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『B MY HERO!』
高校まで無名の選手が、大学で才能を開花させ、プロになる――。月岡煕(日本体育大学2年)は、そんなサクセスストーリーを描いている真っ最中だ。
8月10日、「Sun Chlorella presents World University Basketball Series(WUBS)」の“Opening Night”として、国立代々木競技場 第二体育館で日本学生選抜とアテネオ・デ・マニラ大学(フィリピン)が対戦。エキシビションマッチながら会場が熱を帯びた大熱戦の末に、70-69でアテネオ大が勝利を収めた。
「やっぱり相手のほうが、フィジカルが強かったです。対峙していて、どんどん体力が削られてしまいましたし、それで第4クォーターではルーズボールやリバウンドを取られすぎてしまったのかなと思います。相手のポイントガードに対しても、自分がフィジカルで押しきられて、最後は得点を許してしまう場面が多かったです」
勝利にあと一歩及ばなかった。日本学生選抜の先発としてコートに立った月岡は試合後、悔しさをにじませた。
今回の学生選抜は7月に始動したものの、フルメンバーでの練習がほとんどできていない。全員がそろったのは試合前日だという。十分な準備ができていないチーム状況だが、学生選抜は12日からの9日間、チャイニーズ・タイペイにて開催される「第42回ウィリアム・ジョーンズカップ」に出場する。
“即席チーム”と言わざるを得ないなかで国際試合に挑むにあたり、試合をコントロールする司令塔は、より力量が問われる。173センチのポイントガードは「自分としてはブレイクの部分をもうちょっと突き詰めたいなと思っています」と明かし、こう続けた。
「今日の試合でも何回かいいブレイクを出せたんですけど、後半になると少なくなってしまいました。もっと自分が前から激しくディフェンスをして、そこからいいオフェンスにつなげられるように意識していきたいです」
月岡の一番の武器は、コートを爽快に駆け回るスピードだ。チームに速い展開をもたらし、相手をかき乱して味方に的確なアシストをさばく。日本体育大では2022年の「第62回関東大学バスケットボール新人戦」(ルーキーズトーナメント)で注目を浴び、自身はアシスト王を受賞。優勝の立役者となり、藤田将弘ヘッドコーチからは「俺の中での新人王」とも言われた。
高校までは全国での経験がなく、昌平高校(埼玉県)時代も「関東大会には出場できたんですけど、1回戦でボコボコにされました」と月岡。それでも、今となっては小川麻斗(千葉ジェッツ)が抜けた日本体育大をけん引する正ガードとなり、今シーズンの「第72回関東大学バスケットボール選手権大会」でもアシスト王に輝き、チームに21年ぶりの優勝をもたらした。急成長を続けるスピードスターは、次は自身初の国際試合に挑む。
「自分たちは学生代表として出場するので、その責任と自覚をしっかりと持って戦いたいと思います。個人的には初めての海外での試合なので、やっぱり楽しみたいという気持ちが一番です。自分の成長にもつながるいい経験になると思いますし、そのなかで持ち味であるスピードをどこまで追求できるか。そこを大事にして、ジョーンズカップでも貫き通したいなと思っています」
“ツッキー”の愛称で親しまれる月岡は、大学界ではMIP賞にも選ばれるほど人気と実力を兼ね備える。プレーだけでなく甘いマスクでもファンを虜にする司令塔は、また新たな経験を積み、自身のサクセスストーリーを加速させるはずだ。
文=小沼克年