48分前

「彼はまだ終わっていない」河村勇輝、契約解除も続くNBA挑戦…クリッパーズ選択にあった“先を見据えた理由”

プレシーズン2試合を終えウェイブされた河村[写真]=Getty Images
ロサンゼルス在住ライター

■なぜ河村はクリッパーズを選んでいたのか

 目の前に掴めるチャンスがあるのなら、それを奪いに行くのは当然のことだ。

 トレーニングキャンプ開始時点のロサンゼルス・クリッパーズ(以下LAクリッパーズ)には、本契約の15人枠に対して16人の選手がいた。一方、2Way契約の3枠には1つ空きがあった。このチームでキャンプを迎えた河村勇輝が目指すものは明確だった。

 たとえ2Way契約の3枠がすべて埋まっていたとしても、その枠にふさわしいのは自分なのだと証明するのが、河村の目標だったはずだ。2Way契約選手はいつでも入れ替えが可能。その枠を自分が奪い取るぐらいの気力で挑んでいなくては、NBAどころかプロではやっていけないのだから。

 昨年のサマーリーグ直後、シカゴ・ブルズは優れた得点能力を持つ2Way契約選手のジャミール・ヤングを解雇し、河村と同契約を交わした。今いる選手を手放してでも獲得したいと、チームに思わせる選手になることこそが、トレーニングキャンプへの参加を求められた「キャンプ契約選手」の挑戦だ。

[写真]=山脇明子


 キャンプ開始前日のメディアデーでも、河村は「もちろん、キャンプ中に契約を取ることがベスト」と言っていた。

 ただ、地に足がついている河村は、その第一の目標がかなわなかった場合も見据えて、クリッパーズとのエグジビット10契約を決めていた。その選択には、LAクリッパーズ傘下のGリーグチーム、サンディエゴ・クリッパーズ(以下SDクリッパーズ)の環境も関係していた。

 河村は、男子日本代表とフィラデルフィア・セブンティシクサーズでアシスタントコーチを務める吉本泰輔氏から、SDクリッパーズを率いるポール・ヒューイットHCについて好意的な話を聞いていたという。

「Gリーグのサンディエゴは、ヘッドコーチもいいというふうに、ダイスさんからも聞いていたし、僕がアウェイで、サンディエゴでプレーした時も、すごくいいチームだった。あのアリーナでの練習もいい雰囲気で(できて)、いいGリーグチームだと思っていた。(キャンプ中の契約が)難しければ、Gリーグに行くことになるので、Gリーグの環境も考えながらこの選択に至った」

 さらに、ハワイでのトレーニングキャンプ中には、「SDクリッパーズは、他のチームで2Way契約を得たりする選手が多いと聞いている。あと、ガードをよく使ったコンセプトでプレーするとも聞いているので、それらも含めて最適だと思って決めた」と、改めてクリッパーズを選んだ理由を明かした。

■NBAの舞台につながるクリッパーズ傘下の環境

[写真]=山脇明子


 実際、SDクリッパーズからNBA契約を勝ち取った選手は少なくない。2024-25シーズンにはエライジャ・ハークレスがユタ・ジャズと2Way契約を結び、このオフにはデトロイト・ピストンズとも同契約を交わした。ブラクストン・キーも同シーズン、SDクリッパーズからゴールデンステイト・ウォリアーズとの2Way契約を勝ち取っている。

 昨シーズンは、タイタイ・ワシントンがSDクリッパーズからLAクリッパーズの2Way契約を獲得し、ジョン・ポウラキダスはダラス・マーベリックスと同契約を結んだ。パトリック・ボールドウィンJr.も、クリッパーズとセブンティシクサーズでの10日間契約を経て、サクラメント・キングスと2Way契約を結んだ。限られたチャンスを次の契約につなげた選手たちだ。

 また、LAクリッパーズの2Way契約選手だったコービー・サンダースとジョーダン・ミラーは、昨シーズン、Gリーグの試合に出場しないままチームの本契約を勝ち取っている。

 指揮官のヒューイットも豊富な経験を持つ。2021年にクリッパーズ傘下のGリーグチームのHCに就任する以前は、ジョージア工科大学での11シーズンを含め、大学で18シーズンにわたりHCを務めた。その後、LAクリッパーズで4シーズンにわたって選手評価を担当。2024年には、富永啓生(当時インディアナ・マッドアンツ所属、現レバンガ北海道)も参加したGリーグ選抜チーム「Gリーグ・ユナイテッド」のHCとして、シンガポールで開催された「FIBAインターコンチネンタルカップ2024」でチームを準優勝に導いている。

■ウェイブを経て、河村が進む道は?

[写真]=山脇明子


 こうしたSDクリッパーズの環境も考慮して加入を決めた河村だったが、第一目標だったLAクリッパーズとの2Way契約獲得はかなわず、10月13日(現地時間12日)にウェイブされた。

 河村は、NBA挑戦1年目のメンフィス・グリズリーズではプレシーズン中に2Way契約を勝ち取り、2年目のシカゴ・ブルズでは夏の時点で同契約を手に入れていた。ブルズでは血栓のためにシーズン開幕前にいったん契約解除となったものの、今年1月に再び2Way契約を結んでいる。

 今シーズンは、過去2年とは違う挑戦となりそうだ。

 エグジビット10契約には、2Way契約を含めた開幕ロスター入りがかなわなかった選手を、傘下のGリーグチームにつなぐ役割もある。河村のこれまでの発言を踏まえると、ウェーバーをクリアした場合、SDクリッパーズでNBAを目指す可能性は十分に考えられる。

 Gリーグとの契約になれば、NBA全30チームとの契約を目指せる。来年1月5日以降は10日間契約のチャンスもあり、そこから本契約につなげる道もある。また、引き続き30チームすべてを対象に2Way契約を目指すこともできる。それらも決して簡単なことではないのだが…。

[写真]=Getty Images


 河村は、こういった新たな挑戦をするのか、それとも別の道を歩むのか。

 LAクリッパーズのティロン・ルーHCは、河村の契約解除について、こう言った。

「(いろいろな選手を使って)いろんなやり方を試したり、異なるパターンを試したかっただけ。彼は素晴らしいプレーを成し遂げたし、誰もが彼を愛している。彼のエネルギーは、周りにいい影響を与える。身長や体格のせいで、公平なチャンスや評価を得ていないと思うが、非常にいい選手だ。彼がここに来てから見せてきた成長ぶりは、(14分15秒の出場で10得点、4アシスト、2スティールを記録した)トロント(ラプターズ)戦で見た通りだ」

 ルーHCは、その中である言葉を2度繰り返した。

「彼はまだ終わっていない」

文=山脇明子

河村 勇輝の関連記事

NBAの関連記事