2026.03.03

エース、リーダとしてチームをけん引 [写真]=fiba.basketball
勝者がいれば、敗者もいる。
『FIBAバスケットボールワールドカップ2027アジア地区予選』Window2の韓国戦。日本は大激闘の末、韓国に78-72で勝利し、2次ラウンド進出に向けて貴重な1勝をもぎ取った。終盤に逆転勝利を手繰り寄せた日本代表の奮闘に、日本中のバスケファンが歓喜に沸いたことだろう。同時に、韓国代表のエース、イヒョンジュン(以下ヒョンジュン)のパフォーマンスに心を奪われた人も多いのではないだろうか。
日本はこの試合、ヒョンジュンに28得点11リバウンドを許し、効率性を示す指標であるEFF(Efficiency)は両チーム最多の31を記録された。長崎ヴェルカのチームメートである馬場雄大を筆頭に、日本が誇るディフェンダーたちが次々にマッチアップしながらも、これだけの数字を叩き出された。圧巻のスタッツもさることながら、チームメートを鼓舞するリーダーシップや気迫みなぎるパフォーマンスからは、マッチアップした馬場が試合後に語ったように「国を背負う覚悟」が感じられた。
ヒョンジュンは韓国代表のユニフォームを着ると、「超負けず嫌いなエースモード」と化す。もちろん、長崎でも勝利のために全身全霊をかけてプレーする姿は同じだ。ただ、韓国代表ではエースゆえにファーストオプションとなり、チームメートたちもヒョンジュンの生かし方を熟知しているため、ボールを持つ機会が格段に増える。日本戦の3日前に行われたチャイニーズ・タイペイ戦では、ポストアップからバスケットカウントを奪うなど、Bリーグでは見せないような得点パターンも披露していた。
日本戦の前日、こうした韓国代表での得点スタイルについて聞くと「僕はもともとオールラウンドにできますから! 長崎では役割的に(得点することを)譲っているところもあるんです」との答えが返ってきた。
もちろん、チームが変われば役割が変わることも受け入れている。長崎ではモーディ・マオールヘッドコーチ(HC)に「HJ(愛称)はただのシューターではない」と期待されていることもあり、韓国代表ほどボールは持てないながらも「チームケミストリーを考えながら、3ポイントはもちろん、シュート以外のことでも貢献したい」という決意のもとで臨んでいる。
そんな韓国代表のエース、ヒョンジュンが最近のテーマに掲げているのが「落ち着いて、いい判断をする」ということだ。その背景には、昨夏のFIBAアジアカップや長崎でも、これまで以上に執拗なマークを受けるようになったことが挙げられる。
「これはモーディにも言われるのですが、どんな状況になっても『Patient(ペイシェント:苦しい状況でも忍耐強く)』という言葉にあるように、落ち着いて、正しい判断をすることが大事だと思っています」
アジアカップや昨シーズンまでの自分は、急いでプレーしてしまうこともあったので、最近は落ち着いて、いい判断をすることを心掛けているという。そうした反省をもとに臨んだ昨年11月のWindow1の中国戦では「感情的な面を見せずにプレーしたことで、いい結果が出ました」と自身のプレーに確かな手応えを感じていた。
だが、今回は状況が一変した。今回の韓国代表は、初の外国籍HCが采配する新体制になったばかりか、KBLの過密日程とアウェーへの移動のために国内では3日間の練習しかできず、さらには主力センター陣のケガによる欠場など、急な変化の中で準備が後手に回った。その結果、高さの面で対抗できずにチャイニーズ・タイペイに完敗を喫している。
修正のもとに迎えた日本戦では、そのときの反省を生かし、新加入した2人のインサイドをスターティングファイブから外し、経験ある選手で固めるスモールラインナップの布陣で臨んだ。戦術変更は功を奏して接戦となり、試合中のヒョンジュンは「落ち着いて」と自らに言い聞かせるようなポーズを何度も見せながら、粛々と厳しいマークをかいくぐり、28得点11リバウンドのスコアを叩き出した。そこには、アウェーのコートで着実にステップアップしている韓国代表のエースの姿があった。
