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ついに始まる河村勇輝のサバイバル…2Way枠に空席、熾烈なロスター争いを予習

この夏は代表活動にも参加した河村勇輝の挑戦が始まる [写真]=Getty Images

 河村勇輝のNBAでの生き残りをかけた戦いが、今始まろうとしている。

 河村がエグジビット10契約を結ぶロサンゼルス・クリッパーズは、日本時間9月29日(現地28日)に本拠地「インテュイット・ドーム」で開催するメディアデーを皮切りに、翌日からハワイでトレーニングキャンプを開始。10月5日(同4日)には、ゴールデンステイト・ウォリアーズとのプレシーズン開幕戦が控えている。

 キャンプ期間中、クリッパーズは選手たちを見極め、開幕までにスタンダード契約の最大15枠と2Way契約の最大3枠を整えなければならない。エグジビット10契約の河村にとっては、キャンプやプレシーズンで結果を残し、契約のアップグレードを勝ち取る重要な期間となる。

 アピールのために用意された時間は、決して十分ではない。河村の今後の動向を追いかけるべく、クリッパーズの現状、ライバル、アピール材料などを整理しておきたい。

■クリッパーズが擁する多彩なガード陣

 まず、河村の主戦場であるガードポジションと、契約上の立場を見直してみたい。

 ポイントガードの筆頭は、2度のオールスター選出歴を持つダリアス・ガーランド。昨シーズン全82試合に出場した守備型ガード、クリス・ダンも控えている。この2人が、ポイントガードとして優先的に起用されると考えられる。

クリッパーズの司令塔はオールスターにも出場するガーランド [写真]=Getty Images

 だが、デプスチャートはさらに深い。

 スタンダード契約下には、今年のドラフト全体5位指名で獲得したキートン・ワグラー、ケガからの再起を目指すブラッドリー・ビール、実績あるシューターのマックス・ストゥルース、そしてオフボールでの得点力に期待がかかるグレイディ・ディックが在籍。加えて、コービー・サンダースもバックコートを担える大型選手だ。

 さらに、2Way契約下には、河村にとって直接的なライバルとなるジェイレン・ピケットがいる。昨シーズンはデンバー・ナゲッツで50試合に出場し、18試合でスターターを務めた。平均5.2得点、2.3アシストを記録した、NBAでの実戦経験を持つポイントガードである。

■河村に好機到来? 2Way枠に生まれた空席

 厳しい状況に変わりはないが、河村にとってチャンスとなり得る動きも起きている。

 クリッパーズは9月26日(同25日)、2Way契約を結んでいたジャマリオン・シャープをウェイブ(契約解除)した。今夏に獲得したばかりの身長226センチのビッグマンで、昨シーズンはGリーグの最優秀守備選手賞を受賞した逸材だった。

 この決断によって、クリッパーズの2Way契約はピケットと、ドラフト全体55位で指名したニック・マルティネッリの2人となった。つまり、河村が目指すことのできる空席が、1つ生まれたのである。

 ただし、これは河村の2Way昇格を示唆するものではない。現地報道によると、球団は現時点でシャープの代役獲得を急いでおらず、空席を維持したままキャンプへ入る方針だという。選手の状態やチーム全体のバランスを見極めながら、最後の1枠の使い道を判断すると考えるべきだろう。

 さらに、ガード陣ではジョーダン・ミラーの長期離脱が決まっている。同選手は8月下旬、オフシーズンのワークアウト中に負傷した左肩の腱板修復手術を受け、6カ月後に再評価される予定。昨シーズン平均10.0得点を記録したベンチ戦力だけに、その欠場はローテーションにも影響を与えるだろう。

 もうひとつの注目材料が、キャム・クリスティーの契約状況だ。

 クリッパーズは、クリスティーの2026-27シーズンの年俸が全額保証される期限を2度延期。現在は10月16日(同15日)に設定されており、キャンプでのパフォーマンスを見極めてから残留を判断できる状態にある。仮にクリスティーがウェイブされれば、内部でもスタンダード契約の入れ替えが行われる可能性がある。

