2019.06.11
5月31日に行われるイベント「NBA FINALS 2019 PUBLIC VIEWING PARTY presented by Rakuten TV」(会場は渋谷ストリームホール)にて、オールスターに3年連続で選出されたリーグ有数のスコアリングガード、ケンバ・ウォーカー(シャーロット・ホーネッツ)が初来日する。
来日を直前に控え、ここではケンバのカレッジ時代とNBAキャリアを振り返ってみたい。
■プロフィール
本名:ケンバ・ハドリー・ウォーカー
生年月日:1990年5月8日(ニューヨーク州ブロンクス)
年齢:29歳
身長/体重:185センチ/83キロ
所属:シャーロット・ホーネッツ
背番号:15
ポジション:ポイントガード
NBAキャリア:今季で8年目
高校:ライス高(ニューヨーク州)
大学:コネティカット大(在籍3年)
ドラフト:2011年1巡目9位指名(ボブキャッツ/現ホーネッツ)
Twitter:@KembaWalker(フォロワー数は約37万人)
Instagram:@_kw15(フォロワー数は約110万人)
■ケンバが残してきたNBAにおける功績
オールNBAチーム選出:1回(19年/サードチーム)
オールスター選出:3回(2017~19年)
■ホーネッツのフランチャイズにおける主な記録
通算得点:1位(1万2,009得点)
通算出場時間数:1位(2万607分)
通算フィールドゴール成功数:1位(4,164本)
通算3ポイント成功数:1位(1,283本)
通算フリースロー成功数:1位(2,398本)
■カレッジ時代
ニューヨーク州ブロンクスで生まれ育ったケンバは、決して背は高くなかったものの、身体能力に恵まれたアスリートだった。幼少期には「ダンスでプロになろうと本気で考えていた」とNBA入り後に振り返ったほどダンスに夢中で、アポロ・シアターで行われたテレビ番組『Showtime at the Apollo』に3度出演した実績を持つ。
バスケットボールでも優れた才能を垣間見せていたケンバは12歳の時、延長の末に88得点というとてつもない記録を残している。だが当時のケンバに3ポイントというレパートリーはなく、ダンスで培った独特のリズムとタイミングで相手ディフェンダーを抜き去り、リング下ですべての得点を挙げていたという。
その後、徐々にアウトサイドシュートも磨き、ライス高校でプレーしたケンバは、名門コネティカット大学へ進学。1年目は主にベンチスタートとして平均25.2分8.9得点3.5リバウンド2.9アシスト1.1スティールをマーク。チームは27勝3敗を挙げてNCAAトーナメントのファイナル4(準決勝)まで勝ち進んだ。だが1年次のケンバはローテーション入りこそしていたものの、エース級の選手ではなかった。
平均35.2分をプレーした2年目は、チーム2位の平均14.6得点にチームトップの5.1アシストを残すも、肝心のチーム成績が17勝14敗と振るわず、NCAAトーナメント出場を逃す。だが3年目となった2010-11シーズンにはエースとして平均23.5得点に5.4リバウンド4.5アシスト1.9スティールでチームをけん引。現在ホーネッツでチームメートのジェレミー・ラムとシャバズ・ネイピアー(現ブルックリン・ネッツ)が1年生として入学し、21勝9敗を挙げてNCAAトーナメントへ。
このトーナメントを迎えるうえで、ラムは『Boston.com』へ「どんなゲームであろうと、もし相手が自分たちよりも上のランクにいようが僕らはいつだって勝つチャンスがあると感じてた」と明かした。それは「このチームはケンバという全米のベストプレーヤーがいたからね。それにこのチームには彼の周囲に有能なロールプレーヤーがいたんだ。チームのバランスとしては完璧だったよ」と語っていたのだが、まさにその通りの勝ち上がりを見せていく。
コネティカット大はケンバを中心にバックネル大学、シンシナティ大学を順当に下すと、カワイ・レナード(現トロント・ラプターズ)擁するサンディエゴ州立大学との試合を7点差で制す。続くエリート8(準々決勝)でアリゾナ大学を2点差、ファイナル4(準決勝)ではケンタッキー大学に1点差で勝利すると、NCAAファイナルではバトラー大学を12点差で下して見事チャンピオンに。