しかし、試合には敗れた。高さに対する答えを試合中に出し切ることはできなかった。
試合後、ヒョンジュンと馬場は熱い抱擁のときを迎えた。だが、日本選手たちと挨拶を終えたその直後、ヒョンジュンはくるりと向きを変え、自身のユニフォームの首元を両手で引きちぎり、裂かれたユニフォームをかみしめ、目に涙を溜めながらコートを去った。韓国代表のエースが悔しさを露わにしていたその横では、日本代表の選手たちが、沖縄サントリーアリーナに流れる勝利の三線(さんしん)のメロディーとともに円陣を組んでいた。勝者と敗者の残酷なまでのコントラストがコートに映し出されていた。

様々な感情が交差した日韓戦だった [写真]=fiba.basketball
引きちぎったユニフォームのことは、記者会見後の囲み取材の場で自ら口にしたことだった。「馬場と熱い抱擁を交わしたあと、どんな言葉を交わしたのか?」という質問に対し、以下の答えが返ってきた。
「ババ(馬場)には『お疲れ様でした』『長崎では頑張ろう』と話しました。あと、『何で僕をマークしたんだ!』って冗談で話しました。本当にリスペクトしている選手なので」と言い終えたあと、「でも……」と続け、思いを吐露した。
「勝てる試合だったので悔しいです。日本の選手とは笑って挨拶しましたが、ロッカールームに入ったとき、僕はユニフォームを破ってしまいました」
コートから去るとき、すでにユニフォームの首元を引きちぎっていた。その後のロッカールームで、どのように破られたのかは定かではない。ただ、ここで言えることは、今回の悔し涙には、昨夏のアジアカップ準々決勝で中国に敗れて泣き崩れたときとは違う意味合いの悔しさがあるということだ。
アジアカップでは「自分が大事なシュートを決められなかった」という自身への失望と自責の念からの号泣だった。しかし今回は「誰かのせいで負けたのではなく、チーム全体がダメで負けました。ファンのみなさんに失望的な試合を見せてしまって、僕自身も怒りとともに、もどかしさがあります」と語ったように、新体制で十分な環境のもとで挑めず、自分一人ではどうすることもできない怒りも含まれた悔しさのように感じられた。
しかし、「それらは言い訳にすぎません」とも語っているように、すぐさま次戦への雪辱を誓った。
「残念な結果だった。僕だけでなく、チームのみんなが悔しがっている。日本はいいチームだった。僕たちのシュート率が悪く、リバウンドを確保できなかったことで日本の速攻につながった。新しい監督が求めていることに対して選手たちがまだ適応できず、ディテールな部分の徹底が足りなかった。今はより高いレベルに上がろうとするために必要な段階。今回の敗戦をどう対処するかで次のレベルが決まる。次は何が何でも勝ちます」
Window1で中国に連勝したあと、「僕の目標は韓国を世界の強豪と競えるチームにすること。僕たちはこれからもっと強くなります」と誓っていたヒョンジュン。そのためには、母国をアジアの強豪へと復権させ、自身を含めて韓国の若手がまだ出場したことのないワールドカップへと導くことを自らに課している。馬場が感じた「国を背負う覚悟」とは、こうしたエースとしての使命感からくるものだろう。
「昔から大事な試合に負けるたびにたくさん泣きましたが、そうやって強くなってきました」と本人が言うように、ヒョンジュンは悔しさを糧にして成長してきた選手だ。次戦、Window3の日韓戦は1次ラウンドのラストを飾る7月6日、韓国のホームで迎える。
そのときまで、さらに長崎で成長していく姿を、日本としては警戒しながらも楽しみに、イヒョンジュン率いる韓国代表との再戦を心待ちにしたい。
文=小永吉陽子
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