2020.04.19

【高校チーム訪問】関東制覇に慢心せず、冬の勝利を目指し邁進する神奈川の雄・桐光学園

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 神奈川県川崎市にある桐光学園は、中村俊輔や西川潤を輩出したことからサッカーの強豪校として広く知られるが、男子バスケットボール部もまた、全国大会での実績が豊富な実力校だ。

 全国大会に出場すること15回。10回出場しているインターハイ、5回出場しているウインターカップ、ともにベスト8が最高成績。ウインターカップのベスト8は、齋藤拓実滋賀レイクスターズ)を擁した2012年の記録だ。

 その後は2016年と2018年にウインターカップ出場を果たしているが、いずれも初戦敗退。しかし、今年の新チームは神奈川県新人大会を制し、続け様に同校初となる関東新人大会制覇を達成。8年ぶりとなる全国での最高成績更新も期待できるポテンシャルを秘めている。

2月に行われた関東新人大会を制した桐光学園[写真]=Basketball King

「今年のチームはバランスがいい」と語るのは、桐光学園を率いて30年目を迎える髙橋正幸コーチ。その言葉のとおり、バックコートには中学時代にジュニアオールスターに選出されているような逸材が多く、フロンコートを見ればサイズと走力を兼ね備えたビッグマンがそろう。

 目指しているのは、横断幕にも使用している部のスローガン「堅守速攻」を体現するチームだ。「ディフェンスを頑張ればチーム力が上がる。オフェンスは個人でできると思いますけど、ディフェンスはみんなで成長も共有できるので、そこを目指しています。守り切ったら、相手がディフェンスを組む前に走っちゃう。それが一番単純だろうと」。

 加えて、理想とするのは「選手主体」のバスケ。選手たち自身が考え、プレーするチームを作り上げたいと髙橋コーチは語る。そのため、練習中は常にカメラをセットし、自分たちのプレーを客観的に振り返る機会を与えている。

「ビデオは嘘発見器です(笑)。映像に残っている以上、言い訳ができませんから。もちろん相手チームの分析にも使います。相手のフォーメーションや癖を見抜くことも勉強です。試合は選手任せが理想で、その分練習中は口うるさいかもしれません(笑)」

髙橋コーチの情熱的な指導の下、汗を流す桐光学園の選手たち[写真]=金田慎平

 プレー面以外でも選手に求めるものは多い。桐光学園は文武両道の教育を実践している学校で、「バスケットボール部員である前に、桐光学園の生徒であれ」と選手たちに説いているという。スポーツ推薦で入学するにしても、一定の学業成績は求められており、OBである喜多川修平宇都宮ブレックス)や齋藤は成績も良かったそうだ。「バスケットを通じで賢く、大人になってもらいたいです。そして、『高校生活はバスケットだけじゃないよ』とも言っています。試験前には練習を休みにしたり、時間を短くしたりして、しっかり勉強してもらいます」。

 そんな桐光学園の今年の目標は、ウインターカップに出場し、2012年以来となる勝利を挙げること。それを達成するためにはさまざまな課題があると言うが、髙橋コーチが1つ挙げたのはチームケミストリーの向上だ。新チームはケガ人が少なくなく、国民体育大会や県の選抜などでチームを離れる機会も多かったことで、メンバー全員がそろった状態での練習時間がまだまだ足りないそうだ。

「もっとみんなで練習させたいです。苦しい場面を共有させたいですし、いい場面で喜びを共有させたい。そうした経験がゲームにも表れると思うので。関東新人で優勝できたことはうれしいですが、ここが目標ではありません。全国にはもっとすごい選手がたくさんいますし、何より地元で勝ち上がるのが大変です。成長しないとすぐに抜かれてしまうので、手を抜かず、サボったりせず、神奈川で一番の練習をしようと選手たちには言っています」

 同校初の成果を喜びながらも、驕り高ぶる様子は微塵もない。桐光学園は謙虚に、実直に牙を研ぎながら、さらなら飛躍を目指している。

文=峯嵜俊太郎
取材日=2020年2月28日

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