2025.07.07

会場がどよめく3ポイントで三井不動産カップMVP獲得…女子日本代表・薮未奈海、切望の国際大会へ

三井不動産カップMVPに輝いた薮[写真]=野口岳彦
フリーライター

 7月3、4日と2日間にわたって行われた「三井不動産カップ東京大会(有明アリーナ)」は、女子日本代表が女子デンマーク代表を相手に1勝1分。東京大会のMVPには2試合ともに2ケタ得点を挙げた薮未奈海(デンソーアイリス)が選ばれた。

 第1戦で「日本らしいバスケットを見せられなかった」(コーリー・ゲインズヘッドコーチ)という日本(世界ランキング9位)は、同ランキング55位のデンマークに苦戦し、65-65の同点で終了。しかし、翌日の第2戦では序盤から攻防において優位に立ち89-65で勝ちを収めた。

「相手がどうこうではなく、自分たちにフォーカスして圧倒しようという意識がみんなあって、その中で自分自身もディフェンスからやることをしっかりやっていこうと思っていました。(オフェンスでも)いいリズムでシュートを打ち、1本目からシュートを決めることができたので流れはつかめたかなと思います」

 第2戦をこのように振り返った薮は、第1戦は10分46秒の出場で3ポイントシュート3本を含む12得点。続く第2戦では19分38秒の出場で3ポイントシュート4本を含む14得点と、2試合で得意とする3ポイントシュートで大きな存在感を放った。

「正直、昨日(3ポイントシュートが)入ったので、今日(第2戦)は入らなくてもしょうがないかなというような気持ちが少しあったので、その分ディフェンスやルーズボールなど数字に残らないところをしっかり見せていかないといけないという意識がありました。そういう中でも1本目(のシュート)が決まって、落ち着くことができたので良かったです」と、語った薮。特に自身が意識したというディフェンスとリバウンドに関しては、前日の自身のスタッツを踏まえて「昨日はカバレッジが違ったり、ディフェンスのルールが違かったりしてしまったので、そこの徹底やリバウンドは(第1戦は)0本だったので、もっと絡んでチームの流れに持っていけるようにという思いでした」とも教えてくれた。

[写真]=野口岳彦


 2年前、薮は八雲学園高校(東京都)卒業したその年にディベロップメントメンバーとして日本代表活動を行い、三井不動産カップ2023(高崎大会)にも出場した。だが、このときは3試合ともに約2分半の出場に留まっていたため、今大会の第1戦後の記者会見では「今回はしっかり選考されての試合だったので、自分としてもやっとスタートラインに立てた、おまけじゃなくてチームの勝利に貢献できる選手になっていくのを今回は感じられているし、(今後も)自分の役割を出せるようにしていきたいです」と、発した。

 そんな薮は2年間での自身の成長についてこのように振り返る。

「まずはフィジカル面。(2年前は)デンソー1年目でチームに入って間もないときで、(体が)ひょろひょろだったので、デンソーでしっかり基礎を固めてできたところはあります、技術云々の前に体(の変化)は大きいのかなと思います。あとは、デンソーには本当にもうお姉さま方がいっぱいいらっしゃるので、練習がほぼ世界レベルじゃないですけど、(赤穂)ひまわりさん、髙田(真希)さん、(馬瓜)エブリンさんもいましたし、そういった環境で毎日練習できているのは大きいです」

 2年前の三井不動産カップを経験した後もトップの日本代表の候補選手には名を連ねたが、ここまではオリンピックやFIBA公式大会へのロスター入りはならなかった。

 女子日本代表はこの三井不動産カップまでが「FIBA アジアカップ2025」に向けたセレクションであった。そのため会見の場では薮が「アジアカップに出たいという気持ちが強いです」とも力強くコメントする場面もあった。

「(シュートが)当たっていましたし、空いたら思い切り打つことは自分の役割なので、打たないという選択肢はなかったです。コーリーは打たないことは良くないと言っているので、打ち切ることを意識していたし、そこで決め切れたことはアジアカップの選考に向けて、すごく大事なステップだと思います。そこは自分の強みを見せられたのかなと思います」と、薮。

 さらには「いいパスがあってこその自分のシュートではあるので、そこを作ってもらっている分、役割をしっかり果たしたいと思います。逆に、誰か(シュートが)当たっている選手がいたら、自分がオフボールの動きができるように。チームとしてもっと成長していきたいなと思います」と、さらなる意欲も言葉に乗せた。

 インパクトを残した三井不動産カップから3日後、女子日本代表は女子アジアカップに向けてメンバーを発表した。そこには薮の名前もあった。

 シュート力に定評のある20歳のオールラウンダー。今度は切望していた国際大会の場で力を発揮する番だ。

取材・文=田島早苗

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