2023.07.28

【WUBS開幕特集】初出場の白鷗大…「FULL FORCE(全力)」を体現し、さらなる進化を目指す

白鷗大は昨年のインカレに準優勝してWUBSの出場権を獲得 [写真]=WUBS
元バスケットボールキング編集部。主に国内バスケ(Bリーグ、高校・大学バスケ)を中心に取材活動中。バスケでオウンゴールしたことあります。

8月10日から13日の期間、国立代々木競技場第二体育館にて「Sun Chlorella presents World University Basketball Series(WUBS)」が開催。同大会は昨年、アジアの大学バスケ界がより高みを目指すために創設された国際バスケットボール選手権大会であり、第2回目となる今回は計8大学が2代目WUBSチャンピオンを目指す。『大学バスケの新時代』と銘打たれた真夏の祭典を前に、注目チームをピックアップした。

取材・文=小沼克年
写真=伊藤大允

■個性豊かな布陣、いかにチームとしてまとまれるか

「FULL FORCE(全力)」のチームスローガンのもと日々汗を流す白鷗大学は、ハードな守備からのファストブレイクを信条とするチームだ。

 今シーズンは1年次から活躍する脇真大(4年)を絶対的エースに据え、ジョエルモンガ、佐藤涼成(ともに2年)らの下級生も中心選手としてコートに立つ。網野友雄ヘッドコーチは、今季の顔ぶれについてこう言及する。

「例年と比べると個の能力が高い選手が揃っています。脇、佐藤以外にも留学生や春から加わったルーキーも身体能力が高く、技術面では上がっていると思います。しかしその反面、個の力をいかに調和させるか、チームとして上手く組み合わせるかが課題です」

 5月に行われたスプリングトーナメント(第72回関東⼤学バスケットボール選⼿権⼤会)は惜しくも準優勝。1、2年生のみで頂点を争った6月の第63回関東大学バスケットボール新人戦では2回戦で敗れた。

 これからのチームづくりは、点と点を線に、あるいは1つの円にするようにそれぞれの個性を結束させなければならない。そんな中、2022年のインカレ(全日本大学バスケットボール選手権大会)準優勝チームとしてWUBSに初出場できる権利を得た。

WUBS、さらにはリーグ戦、インカレへとチーム強化を進める白鷗大 [写真]=伊藤大允


 指揮官は「ディフェンスに関してはある程度自信を持っています」と自信をのぞかせ、「強いフィジカルやアスレチック能力の高い海外の選手に対してどのくらい通用するのかを試したいです」とコメント。オフェンスについては「現在はシュートアテンプトを増やすことにもチャレンジしていますので、ボールを奪ったあとのスピード感あるファストブレイクを表現できればと思っています」と抱負を語った。

■海外でのプレーを夢見る佐藤涼成「すごく楽しみ」

 2学年先輩の脇と同様、ルーキーの頃から即戦力として活躍しているのが佐藤涼成だ。

 佐藤は175センチに満たない身長ながら、屈強な体格の持ち主。守備力とシュート力、度胸も兼ねそろえチームに活力を与える。昨年から主にシックスマンとして流れを変えてきたポイントガードは、「自分の持ち味であるディフェンスは大学でも通用したと思います」と昨シーズンを振り返り、2年目のさらなる飛躍へ向け、こう続けた。

「オフェンスでは高校時代と比べてボールを持つ時間が増えたので、今はもっとボールをコントロールできるスキルを身につけています。今年は脇さんや(森下)瞬真さんといった4年生が得点源になるんですけど、それだけじゃ相手も守りやすいと思うので、自分も積極的に点を取りにいきたいです」

1年次から主力として活躍する佐藤 [写真]=伊藤大允

 福岡第一高校時代、佐藤は一度だけスペインでプレーした経験がある。1年次にアディダスが主催する若手育成プロジェクトのメンバーに選ばれ、その際には今年のNBAドラフト全体1位指名でサンアントニオ・スパーズに入団したビクター・ウェンバンヤマとも一緒にプレーしたという。

