2020.02.16
1月28日(現地時間27日、日付は以下同)。ミネソタ・ティンバーウルブズは、ホームのターゲット・センターでサクラメント・キングス戦に臨んだ。
ジャンプボールで最初のポゼッションを手にしたウルブズのアンドリュー・ウィギンズは、アウェーチームのゴール側、フリースローライン手前にボールを置き、8秒バイオレーションをコールされた。
これは27日にヘリコプターの墜落事故で命を落としたコービー・ブライアント(元ロサンゼルス・レイカーズ)がキャリア最初に着用していた背番号8を意味し、直後のポゼッションではキングスがフロントコートへボールを運び、24秒のショットクロックバイオレーション。24は、コービーがキャリア後期の10年間に着用していた背番号である。
ウィギンズがボールを置いた場所――。それはコービーのキャリアを振り返るうえで、決して欠かすことのできないシーンを思い出させた。2014年12月15日に行われた試合の第2クォーター残り5分24秒。コービーがフリースローを2本成功させて、幼い頃から憧れて、目標にしてきたマイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズほか)の通算得点記録を超えた場所だったからだ。
その後、試合はカール・アンソニー・タウンズの3ポイントでウルブズが先制。キングスはハリソン・バーンズのレイアップで応戦するも、ホームのウルブズが徐々にリードを広げていき、キングスから最大27点もの大量リードを奪う。
だがこの日、勝利を飾ったのはアウェーのキングスだった。第4クォーター残り2分49秒でウィギンズに3ポイントを決められてしまい、キングスは98-115で17点ビハインドを背負っていたものの、そこからディアロン・フォックス、バディ・ヒールド、バーンズが加点。残り30.9秒にヒールドがディープスリーを放り込み、キングスが3点差まで追い上げる。
ウィギンズのショットミスを挟んで、残り4.7秒の場面。フォックスが1本目のフリースローを沈めると、一気に同点へ持ち込むべく、2本目に早業をしかけた。リング下部へ向かってパスするように当てて、誰よりも速くそのボールに反応してレイアップを成功。キングスが残り3.6秒に同点に追いつき、ゲームはまさかの延長へ。
延長戦では両チームが互いにリードを奪うも、残り1分14秒にボグダン・ボグダノビッチがロングジャンパー、残り48.3秒にネマニャ・ビエリツァがフリースロー2本を確実に沈めて勝負あり。最終スコア133-129でキングスが奇跡を起こした。
『ESPN Stats & Info』によると、1996-97シーズンにplay-by-playのデータが導入されてからというもの、第4クォーターまたは延長戦の残り3分間で17点以上のビハインドを背負っていたケースは8,378試合あった中、最終的に逆転勝利を収めたチームは皆無。この日のキングスは、8,379チーム目にして、史上初の大逆転劇を果たしたのである。
キングスではフォックスが22得点7リバウンド8アシスト、ビエリツァが20得点9リバウンド8アシスト2スティール3ブロック、ケント・ベイズモアが15得点を挙げたものの、殊勲者となったのはキャリアハイの42得点をたたき出したヒールド。
この日のヒールドは、フィールドゴール24投中14本(うち3ポイントは14投中9本)成功、フリースロー5本全て決め切り、キングスを大逆転劇へと導いた。そのヒールドを支えたのは、やはりコービーだった。
「俺がNBAでプレーしたかったのはコービーがいたから。(今夜は)彼が一緒にいてくれたと感じた。彼は決してあきらめない。それが彼のメンタリティーなんだ。どんな状況になろうと、彼はいつだってプッシュしていた。このチームの皆が、今夜彼が一緒にいてくれたんだと感じたはずだ」。
どんなことがあろうと諦めない姿勢。ヒールドが語ったように、この日キングスが見せた“奇跡の大逆転劇”は、どれだけ劣勢であろうと勝利を追い求めるコービーを体現していたと言っていい。
ウルブズはウィギンズが36得点9リバウンド8アシスト、ロバート・コビントンが24得点7リバンド、タウンズが23得点8リバウンド、シャバズ・ネイピアーが10得点6リバウンド8アシストを挙げるも勝利ならず。
「残り2、3分で我々には15点以上のリードがあった。そこから彼らはショットを決め切り、我々はディフェンス面のゲームプランを遂行できなかったんだ。(勝利するために)必要なリバウンドを奪うことができず、プレーメイクできなかった」とライアン・サウンダースHC(ヘッドコーチ)はあと一歩のところで勝利を逃したことを悔やんでいた。
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