2025.07.17

女子アジア杯決勝Tで活躍が期待される選手3選…「3ポイント好調を維持」「頼れるキャプテン」「経験豊富な若きベテラン」

(左から)薮未奈海、髙田真希、東藤なな子 [写真]=fiba.basketball
フリーライター

 7月13日から中国にて開幕した「FIBA女子アジアカップ2025」。日本は予選グループフェーズを2勝1敗としグループBを2位で終え、17日にはグループA・3位のニュージーランドと準々決勝を戦う。

 予選フェーズでは第1戦のレバノン(72-68)、第2戦のフィリピン(85-82)と辛勝。第3戦ではレバノンとフィリピンに大勝したオーストラリアとの対戦となった。だが、この試合では過去2試合で浮き彫りになった課題を修正し、より締まったディフェンスで第4クォーター中盤まで接戦を演じる。終盤に振り切られたものの(67-79)、『らしさ』が見えてきたと言える。ここでは予選Gフェーズを踏まえ、決勝トーナメントでの活躍に期待が掛かる3選手を挙げる。

「(シュート以外にも)できることはある」薮未奈海(デンソーアイリス)

3ポイントはもちろん、それ以外でも薮にはチームに貢献できる武器は多い [写真]=fiba.basketball

「三井不動産カップ東京大会」の2試合で7本の3ポイントシュートを沈めてMVPを獲得。女子日本代表入りを射止めた20歳は、アジアカップでもその勢いを持続し、初戦のレバノン戦で5本、続くフィリピン戦でも5本の3ポイントシュートを沈めてセンセーショナルなアジアカップデビューを果たした。

 初戦後、「(現地の会場に)デンソーのファンの方もいらっしゃいましたし、いい感じの緊張感でした、1本目のシュートが決まって落ち着いて試合に入ることができました」と、日本でのプレーと変わらない雰囲気のまま戦えたと語った薮。レバノン戦での3ポイントシュートはすべて前半に決めたもので、後半は前半に突き指をしたことでシュート感覚が少し狂ったそうだが、続くフィリピン戦での活躍を見れば心配はないだろう。

 しかし、オーストラリア戦では3ポイントシュート決定数は1本に終わった。そもそも放った本数自体も3本と少なく、外角シュートへの警戒が顕著だったことがうかがえる。ただそれであれば、ドライブなど他の得点パターンで対応も可能であり、加えて走力も兼ね備える。また、「3ポイントシュートが当たっている人が打てるようにスクリーンを掛けたりするなど、自分のできることはあるので工夫していきたいです」と、仲間の得点を演出する動きにも意欲的だ。日本の生命線ともなる3ポイントシュート。決勝トーナメントでも薮はそのカギを握る選手と言える。

「コミュニケーションを取ってやっていきたい」髙田真希(デンソーアイリス)

髙田はキャプテンとして背中でチームを引っ張る [写真]=fiba.basketball

「リバウンドを取り切れなかったり、ルーズボールが取れなかったり、相手のタフショットや1対1などのタフなオフェンスに対して自分たちが引いてしまってファールになったところがあったので、戦術以外で自分たちの弱さが出てしまったと思います」

 大会初戦となるレバノン戦をわずか4点差で勝利した日本。ロッカールームへと引き上げる髙田の表情は険しかった。それもそのはず。世界ランキング9位の日本に対してレバノンは54位。ランキングだけがすべてではないが、これまでランキングが大きく離れたチームに苦しんだというのはほとんどなかったからだ。

 今、女子日本代表は新体制となってチームを構築中。それが原因の連携ミスや、若さゆえの判断ミスも試合では見られるのが正直なところだ。

 髙田も「単純なミスが多く、競ったときに当たり前にできていることができなくなってしまうことがある。そこはまだまだ経験が足りないところだと思います」と、言う。だからこそ、「分かっている選手が声を掛けることで解決もできることもあると思うので、しっかりとコミュニケーションを取ってやっていきたい」とも発する。試合では自らの得点で悪い流れを断ち切るなど奮闘している髙田。最年長キャプテンはチームの現状を把握しながら背中でチームを引っ張っている。

「自分たちからアタックすることで」東藤なな子(トヨタ紡織サンシャインラビッツ)

キャリア豊富の東藤は世界で戦うための日本の武器を再確認した [写真]=fiba.basketball

 フィリピン戦、第1クォーター終盤に果敢にリングに向かってシュートを試み、フリースロー4点を含む6点を連続で奪取したのが東藤だ。これにより日本はリードを2ケタに広げることに成功。

 その後、試合は終盤までもつれたが、序盤に流れを引き寄せたこの一連のプレーについて東藤は「昨日の試合(対レバノン)を客観的に見返したとき、やっぱり受け身になっていたし、どのチームもまずは自分たちがアタックすることでテンポに乗れていると改めて思ったので、(シューターたちの)3ポイントシュートを生かすためにもペイントに入り込んでいくことは必要だと考えていました。その結果フィリピンのディフェンスも広がったので、そこは良かったです」と、振り返った。

 アンダーカテゴリーの日本代表も経験し、トップでは20歳で東京オリンピックに出場するなどたくさんの経験を積んできた。

「日本の強みを先輩方から教えていただき、世界で戦う上で『ここは日本として通用する』というのは染み付いているし、感覚として劣勢だったときに、ここが今日本として足りないというのは分かるようになってきたと思います」と、言う。フィリピン戦ではまさにその言葉を体現したと言えるだろう。ほかにも本人が「大前提」というディフェンスをはじめ、リバウンドなど攻防において欠かすことのできない存在となっている。

 3選手以外にもディフェンスやリバウンドなどで存在感を放ち、得点でもここぞの場面で確実にシュートを沈める宮澤夕貴(富士通レッドウェーブ)やオーストラリア戦では19得点を挙げた馬瓜ステファニーなど主軸を担う選手や今後の期待値が高い選手は多い。

 オーストラリア戦後、「(三井不動産カップ東京大会の)デンマーク戦からずっといい内容ではなかったので少し打開できたのはトーナメント戦に進むにあたってプラスになると思います」と、渡嘉敷来夢(アイシンウィングス)が言ったように、細かいミスを修正し、課題を克服しながら前進している日本。チームとしての『経験』が求められる中、準々決勝ではまず勝利。そして前回覇者・中国が待つ準決勝に弾みを付けるような内容の戦いをしたいところだ。

文=田島早苗

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