2026.10.03
真っ青な空と、太陽の光を受けてエメラルドグリーン、コバルトブルー、マリンブルーに染まった海。観光客が幸せに満ちた表情で行き交うハワイ。
ロサンゼルス・クリッパーズでNBA挑戦3年目を迎えた河村勇輝にとって、そこは、ほろ苦い思い出の地となったかもしれない。

ハワイ大学のアリーナで行われたプレシーズン初戦のゴールデンステイト・ウォリアーズ戦。第3クォーター残り3分36秒に河村はコートに入った。会場からは、「待ってました!」とばかりに大歓声が沸き起こった。河村の出番は、出場可能な16選手のなかで16番目だった。だが、そんなことはどうでもいいこと。河村は前日の練習前、「プレシーズンの試合でどれだけ自分を出せるかということが一番大事になってくる」と表情を引き締め、「どれくらい出るかはいったん置いておいて、出たときにはしっかり仕事ができるように準備はしている」と意気込んでいた。
ところが、最初のポゼッションで、ディフェンスの名手ゲイリー・ペイトン2世と対峙した際、スティールを奪われ得点されてしまった。「自分がボールを持っていて、大体の身長のサイズで届かない位置にボールを持っているイメージが僕のなかにあった。でも彼は長さがあって、自分が思っていた距離以上に手が伸びてきてボールを触られた」と振り返った。
ファウルを誘ってフリースローでの得点機会も得たが、1本目を外した。グレイディ・ディックへのアリウープパスも不成功に終わり、「アリウープのパスは得意なので、ずれるはずがないけどずれていたり、フリースローもすごく得意としているのに、そこも入っていなかった。最初の入りでだいぶ自分のリズムを崩してしまった」と悔やんだ。ギー・サントスとの一対一では、スピンムーブで抜かれて得点を許し、「自分のよさを出しきれなかった。ベンチに下げられて当たり前。あのようなプレーをしているようでは契約も取れないし、ましてや僕はエグジビット10という契約で、毎日が勝負という状況にあるなかで、今日のような日になってしまったことは本当に悔しい限り」と河村。同クォーターを終えたところでこの日の出番が終わり、やり場のない悔しさをのみ込んだ。
クリッパーズは今シーズン、プレシーズンゲームが3試合しかない。通常は最低でも4試合を組むチームがほとんどで、現役選手として11シーズン、コーチとして16シーズンのNBA経験を持つティロン・ルーヘッドコーチ(HC)も「3試合はこれまで経験がない」と言う。その分、「ロサンゼルスに戻ってから実戦形式の練習をさらに行う予定だ。明日(プレシーズン初戦)はスターターを18分から20分程度プレーさせて(実際には15分前後だった)、残りの2試合では少し強度を上げていく必要がある。まずは様子を見ながら進めていく」と話した。
それにより、河村ら、開幕ロスターが約束されていない選手にしわ寄せがくる可能性もあり、河村自身も「そこはちょっと難しい。3試合のなかでコーチたちは、特に本契約の選手たちのラインアップを試すことになると思うので、(本契約ではない)僕たちがどれくらいプレーできるかというのは、ほかのチームに比べるとタフになると思う」と話していた。だからこそ、冒頭の河村のコメントのように、出番がきたときにしっかり自分を出せるよう努めてきた。
しかし、その緊張の糸は、初っ端のペイトンの好守を受けて、ぷっつりと切れてしまった。
実際、ペイトンも、バスケットボール殿堂入りした元スター、ゲイリー・ペイトンを父に持つ一方で、短大から大学バスケを始め、NBAでも幾度となく解雇通告を受けながら、2022年のウォリアーズ優勝に貢献するまでに這い上がった選手だ。何度も失敗を繰り返し、何度も後悔し、何度も悔しい経験を乗り越えて、1本のスティールで相手のリズムを崩すプレーを見せる姿は、河村にとって、道しるべとなりうる存在だ。
河村自身も、悔しさをにじませる一方で、「もしかしたら今日カットされるかもしれないし、明日カットされるかもしれない。もしかしたら次にもチャンスを与えてくれるかもしれないし、それは本当にどうなるかわからない。だけど、今日ベストなプレーができなかったというところで、これを自分のなかでどう消化して、どう向き合って、成長の機会として捉えられるかということが、今後の自分にとって大切になってくる」と前向きに捉えた。
「最初の入りでだいぶ自分のリズムを崩してしまった。やっぱりそこはもっと気をつけるべきだった。ただ、今、後悔してももう終わったことなので。絶対に結果を残さないといけないという状況のなかで結果が残せなかったという自分の実力のなさに悔しさを感じている反面、やっぱり自分が目指している世界最高峰のバスケットはそれほど高いところにあるんだ、それほど目指す価値のある場所なんだと感じられた」と河村。「この苦しい経験というのは、人としても、バスケットボール選手としても必ず成長できる機会になると思っているので、もちろん、めちゃめちゃ悔しいですけど、これでヘッドダウンすることなく、成長の機会と捉えて、必ずまた次のチャンスが来たときにベストを尽くせるように練習に励んでいきたい」ときっぱりと語った。
ハワイでのほろ苦い思い出。それを変えることは可能だ。「あの経験があってよかった」。そう思える日が来たとき、河村の記憶に残るハワイは、さらに輝いて見えるはずだ。

苦い経験は自身で挽回するしかない [写真]=山脇明子
文・写真=山脇明子
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