2019.02.27
3シーズン目の開幕を目前に控えたBリーグ。過去2シーズンで得た成果、反面浮き出てきた課題、その両者を昇華していくことでクラブはさらに進化を遂げていく。B2に所属する茨城ロボッツは、今シーズン特にその真価が問われるクラブの1つと言っていいだろう。昨季は終盤に怒とうの17連勝を記録したものの、あと一歩のところで地区優勝とプレーオフ進出を逃した。今季は積極的な戦力補強で8名の選手を入れ替え、3度目の正直で悲願のB1昇格を狙う。今回、バスケットボールキングではそんな茨城を指揮する若き指揮官・岩下桂太ヘッドコーチに昨季の振り返りと今シーズンへの意気込みをうかがった。(9月3日取材)
インタビュー・文=小沼克年
写真=茨城ロボッツ、B.LEAGUE
――今シーズンの茨城は、8名の選手が新たに加入しました。
岩下HC 現状は色んな方から「ロボッツ強化してるね」、「いい補強してるね」と言われています。それは僕も感じていて、やはり望んでいたいい選手が集まってくれたなと。選手たちがしっかり集まってきてくれたというのは、それだけ周りから茨城ロボッツというチームの評価が上がってきてるとも捉えています。今までの評価は低かったのですが、今シーズンは「ロボッツでやりたい」って言ってくれた選手もいましたし、これだけの選手がB1昇格のために集まってくれたというのはやはりすごく大きいと思っています。
――岩下HCから見て、現状のチーム状態はいかがですか?
岩下HC チームは今作っている最中なんですけど、僕と岡村(憲司/スーパーバイジングコーチ兼監督)さんで話している中では、まだまだ完全な形にはなりきってないですね。ただ、これだけ集まったピースをまとめあげるのがコーチ陣の役割だと思うので、そこを試行錯誤しながら今やっているところです。
――岡村監督とはどのような連携で指揮しているのですか?
岩下HC 基本的には岡村さんが指揮しています。昨シーズンは岡村さんが試合に出ているときだったりとかは僕が基本的にやっていました。
――明確な役割分担などは決まっているのでしょうか?
岩下HC そこは結構柔軟にやっています。タイムアウトのコールだったり、選手交代などを岡村さんの指示で僕が動くこともありますし、「岩下ちょっとやっといて」と言われて僕が直接指示を出すこともあります。連携はもう3年目なので、うまくいっていると感じています。
――HCと監督が続投ということは、今シーズンもチームスタイルは変わらないですか?
岩下HC もちろん踏襲している部分はありますが、今シーズンはまた違うバスケットを目指しています。岡村さんのバスケットは変幻自在で、選手の100パーセントを引きだすようなバスケットです。そんな中で、今シーズンのルールに合った戦術をものすごく考えているので、やはり昨シーズンとはちょっと変わった部分はあります。
――今シーズンのルールというのは、オンザコートルールのことですね。
岩下HC はい。
――各クォーター2名ずつ外国籍選手が出場している状況が理想ですか?
岩下HC そうですね。それがやはり一番いいですし、相手チームにとっても脅威だと思っています。どこのチームも考えていると思うんですよ。でもそれを実現できるかどうかってところですよね。
――戦術面での変化はありますか?
岩下HC 我々が走るバスケをしたときに相手外国籍選手の疲労が溜まれば、それだけでアドバンテージを取れます。なので、そういった意味ではスピード感のあるバスケットを今シーズンはイメージしていますね。逆に昨シーズンはリック・リカート、(チュクゥディエベレ)マドゥアバムがすごくインサイドが強い選手でした。でも2人とも走れるタイプではなかったので、ハーフコートバスケの精度を上げる練習が多かったです。だから、今シーズンの変化はとても大きいと感じています。
――走力もあってインサイドもできるとなると、ジョシュ・デービス選手とかはすごく適しているなと思います。
岩下HC おっしゃるとおりですね。やはり彼は経験やパフォーマンス、人間性も含めて色々な面で本当に筆頭候補であって、彼を獲得できたことはとても大きいです。シンプルに他のチームに与える印象も強いと思いますし、僕だったらすごく嫌ですね(笑)。
――福澤晃平選手、横尾達泰選手といった外のシュートが得意な日本人選手を獲った狙いはありますか?
