2020.10.03

新キャプテンとして初めて臨んだ試合に勝利した安藤誓哉…「全員がそろった時、自分たちはもっと強くなれる」

開幕戦、攻防においてチームをリードした安藤誓哉(左)[写真]=B.LEAGUE
バスケットボールキング編集部

 10月2日、アリーナ立川立飛でアルバルク東京川崎ブレイブサンダースの一戦でBリーグ2020-21シーズンが開幕した。コロナ禍の中で入場数を50パーセントに制限したり、応援も声出し禁止、アリーナの敷地内ではマスク着用が義務化されるなど、過去4シーズンのような熱気に満ちた雰囲気ではないが、様々な問題をクリアして特別な日を迎えたとも言える。

 試合はディフェンス合戦で幕を開けたが、川崎のオフェンスの起点である篠山竜青辻直人ニック・ファジーカスを徹底的に抑えたA東京がイニシアティブを握る。日本に帰化したファジーカスに外国籍選手を2名コートに立たせる高さを生かした布陣の川崎に対して、一歩も引くことなくA東京は第2クォーターで川崎の得点を6にとどめるなど、前半で9点リードを奪った。

 後半は本来のプレーを取り戻したファジーカス、藤井祐眞の1対1、ジョーダン・ヒースの連続3ポイントに苦しんだものの、A東京は前半の貯金を生かして85-79で開幕戦に勝利した。

 A東京のスタッツを振り返ると、激しいマークにあいながらタフショットを沈めたアレックス・カークが24得点10リバウンドのダブルダブルを達成。そして司令塔の安藤誓哉が18得点6アシストのパフォーマンスを発揮した。

「今できる100パーセントの力を出せた試合でした」

 キャプテンとして長年A東京を率いた正中岳城氏が昨シーズン限りで現役を引退。その後を引き継いだ新キャプテンの安藤の動向に注目が集まったのは言うまでもない。試合後の記者会見でもそれに関する質問が集中、安藤はその一つひとつを丁寧に対応した。

 試合開始から安藤の動きは昨シーズン以上に激しいものだった。特に出だしの場面ではマッチアップした篠山が思いどおりにできないほどのプレッシャーをかける。反対にボールを運ぶ場面ではディフェンスでは定評の高い篠山に圧をかけられるが、反対にファウルを誘発させ、思いどおりにプレーをさせなかった。

「メンバーが全員そろわない中で練習をしてきました。難しい試合になると思っていましたが、開幕戦に勝てて本当に良かった。今できる100パーセントの力を出せた試合でした」と、ファンの前で安藤は笑顔で語った。

 新型コロナの影響でケビン・ジョーンズデション・トーマスはまだチームに合流できていない。昨シーズンの開幕直後に故障した安藤と同じポジションの小島元基も試合に出られるまでまだ時間がかかりそうだ。

 そのような難しい状況の中、「チーム力はまだ100パーセントに届いていません。でもこういう時だからこそ、残った選手がいつも以上の力を出すよう危機感を持って試合に臨みました。それぞれが120パーセントの力を出したとも言えます。それが勝因ですね」と安藤は胸を張る。さらに「そして、全員がそろった時、自分たちはもっと強くなれるはず」と、前を見据える。

「キャプテンになったからと言って何かが大きく変わった感じはありません。これまでもガードとしてベンチでもチームメートに声をかけていましたし、それでもキャプテンとしてよりコミュニケーションを取るようにしていますが」と語る安藤。「自分が何をしなければということはみんなが分かっているので、僕がかけたのは『やるぞ』という一言だけ。いろいろな意味で厳しい状況ですが、ブレずにプラスのオーラを出すことは意識しています」と、自身のキャプテン像を示してくれた。

 試合後、A東京のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチは今日の安藤の出来について、「リーダーシップとパフォーマンスでチームに勝利を導いた。人間的にも成熟している」と高く評価。それでも「前半は篠山、藤井を抑えられたが後半の守りは修正しなければいけない」と厳しい注文を付けた。

 それに関しては織り込み済みだ。「後半は川崎のオフェンスの能力を見せつけられる形になりました。明日はもっと厳しい試合になる」。そう言う安藤だが、開幕戦を勝利に導いた安ど感もあったのだろう。これまで以上に表情が豊かになった印象がある。

「フルではないといえ、ファンの皆さんの前でプレーすることに価値がある」

 と、話す内容にも自覚がにじみ出ていた。自身のリーダー像を模索しながらのシーズンを送りながら、チームとともに成長していく。

試合後、コート上でのインタビューで「準備してきたことを出せた」と安藤は胸を張った [写真]=B.LEAGUE


文=入江美紀雄

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