードワークも継続していますので……今日の試合に関してはいいパフォーマンスを見せてくれました。これをしっかりとどんどん継続してアピールし続けてくれれば、彼の良さがどんどん出てもっともっと試合に出場する機会やプレータイムが増えていくと感じています」
コーチから「あともう少し」という評価をもらった小酒部は、自分に対しての課題を込めながらゲームを振り返った。
「今日は点差が離れていたというのはあったんですけど、出たら自分がやるべきことをやろうと思っていて。雰囲気に飲まれずに自分のプレーができたかなと思います。自分の中でフィジカル面や、決めるべきところでシュートを決めきる力というのは課題としてありますね。そしてチームディフェンスの形は覚えていて、今までやってきたとおりにアグレッシブに気持ちを出してディフェンスするのは当然ですが、ゲームライクになった場面で自分の動きが少し狂ってしまったのはあるので……そこからしっかりと理解して自分のプレーをできるようになれば、試合にもっと絡むことができると感じています」
そんな彼はある意味、退路を絶ってプロの道へと足を踏み入れている。その決断をしてチームに合流してから約1カ月強、自身の決断は間違っていないと断言した。
「(大学)最後の4年生の時にプロに行くか迷ったんですけど、高いレベルでプレーしたいとずっと考えていて。その道は正解だったかなと思っていて、これからも自分自身をもっともっとレベルアップさせていきたいなと考えています」
大学のバスケ部は退いたが、退学をしたわけではない。文武両道を貫くことが小酒部のモットーでもある。
「今は授業がほぼない状態ですが、3年時で単位をしっかりと取得できれば4年生の時はほぼ卒論だけになり、大学とチームとの行き来がほぼなくなる予定です。この3年生の後期は大学とチームとの往復は結構あって大変でしたが、これからはもっとプロの世界に集中できる感じですね」
とはいえ、大学では絶対的なエースとして欠かせない存在であることは想像に難くない。それだけに神奈川大学の幸嶋謙二監督は引き留めようとしたに違いない、それでも最終的には彼の想いを受け止めて最終的には背中を押した形となった。その監督への感謝を小酒部自身は胸にプロの世界を突き進む。
「幸嶋さんも本当はチームに残ってほしいと思っていたんですけど、自分のことを考えてくれて背中を凄く押してくれました。『行っていいよ』と言っていただいて……自分もその言葉があったからこそプロの世界に生きやすい環境にいさせてもらったなと感じています。この道は自分が作り上げてきたわけではなくて、大学の監督さんや周囲の人たちに環境を与えてもらっているので、気持ちとして感謝と楽しみの両方がありますね」
小酒部は2023年に自国で開催されるワールドカップを見据えながら、まずはチームの中で戦力になるために進化し続けると最後に誓ってくれた。
「3年後の沖縄で行われるワールドカップでプレーすることを意識していますね。今は大学とは全く違うフィジカルや高さに自分の中で全く新しいバスケの世界を感じながら、慣れるのは容易ではないですけど……まず今はチームのローテーションに入るというのは一番考えていて。ディフェンスからしっかりとプレッシャー掛けて、そこから自分が持っているシュート力をオフェンスで見せていきながら、リバウンドにもしっかりと絡んで自分のいい部分を見せていければなというのはあります」
シンデレラボーイのストーリーは第2章に突入したばかり、ここから進化し続ける彼の姿がリーグ3連覇のポイントの一つになるはずだ。
文・写真=鳴神富一
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