「ヨーロッパの選手は同世代でも平均身長が高いですし、フィジカルも強くてレベルの高さに魅力を感じました。ユーロリーグの試合も観戦したんですけど、観客の熱気もすごくて、『いつかこういう環境の中でプレーしてみたいな』と思いました」

 このような機会に恵まれたからこそ、佐藤は海外の選手たちとプレーできる楽しさを知っている。当然、WUBSも例外ではなく、自身としては久しぶりに訪れたチャンスを心待ちにしている。

「まずは今の時点でどれだけ通用するのか、すごく楽しみにしています。日本開催なのでファンや観客の皆さんを楽しませて試合にも勝ちたいですし、個人的には持ち味のディフェンスを発揮してどれだけスティールを奪えるかにトライしたい。自分は身長が小さいので、オフェンスでは3ポイントを決め切ることが必要になってくると思っています」

「将来は海外でプレーしたい」。高1の時からそんな夢を抱き続けている佐藤にとっては、今回のWUBSが貴重なアピールの場にもなるはずだ。

■W杯を経験した八重樫ショーン龍は、“先輩”山﨑一渉と再会

「目標にしていた過去最高のベスト8を達成できて素直にうれしかったです。でも、勝った試合も負けた試合も世界の壁を痛感できたので、その経験は自分がこれからもっとレベルアップする上で大切にしなきゃいけないと思っています」

 声の主は、今春から白鷗大へ進学した八重樫ショーン龍。高確率の3ポイントシュートを武器とする八重樫は、ハンガリーで開催された「FIBA U19ワールドカップ2023」の日本代表メンバーに選出され、ベスト8進出に貢献。男子日本代表にとって、世界の8強に入ったのは全カテゴリを含めて史上初の快挙だ。

U19ワールドカップで日本男子初となるベスト8に貢献した八重樫 [写真]=伊藤大允


 八重樫は今後、世界での経験を自身のキャリアと白鷗大にも還元しようとしている。大学入学後は「今までほとんどやってこなかった」と明かすハンドラーやポイントガードにもチャレンジしており、チームの強みであるディフェンス力も「まだまだ」と課題は山積み。WUBSでは、ワールドカップから少しでも成長した姿を披露したいと意気込む。

「ワールドカップで経験したように、大学同士の対戦でもチーム全体で戦うという意識を持って戦いたいです。個人のプレーでは、やっぱり一番得意な3ポイントシュートに注目してほしいです」

 仙台大学附属明成高校出身の八重樫にとって、今大会で凱旋を果たすラドフォード大学の山﨑一渉は高校時代の1つ先輩にあたる。「一渉さんは高校の時から何でもできて本当に凄かったです。WUBSでは3ポイントやダンクをたくさん見せてほしいです」と先輩へエールを送った。

■「国際交流の絶好の機会」と捉え、さらなる成長へ

 現役時代から国際舞台の経験豊富な網野HCは、「通用する部分としない部分の両方を感じられると思っています。ですので、 自分たちの現在地をしっかり認識できる大会にしたいです」とも語る。その上で今回のWUBSを「国際交流の絶好の機会」と捉え、選手たちには自ら行動し、有意義な4日間を過ごしてほしいと述べた。

「コート外で交流を図ることは、選手たちにとっては試合よりも勇気を踏み出さないといけないことかもしれません。そういった面でも成長できる4日間ですし、将来また代表などで顔を合わせる可能性もありますので、ぜひ積極的にコミュニケーションをとってほしいです」

WUBSを通じて選手たちの成長を楽しみにする網野HC [写真]=伊藤大允


 今大会を戦い抜いたあと、チームはどのような変化を遂げているのだろうか。まずは初陣となるペルバナス・インスティテュート大学(インドネシア)に注目だ。

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