決勝でゲームハイの16得点に9リバウンドを挙げたケンバは、トーナメントMVPであるMOP(Most Outstanding Player)を獲得。ケンバは同メディアへ「皆が僕たちのことを『優勝できない』と言っていることを今でも覚えてる。どんな試合でも、僕らは勝つことができない、と言われていたんだ。でも僕らはやり遂げたんだ」と殊勲のコメントを残し、NCAAの歴史に自らの名を刻んだ。
■NBAキャリア Part.1
NCAAで頂点に立ったケンバは、3シーズンをプレーして11年のNBAドラフトにアーリーエントリー。1巡目全体9位でボブキャッツ(現ホーネッツ)に指名されてNBAへの扉をこじ開けた。
ロックアウトのため66試合の短縮となった11-12シーズン。ケンバは平均27.2分のプレータイムを得て12.1得点3.5リバウンド4.4アシストというルーキーとしてはまずまずの成績を残すも、肝心のチーム成績は屈辱的なものに。
シーズン中盤に16連敗を喫したボブキャッツは、一度も連勝できずに黒星を量産。シーズン最後は23連敗で終えたことにより、リーグワーストの7勝59敗。1972-73シーズンのフィラデルフィア・セブンティシクサーズ(9勝73敗/勝率10.98パーセント)を下回る勝率10.61パーセントを記録してしまい、リーグ史上最低勝率を更新してしまう。
前年にNCAAトーナメントを制したケンバは、自他ともに認める大の負けず嫌い。NBAのルーキーシーズンで、ロースターがそろっていなかったとはいえ、2年間で天国と地獄を味わうことになるとは本人も想定外だったに違いない。
翌12-13シーズン。ボブキャッツはヘッドコーチ(HC)をポール・サイラスからマイク・ダンラップに代えたものの、イースタン・カンファレンス14位(21勝61敗)と振るわず、プレーオフにはほど遠い成績に終わる。それでも、ケンバは2年目で先発ポイントガードに定着し、チームトップの平均17.7得点5.7アシスト2.0スティールをマークし、ルーキーイヤーから成長を見せた。
■NBAキャリア Part.2
13年4月。ボブキャッツはダンラップHCを解任し、スティーブ・クリフォードHC(現オーランド・マジックHC)を新たな指揮官に招へい。同年のドラフトでは1巡目4位でビッグマンのコディ・ゼラーを指名し、フリーエージェント(FA)戦線では得点とリバウンドのダブルダブルを毎試合計算できるビッグマン、アル・ジェファーソン(元ミネソタ・ティンバーウルブズほか)を獲得し、戦える布陣を整えていった。
そうして迎えた13-14シーズン。ボブキャッツはシーズン序盤に勝率5割前後を記録する健闘を見せるも、13年12月下旬から黒星先行となってしまい、プレーオフ出場へ暗雲が漂う。借金がふくらむ中で、チームはミルウォーキー・バックスとのトレードでギャリー・ニールとルーク・リドナー(共に現未所属)を補強し、バックコートを強化。
するとボブキャッツは白星先行となり、レギュラーシーズン最後の9試合で8勝を挙げ、イースト7位(43勝39敗)でプレーオフへ。ジェファーソンとの強力デュオを形成し、ケンバはキャリア3シーズン目でようやく大舞台への切符を手に入れたのである。
地元メディア『The Charlotte Observer』に対して、「過去数年というもの、僕らは悪い成績に終わっていた。でも今、僕らはまったく新しいチームとなり、(プレーオフで)世界に衝撃を与えるチャンスを得たんだ」と自信満々に語ったケンバ。
しかしながら、ボブキャッツの相手は当時3連覇を目指していた直近2年間の覇者マイアミ・ヒート。レブロン・ジェームズ(現ロサンゼルス・レイカーズ)に平均30.0得点を許すなど、ボブキャッツは1勝もできずにスウィープ負け。ケンバはチームトップの平均19.5得点6.0アシスト2.0スティールと奮闘するも、王者との実力差は明らかだった。
翌14-15シーズンから、ボブキャッツはチーム名をホーネッツへと改名。ケンバは14年10月末にホーネッツと4年の延長契約を締結して意気揚々と臨むも、ケンバとジェファーソンを含む主力のケガ人続出もあり、33勝49敗のイースト11位で再びプレーオフを逃してしまう。
