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アメリカで加速するユース世代の課金文化…元NBA選手が辛口提言「金でチャンスを買えると思うな」

ユース世代のお金について力強く異議を唱えた元NBA選手のトーマス [写真]=Getty Images

「プレーするのに金を払うなら、その子はまだそのレベルじゃない」

 元NBA選手のタイラス・トーマス(元シカゴ・ブルズほか)が保護者に向けて放ったこの一言は、アメリカの育成バスケ世代の現状に一石を投じている。

 トーマスは、ポッドキャスト番組『Rich Lessons』に出演した際に、ユース世代で遠征チームやエリートキャンプ、ショーケースが“当然の出費”になっている事実に、力強く異議を唱えている。

「もしお金を払わないといけないなら、その子(の実力)はまだ十分ではないということだ。俺はバスケットボールをするためにお金を払ったことなんて一度もない。母親も払ったことはない。本当にうまければ、向こうが金を出す」

 背景にあるのは、AAU(アマチュア運動連合)におけるユーススポーツの“課金化”の加速だ。

 大会参加費、チーム登録費、遠征費、用具、トレーナー代など、これらの積み重ねは家計を直撃する。昨年3月に『Project Play』が掲載したアスペン研究所、ユタ州立大学、ルイジアナ工科大学の三者による共同保護者調査によれば、2024年にアメリカの家庭が子どものスポーツに費やした平均額は約1000ドル(約15万円)。これは、2019年と比較して46パーセントも増加しており、上昇率は同期間のアメリカ経済全体のインフレ率の約2倍にあたるという。また、1人の子どもが複数のスポーツに参加している家庭も少なくなく、ほかのスポーツへの支出は平均して475ドル(約7万5000円)となり、これは子ども1人に対して年間20万円以上がスポーツ体験に費やされている計算になる。

 もちろん、シューズブランドなどから支援を受けられるトップ層も存在するが、それは一握り。『Fadeaway World』も、エリートと実際のリターンがほとんどない有料チームとの間には大きなギャップがあるとし、多くの親が誤認していると警鐘を鳴らす。

 金銭を支払えば、露出の機会が得られる。そんな不確かな期待に投資するべきではないというのが、トーマスの見解だ。

「誤解している。人は金でチャンスを買えると思っている。それは違う。彼らは本当にうまい選手に金を払っているんだ。だから、バスケットボールでもほかのスポーツでも、何千ドルも使うべきじゃない。もしその子がエリートレベルなら、向こうが費用を負担するし、親の分まで出してくれることもある。だから、もし払っているなら、その子はまだそのレベルじゃない。だったら、その金をちゃんとしたトレーニングに使うべきだ。ピックアップで一緒にプレーできる仲間を見つけろ」

 中学・高校の学生アスリートと大学のコーチをつなぐ団体「NCSA」によれば、親は子どもが6年生から高校卒業までの間、年間最大5000ドル(約80万円)の出費が発生すると説明。

 同時に、選手本人がブルーチップ(トップ層)でない場合、親がリクルーティングプロセスに“正しく投資”することを推奨している。また、トラベルチームの実態については、「正しい大会に参加しており、何百人もの大学コーチが来る」と宣伝する一方で、実際はコーチたちが特定の選手リストを持って来場していることを明かしており、才能があり、努力も怠らない学生アスリートが偶然誰かの目に留まり、理想の大学にリクルートされることはないとしている。

 トーマスは、育成そのものを否定しているのではない。スポーツとは、お金が成長や成功を保証するものではなく、依然として才能と実力が基準であることを強調しているのだ。

 過激な主張に聞こえるが、トーマスには説得力がある。彼はルイジアナ州立大学(LSU)から2006年ドラフト全体4位でNBA入りし、8シーズンで平均7.7得点4.8リバウンドを記録したキャリアを持つ。

 金銭を支払って席を確保するのではなく、上達と成長のために使う。アメリカでこうした議論が行われるのは、ユーススポーツが家計勝負になりつつある現実を、多くの親が肌で感じているからなのかもしれない。

文=Meiji

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