オフにはシュート力の強化を目指した [写真]=Getty Images

 クリッパーズに不足していて、河村が提供できるもの。それは、主力のボールハンドラーがベンチに下がった時間帯に、試合のテンポを上げ、味方へ質の高いシュート機会を提供する能力だ。

 チームには八村塁をはじめ、ブランドン・イングラム、ストゥルース、ディックなど、シュート力や得点力を備えたプレーヤーが数多く在籍している。河村のパスやゲームメークが生きる場面は、十分に想像できる。

 ビールには健康面の懸念もある。一方、直接的なライバルとなるピケットは、フィジカルを生かしたポストプレーも可能で、比較的落ち着いたテンポで攻撃を組み立てられるめずらしいタイプのガード。対する河村は、素早いトランジション、ピック&ロールからの展開、相手守備陣のわずかな隙を突くパスが持ち味。プレースタイルには明確な違いがあり、河村にしか提供できないものを示す余地がある。

 また、セカンドユニットにアイザイア・ジャクソンやデリック・ジョーンズJr.がいる点も、河村との相性の良さを想像させる。前者はピック&ロールからリングへダイブできるビッグマンであり、後者も高い身体能力を生かしたカッティングやロブへの対応を得意とする。その周囲にストゥルースやディックなどのシューターを配置すれば、河村が攻撃の起点となるラインアップも構想できる。守備面では、ダンやジョーンズJr.のような選手と組み合わせることで、河村のサイズ面の弱点を補う方法も考えられるだろう。

 もちろん、河村自身にも解決するべき課題はある。

 最大の懸念は、身長170センチというサイズが生む守備面のミスマッチだ。相手にスイッチを狙われた場合の対応、スクリーンを突破する能力、ヘルプディフェンスの理解度などが問われる。

 攻撃面でも、ボールを持たない時間帯のシュート力は重要となる。スター選手と共存するためには、河村自身もスペーシングに貢献しなければならない。キャンプでは限られた出場時間でプレーを成立させられるかどうかが、評価を左右すると見る。

■本当のライバルはガードではない?

 もしかすると、河村にとって最大の障壁は、同じガードの選手ではないのかもしれない。なぜなら、クリッパーズには控えボールハンドラーの確保と並行して、解決しなければならない課題が複数存在するからだ。

 特に懸念されるのが、センターの選手層とリバウンドである。先発候補のブルック・ロペスは38歳のベテランであり、昨シーズンは平均3.6リバウンド。リムプロテクトとアウトサイドシュートに優れている一方、リバウンドを支配するタイプではない。控えのジャクソンは身体能力に優れるものの、身長203センチ、体重約93キロとセンターとしては軽量。大型センターとの継続的なフィジカル勝負には不安が残る。さらに、2年目のヤニック・コナン・ニーダーハウザーは、昨シーズン終盤に右足のリスフラン関節を負傷。3月に手術を受けており、キャンプやシーズン序盤にどこまでコンディションを戻せるかは確認が必要だ。

 リバウンド面に課題を抱えるクリッパーズにとって、すでに2Way契約を結んでいたシャープをWayブした判断は興味深い。ガーランド、ワグラー、イングラムら攻撃力の高い選手を同時起用する場合、彼らの守備負担を軽減できる大型選手の存在も重要になる。2Way契約の最後の1枠をビッグマンや守備型ウイングの育成に使うという選択肢は、十分に考えられる。

 加えて、クリッパーズはカワイ・レナードに関するNBAの調査でサラリーキャップ規則違反を認定され、将来のドラフト1巡目指名権5本を剥奪された。ティロン・ルーヘッドコーチには、先々を見据えた若手の育成も求められてくるだろう。

 それでも、河村にできることは明確だ。持ち味であるゲームメークとテンポの変化を示しながら、守備の理解度、シュート力、チームメートとの連係を証明すること。ピケットとの比較だけでなく、最後の2Way枠をほかのポジションに使う選択肢さえ上回る価値を示さなければならない。

 河村の目の前には、確かに1つの空席がある。その1席を奪うために、河村は極限の集中力でキャンプに臨む。

同じチームで八村とのコンビネーションも期待したい [写真]=Getty Images

文=Meiji

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