それでも、15-16シーズンは新加入のニコラ・バトゥームとジェレミー・リン(現ラプターズ)の活躍もあり、ホーネッツはケンバ(平均20.9得点5.2アシスト)中心の布陣でイースト6位(48勝34敗)に入り、自身2度目のプレーオフ出場を果たす。
ヒートとのファーストラウンドで、ホーネッツは2連敗から3連勝で一気に王手をかける。その後もケンバはドウェイン・ウェイド(元ヒートほか)と壮絶なスコアリングバトルを演じ、シリーズトップの平均22.7得点をマーク。第6戦ではシリーズベストの37得点と大暴れを見せたものの、この試合と最終戦にも敗れてしまい、またもや1回戦敗退。
ケンバは第7戦でフィールドゴール16投中成功わずか3本の計9得点に終わったものの、「僕らはすばらしいシーズンを送ったと思う」と『AP』へ切り出し、シーズンをこのように振り返った。
「今季の僕らは本当に粘り強く戦ってきた。数多くのケガに見舞われながら、シーズンを通して一丸となってやってきたんだ。チームメートたちが呼ばれてプレーを要求され、ステップアップすべき時、彼らは実行してくれた。それにほとんどの人たちは、僕らがこの時期にプレーオフという舞台にいるとは思っていなかったはずだから」。
ケガ人を出さずに1シーズンを同等のロースターで送ることができれば、ホーネッツは来季もプレーオフへと進むことができる、そう感じ取れるケンバのコメントだった。
■NBAキャリア Part.3
16年のプレーオフ1回戦で惜敗後、3年が経過した今。ケンバは平均22得点5.5アシスト以上を3シーズン連続で記録し、3年連続でオールスターに選出(18年のみ代替選出)。
特に今季はキャリアハイとなる平均25.6得点(リーグ10位)をマークするなどリーグ有数のスコアリングガードとしての地位を確立。開幕3戦で19本の3ポイントを決めてNBA新記録を塗り替え、昨年11月18日(同17日)のシクサーズ戦ではキャリアハイの60得点という超絶パフォーマンスを見せつけると、オールスターにはスターターとして選出され、自身初のオールNBAチーム(サードチーム)入りも果たした。
だがケンバの飛躍とは反比例に、チームは3年連続でプレーオフを逃し、勝率5割に届かず。誰よりも勝利を求めるケンバは、昨年3月に地元メディア『The Charlotte Observer』へ「現時点において、僕は勝ちたい。プレーオフに出場したいんだ。もうプレーオフに出られないことにはうんざりだ。テレビで見るのも嫌なんだ」と吐き捨てた。
「僕は常に、勝者でありたいと感じている。だからプレーオフに出場するに値すると思ってる」と語ったケンバだったが、今季もホーネッツはプレーオフ戦線に入り込んだものの、一足早くシーズンを終えることに。
今夏、ケンバは制限なしFAになる。オールNBAチームに選出されたことにより、『Sports Illustrated』をはじめとする複数の現地メディアは、ケンバがホーネッツに残留すれば5年で最大2億2,130万ドル(約241億2,170万円)というスーパーマックス契約を結ぶことも可能だと報じている。
「これまでにも言ってきたけど、シャーロットは僕がずっといたいと思う場所であり、愛している場所でもある」と『The Charlotte Observer』へ口にしたケンバだが、シーズン終了後の返答は「(FAでどうなるかは)分からない」というもの。
5月8日に29歳を迎えたケンバにとって、今夏に結ぶ契約はキャリアの中で最も高額になる可能性が高い。だがホーネッツに残留するかは今のところ微妙。もしケンバが勝利を重ねて優勝戦線に入ることを最優先に捉えているならば、他チームへの移籍も十分可能性がある。今夏、ケンバにはキャリアの行方を大きく左右するかもしれない決断が待っていると言っていいだろう。
もっとも、ここ日本で行われるイベントでは、人懐っこく、屈託のない笑顔を交えてファンと共に楽しい時間を過ごしてくれるに違いない。切れ味抜群のボールハンドリングを武器にリーグ有数のスコアリングガードへと上りつめたケンバの一挙手一投足を目に焼き付けていただきたい。
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