2025.08.05

実現を見据えるNBAヨーロッパ構想…1球団のリーグ加盟料は最低でも700億円超から?

アダム・シルバー(左上)の野望は実現するのか?[写真]=Getty Images

 NBAのヨーロッパ進出計画は、着実に進行している。『The Athletics』によると、コミッショナーのアダム・シルバーは、夏のオフを利用して欧州へと渡航し、ヨーロッパの名門球団や投資会社と会談の場を設けているという。

 シルバーが最も好意にしている球団ーーそれはルカ・ドンチッチ(ロサンゼルス・レイカーズ)の古巣であるレアル・マドリードだ。

 シルバーは8月1日(現地時間31日)、パリでレアル・マドリードの球団幹部とミーティングし、自身が計画するNBAの欧州リーグについて、同クラブ参加の可能性について協議した。スペインリーグ優勝37回、ユーロリーグ優勝11回という偉大な歴史を持つこの球団がNBAの新リーグ参加を表明すれば、話題性やコミュニティ、潤沢な資金力など、その積み上げてきた巨大な実績の全てがNBAに移管されると同時に、他のユーロリーグのクラブも追随することが期待されている。

 では、レアル・マドリードNBA移籍は、現実的なのだろうか。同球団は、ユーロリーグのAライセンス(毎年参戦できる権利)の所有する球団のひとつだが、このライセンスが2026年に期限切れを迎える。また、同球団のフロンティーノ・ペレス会長は兼ねてよりNBAに強い関心を抱いており、過去にはレアル・マドリードをイースタン・カンファレンスに編入させるという壮大な希望を抱いていたこともあるほどだ。

 また、シルバーはレアル・マドリードのほか、トルコの複合スポーツクラブであるガラタサライ、ドイツの強豪アルバ・ベルリンと面会。さらに、サッカーの強豪であるパリ・サンジェルマンのオーナー企業「カタール・スポーツ・インベストメンツ」をはじめ、複数の民間投資会社の代表者とも会談を設定し、ビジネス面でのパートナーシップについても発展を模索した。

 NBAがこうした企業にも積極的にアプローチする理由は、新リーグを成功されるための資金調達に他ならない。『Sports Business Journal』によれば、NBAは欧州リーグの設立によって収益構造そのものを再編する必要があり、加盟球団には5億ドル(約740億円)から10億ドル(約1480億円)のフランチャイズ料を徴収する意向だという。

 だが、ヨーロッパの球団にとって、この莫大な加盟額は非現実的だ。実際に、某ユーロリーグのフランチャイズ役員は、NBAからの提示額を聞いて冷笑したと伝えられている。

 それもそのはず。NBAとヨーロッパリーグでは、ビジネス規模に大きな乖離がある。NBAのトップ球団におけるバスケットボール部門の年間総予算は推定3億ドル(約440億円)前後。一方『Basketball News』によれば、欧州最大規模のレアル・マドリードでさえ、その予算は年間4900万ドル(約70億円)となっており、1年単位で見ても予算には約6倍の開きがある。

 現在、NBAにも新球団設立の可能性が噂されているが、米国の新球団には30億ドル(約4430億円)のフランチャイズ料が発生する見込み。これと比較すると、NBAヨーロッパへの参戦はいくらか割安に思えるものの、欧州クラブ側から見れば10年超の年間予算を一括前払いする超大型投資となるため、支払は決して容易ではない。

 それでも、設定された加盟料は、球団の増加により既存球団へ対するリーグからの分配金が希薄化することへの補填や、NBAという世界トップレベルのブランディングに加わることができるメリットを考えての数字。NBAをヨーロッパに持ち込むためには、ローカルクラブの経営モデルを、グローバルビジネスレベルへと劇的に引き上げる術が求められているのだ。

文=Meiji

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