岩下HC やはりそこは全体のバランスですね。もちろん走るのも大事ですけど、外のシュートがない選手が走っても、あまり脅威ではないかなと思っています。でも、外のある選手が走ることによって、どうしても内外問わずマッチアップしなきゃいけない。外に注意が向けばシンプルに中を攻められますし、それこそデービスが駆けあがってレイアップにいくシーンも増えるでしょう。他のインサイド陣も走れるので、やはり外のシュートがあるというのは、特にカール(バプティスト)、コナー(ラマート)を獲得するにあたっても重視した部分です。
――どうしても新加入選手が目立ってしまいますが、継続選手が4名います。その中でご自身が期待している選手はいますか?
岩下HC 個人的に一番頑張ってほしいなと思っているのは久保田(遼)です。彼は身長が198センチあり、外のシュートも上手です。でもやっぱり4番ポジションで相手の外国籍選手に対してどれだけやれるのか、そこを彼には今シーズン突き詰めてほしいし、外のシュート精度もどんどん上げていってほしいなと感じます。
――ポジション争いをするとなると、やはり外国籍選手との争いになるのでしょうか?
岩下HC そうですね。やはり4番ポジションで体を張ってもらいたい。理想は3番にチャレンジしてもらうというのが1つの手で、彼も器用なタイプなので、その可能性も僕はゼロではないと思っています。彼をどう活かすのかはコーチ陣でもよく話し合ってます。
――昨シーズンはあと少しのところで地区優勝とプレーオフ進出を逃しました。何が一番足りなかったと感じていますか?
岩下HC 皆さんは最後にフォーカスしてしまうんですけど、僕はシーズンの出だしだと思っています。勝ったり負けたりでリズムに乗れず、最後は連勝が続きましたが、出だしで流れを作れていれば危なげなく(プレーオフ)に行けたので。足りなかった部分は出だしの勢いですね。なので、今シーズンはそこを1番の課題にしています。
――開幕からいいスタートを切るために、現在重点的に強化している部分はどこですか?
岩下HC チームケミストリーの部分ですね。それぞれ個の力は十分あるので、いかに歯車を噛み合わせられるか。攻守ともに個々のいいところは伸ばして、悪いところは消し合っていくことをうまくやらなきゃいけないなと思っています。それを考えるのは我々コーチ陣ですし、ケミストリーを高めていくのは選手たちなので、開幕までにできるかが、出だしのカギになってくると思います。
――具体的にはどのような方法でチームケミストリーを高めていくのでしょうか?
岩下HC やはり実戦が一番いいです。練習ももちろん大事だと思いますし、練習の質を上げるために外国籍、帰化選手を合計4人獲得したというのもあるので。ただ一番大事なのは、実戦だと思っています。強いチームはシーズン中も良くなっていきますし、悪いチームはあまり良くならない。チームケミストリーが良くなるチームが良くならないチームに勝っていく。(17連勝した)昨シーズンのうちがそうだと思うんですよ。お互いが何をしたいのかを分かり合っていて、ビハインドでも最後は自然に逆転して勝ってしまう、みたいな雰囲気になっていたので。
――岩下HCは選手時代から茨城を拠点としていますが、ブースターさんや地域の盛りあがりに変化は感じていますか?
岩下HC Bリーグが始まり、我々も拠点が水戸に移ったことでブースターの熱量、数、質が各段に上がりましたね。チームとしてもオフにはイベントへの参加だったり、クリニックなどもやってきたので茨城、特に水戸の方では認知度も上がっています。あと、ホームゲーム会場のエンターテインメント性も上がり、ファンも普段との非日常感を試合以外でも味わってもらっているので、そういう意味でも一体感はグッと出ていますし、すごくいい感触の中でできています。
――それでは、試合を盛りあげてくれているブースターさんに向けてメッセージをお願いします。
岩下HC 選手たちが皆さんの前で迫力あるプレーをたくさん見せます。勝って気持ちよくなってもらいたいですし、非日常感というのもすごく大事だと思うので、そういうバスケができるように頑張ります。ぜひ会場へ見に来てください。
――開幕戦はホームで昨シーズンB1を経験した西宮ストークスとの対戦です。最後に開幕に向けても意気込みをお願いします。
岩下HC まずは素直に楽しみです。あとは、残りの短い期間にどうチームを作るのか。結果は後からついてくるものだと思うので、一戦一戦、一生懸命に戦ってファンの皆さんが「また来たいな」と思う試合を毎試合やりたいなと思います。
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