2023.06.26
ゴールデンステイト・ウォリアーズは、直近の10シーズンで4度のNBAチャンピオン、2度のファイナル進出という輝かしい成績を残し、バスケットボール史に残る王朝を築き上げた。
しかし、今シーズンは繁栄を極めたウォリアーズに崩壊の亀裂が生まれたのは紛れもない事実だろう。ドレイモンド・グリーンとジョーダン・プールの衝突に始まり、アウェイでの不調、ロールプレーヤーの一貫性のなさは、シーズンをとおして顕著に表れた。また、自慢のディフェンスも連携ミスが目立ち、ディフェンシブレーティングは昨シーズンの2位から14位にまで転落した。
こういった状況を受けて、今夏のオフはフロントの手腕が試されることとなる。だが、ウォリアーズはサラリーキャップがひっ迫していることから、悠々自適なフリーエージェント(FA)交渉は困難。ディフェンスに長け、機動力があり、欲を言えばサイズのある選手が理想だが、そのような引く手数多の特性を持つ選手をコストコントロールしながら発掘するのは骨の折れる作業となる。
『Bleacher Report』でNBAコラムニストを務めるザック・バックレー氏は、今夏の動向に注目が集まる“ダブネーション”の状況を受けて、「2023年版ウォリアーズのFA展望」と題し、ターゲットとなるであろうトッププレーヤー3名を選出。そして、その中の1人として渡邊雄太がピックアップされた。
球団の最優先事項は、グリーンとの再契約だ。情熱とリーダーシップ、ダイナミックなディフェンス、そしてオフェンスの潤滑機能。スティーブ・カーヘッドコーチは「ドレイモンドが来シーズン、チームに戻ってこないのであれば、我々は優勝候補ではない」と言うほど背番号23に絶大な信頼を置いており、“ビッグ3”を継続するためならば死力を尽くす覚悟だろう。
しかし、グリーンは今シーズンのチームサラリーの約13パーセントを占め、ここにステフィン・カリーやクレイ・トンプソン、アンドリュー・ウィギンズなど高給プレーヤーを加えると、その割合は約74パーセントにも上昇。さらに、来シーズンからはプールも新契約に切り替わるため、お財布事情は一層厳しくなる。そこで白羽の矢が立ったのが、今シーズンのサプライズの1人となった渡邊だ。
バックレー氏は、渡邊を「彼はシーズン前半、ケビン・デュラント(フェニックス・サンズ)、カイリー・アービング(ダラス・マーベリックス)とともにチャンピオンを目指していたブルックリン・ネッツを活気づけた。203センチのスウィングマンである渡邊は、エネルギッシュなディフェンス、トランジションアタック、そして自己最高となる44.4パーセント(コーナーからは驚異の51.4パーセント)の3ポイントで常に存在感を示した」と紹介した。
また、2022-23シーズンの躍進は、シーズン中盤の補強によるローテーション混雑の影響で中断されてしまったものの、それがなければより説得力のある1年になったと、渡邊の成長を高く評価した。
渡邊は今夏に制限なしFAとなるため、他球団と自由な交渉が可能となる。リーグのトップ選手とのマッチアップで見せたディフェンス性能と高確率な3ポイントは、間違いなくスカウトの目に止まっており、FA市場の注目3&Dプレーヤーとして関心を寄せる球団は少なくないだろう。また、勤勉さといいグルーブを持ち合わせる渡邊は、ウォリアーズが求める人物像にもマッチしている。
なお、バックレーが選出した3名の中には、ローテーションプレーヤーで最も一貫性のあったドンテ・ディビンチェンゾの名前も。今シーズン、3ポイント成功率でキャリアハイの39.7パーセントをマークした彼は、ウィンシェアでチーム4位、ディフェンシブレーティングでチーム5位の成績を残しており、貢献度の高さは十分キープに値する。
はたしてこの夏、ウォリアーズと渡邊のマッチは実現するのだろうか。
文=Meiji
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