2023.02.08
9月29日に7年目の開幕を迎えるBリーグ。今オフも各クラブが積極的に補強を行い、多くの選手が新天地へと移った。
ビッグネームの移籍も目立ったなか、注目の移籍選手として挙げられるのが富山グラウジーズから宇都宮ブレックスへ移籍したジュリアン・マブンガだ。2015年から日本で活躍し、2020-21シーズンにはベスト5へ選出されたBリーグ屈指のオールラウンダーはなぜ移籍を選んだのか。その胸中に迫った。
インタビュー・文=岡本亮
取材日=2022年9月15日
※インタビューはリモートで実施
――まずは昨シーズンについて聞かせてください。チームとしては24勝35敗、個人としてはBリーグ開幕以降最低となる平均14.7得点という結果に終わりましたが、どんなシーズンでしたか?
マブンガ 昨シーズンはいろいろな意味で難しいシーズンでした。まずは自分のコンディションが良くない時期があり、そしてその前のシーズンで主力だった日本人選手が移籍し、相手チームが自分にフォーカスする状況が多くありました。自分が常にチームを引っ張らなければいけない状況だったので、そういった意味でなかなか難しいシーズンだったと思います。
――そんなシーズンを終えて、宇都宮ブレックスへの移籍を決断されました。移籍の決め手を教えてください。
マブンガ 勝つために来た、というのが最大の理由です。ブレックスが昨シーズン優勝したのは周知の事実ですが、このチームに自分がしっかりフィットできると思っています。
周りには私とチームのフィットに関してネガティブなコメントをする人もいますが、どんなチームでもフィットできると感じています。得点面はまったく問題ないと思っていますし、チームワークをしっかりと築いていければと思います。このチームで勝つために来たというのが一番大きな理由です。
――とはいえ、富山ではチャンピオンシップへ出場し、ベスト5に選ばれるなどいい時間を過ごしていた印象です。富山を離れるという決断は難しくなかったですか?
マブンガ その問いに対してはイエスの部分もあるし、ノーの部分もあります。キャリアを長く続けてきてベテランの域に入ってきましたが、富山では得点、リバウンド、ディフェンスとすべてをやらないといけない、常に引っ張らないといけない状況が続いていました。
バスケットボールの歴史を振り返っても、キャリアが長くなっていくにつれ少しずつ役割が減っていくのは自然な流れです。ブレックスはとてもバランスが取れていて、誰かが常に走って点を取らなければいけないという状況ではありません。これまでのキャリアで個人的な成績は達成してきたので、あとはチームとして優勝したい。それがやり残したことなので、優勝するためにブレックスへ来ました。
――宇都宮とは6年間対戦してきましたが、どんな印象を持っていましたか?
マブンガ 一番の印象としては、タフで難しい相手。Bリーグが開幕してからスタンダードをキープしていますし、すごく難しい相手という印象です。あとはファンのサポートが素晴らしく、すごく熱い印象もあります。
自分のキャリアにおいてブレックスのホームで勝った記憶は1度しかないので、それくらいファンのサポートが熱くて勝つのが難しい相手だと思っていました。今年は味方としてサポートしていただけることをすごくうれしく思っています。
――宇都宮のファンはすごく熱い方が多く、ブレックスアリーナでは圧を感じていたと思いますが、実際にプレーしていてプレッシャーは大きかったですか?
マブンガ そうですね。プレーヤーとして会場に来た時もそうですし、2年前にブレックスアリーナで開催されたチャンピオンシップに観客として来た時もすごく圧を感じました。
ファンの皆さんは声援やクラップでチームに対する思いを表現されますが、それがとてもプレッシャーでしたし、日本の中でもトップクラスに熱いファンが集まっていると思います。ブレックス以外にオールスターでスタメンが4人選ばれるチームはないと思うので、そういった意味でもブレックスのファンが一番だと思います。
――宇都宮はチームカルチャーがしっかり構築されているチームという印象です。そういったチームへ入るにあたって難しさを感じる場面はありましたか?
マブンガ 全く感じていません。ブレックスのようにカルチャーができているチームへ入る時は、集中力を持ってチームがやることについていかなければいけませんが、それをやっていれば問題ありません。
実際、初めて練習に参加した時はディフェンスやコミュニケーションの部分にフォーカスしていたので、シュートを1本も打ちませんでした。このチームでは、得点だったり自分をよく見せることだったりに集中する必要はありません。カルチャーにしっかりフィットできるよう集中して取り組んでいければ、全く問題ないと思っています。
――佐々宜央アシスタントコーチがヘッドコーチへ昇格し、今シーズンから指揮を執ることになりましたが、「こういう役割を担ってほしい」という話はありましたか?
マブンガ 佐々HCとは夏ごろからずっとコミュニケーションを取っていて、時には1時間以上電話することもあります。いいコミュニケーションが取れていると感じていますし、お互いの意思は統一されていると思います。彼が自分に何を求めているのか、どういったところに期待しているのか100パーセント理解できていると思っています。
――では、今シーズン個人としての目標があれば教えてください。
マブンガ 個人の目標は全くなく、チームとして勝つことが唯一の目標だと思っていますが、あえて言うなら自分の最大限の能力を常に出せるようにすること。これまでのキャリアの中で、個人のスタッツを目標に掲げたことは一度もなく、常にチームが勝つことに特化してきました。今シーズンもそこにフォーカスし、しっかりやっていければ最高のチームになると思っています。
――宇都宮は今シーズン東アジアスーパーリーグ(EASL)にも参戦します。
マブンガ 知人がEASLに携わっているので、本当に楽しみです。彼らがアジアで新しいリーグを作って実際に開催されるのは本当に喜ばしいことですし、自分たちが参加できることをとてもうれしく思います。
――最後に宇都宮のファンへメッセージをお願いします。
マブンガ ブレックスに来てまだ1カ月ほどですが、すでにファンの皆さんの温かいサポートを感じています。これまで敵として戦ってきましたが、今シーズンから自分を後押ししてくれると思うとうれしい気持ちでいっぱいです。皆さんに最高のパフォーマンスを見せられるよう頑張っていきたいと思いますし、楽しみにしてほしいです。
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