2021.09.30
Bリーグ開幕までいよいよ1カ月を切った。この日を待ちわびたファン・ブースターは各クラブの状況に気をもんでいることだろう。そこで今シーズンも開幕を前にバスケットボールコメンテーター井口基史氏による各クラブのレポートをお送りしたい。
文=井口基史
「1番柏木、2番川村、3番金丸、4番ガードナー」とは井口さん的恐竜打線。
この打線をできれば長く見たかったが、プロバスケで同じクリーンナップを継続することの難しさは今シーズンのオフで改めて思い知らされた。きっとシーホースブースターには切り替えの難しい、タフなオフシーズンだっただろうと想像します…そんななかで投票により契約継続が発表されたタツヲさんのニュースは安心材料か。
シェーファーアヴィ幸樹選手が東京五輪で経験を積む姿は、三河ブースターのみならず、日本中のバスケファンの目に焼き付きけられ、ウィングアリーナでの躍動は待ちきれない。
個人的には大阪エヴェッサでは眠れる獅子のまま過ごしたとも言える、“業界No1注目”日本人プレーヤーの角野亮伍選手(大阪から加入)の獲得が気になる。サンアントニオ・スパーズとアメリカ代表の名将ポポヴィッチよりも長く指揮を執る、歴戦の猛者・鈴木貴美一HCのもと、比江島慎選手や金丸晃輔選手のような階段を上っていくのか注目が集まる。
またあえてロスターが11人までしか発表されておらず、ずっと一枠空けてあるのが不気味で、自チームも他チームのブースターの皆さんもソワソワ。何か今シーズンには大きな動きがありそうな予感だ。
しかし男前度は落ちていませんのでご安心を。ドルアリで須田侑太郎選手(A東京から加入)がハードに体をぶつけてディフェンスする姿と、新生名古屋Dのファンタジスタ・デュオ「拓実と達哉」(伊藤達哉選手・大阪から加入)が見られるなんて、井口さん的ダイナミックプライシングのレートはMAXです。
残留した日本人7選手の顔ぶれを見ても、豊富なラインナップは健在。井口さん的フィリピン出身アジア枠No.1ウィングマンはボビー・レイJrかな~なんて思っていて、名古屋Dのペリメーター陣の争いはさらに激しさを増す。
ただジャスティン・バーレル選手が6シーズン在籍していたことにより、名古屋Dとしての外国籍選手総入れ替えの経験はJBL時代までさかのぼり、カルチャーの面が心配だが、ショーン・デニス体制を知る日本人メンバーがいてこそ、トライできたと捉えるべきか。
衝撃的だったのはゲーム中のアクション。エアパンチ、アイボール、審判への不満表現を終止続けた末に、テクニカルファウル2つで退場になるもコートに残り続け、ゲーム再開を促すためにコートに入ったゲームディレクターまでなじり、観客がいる試合が中断し続けるシーンはBリーグでは見たことがなかった。
中継とプレーオフでしか直接見ていない立場で、ここまで言うと批判があると思うが、オリンピックのスペインベンチが気になりチェックしていたが、大人しく座っている様子を見ると、どうやら激しいアクションはBリーグにおいてだけのようだ。スポーツエンターテイメントとの境が難しいが、アンダーカテゴリーの育成に力を入れるレイクスだけに余計な心配が募る。
昨シーズン、大量移籍の発表に狩俣昌也選手(B3長崎ヴェルカへ移籍)が残した「滋賀の皆さん俺います」の投稿が話題になったが、今シーズンはその狩俣選手を含む、昨シーズンを上回る9人退団と、カルチャーが残しづらいのがブースターとしてはつらいところか。
アジア特別枠で加入したフィリピン人ナンバー1ガードのキーファー・ラベナ選手や、佐賀のファンタジスタから滋賀のファンタジスタになれるか澁田怜音選手(B2佐賀から加入)など、コート上の面白さをいかに県民に知ってもらえるか。レイクスのコート内外での戦いが始まる。
その影響からか、このクラブのコート外の戦いは常に苦しく、Bリーグになって、入場者数がB1最下位から脱出できたのは2017-18シーズンの一度だけ。常にB2の入場者数上位クラブより下回っている。
2021年6月に示された「将来構想」では新B1(プレミアリーグ)に向けてライセンス基準が引き上げられ「入場者数平均4000人以上」「売上基準12億円以上」「新設アリーナ基準充足/5000席など」へのチャレンジが全クラブに求められる。京都が入場者数最下位を脱出できた2017-18シーズンを見ると、2092名(B1 16位)が過去最高の平均入場者数で、新B1への課題はここに尽き、ある意味極端な施策が打ちやすい環境だと思っている。
コート上は若き小川伸也HCを中心に、がむしゃらに戦ったシーズンだと見ており、さらに今季は日本バスケットボール界のネクストレジェンドである渡邉拓馬氏を招聘し、小川HCを支える体制にも手を打った。個人的にはバッシュを履いてコートに立ってもらうか、スーツでベンチに座ってもらいたいくらいぐらいの気持ちだが、京都というホームタウンが元来得意としてきた文化作りが早く見たい。
ガード系外国籍選手として異才を発揮したのがDJ(ディージェイ・)ニュービル様。彼だけが持つ独特の世界観から選択されるアタック、プルアップは予測不能で、DJニュービルの世界を何度も堪能させていただいた。プレータイムは平均30分と、この世界が今シーズンも続くのであれば、ガードのタレントが豊富な大阪だけに、伊藤達哉選手(名古屋D)を残留させることが難しかったことは想像できる。
さらに地元出身選手であり、日本代表のインサイドで戦い続けた竹内譲次選手(A東京から加入)の獲得に成功。これにより帰化選手であるアイラ・ブラウン選手がウィングでプレーできる時間が広がることを考えると、譲次選手、アイラ選手双方の価値が大きく高まりそうだ。
気になるのは、橋本拓哉選手のアキレス腱断裂からの復帰。大切なキャリアでけして無理すべきではないと思いつつも、公式発表の全治8カ月。リハビリが順調だとするとどのあたりで、カムバックするのか。
昨シーズンは変則スケジュールや代表活動などで、橋本拓哉選手を始めキャリアに大きな影響を及ぼしかねない、大ケガが異常に多いシーズンだった。ゲームスケジュールの考え方には選手会の参加も検討してほしいし、Bリーグアワード賞にはカムバック賞の新設を提言したい。ぜひケガから復帰を果たす選手たちにはホーム・アウェーかかわらず、大きな拍手で迎えてあげたい。
当時はまだファンタジスタの道を歩み始めたばかりだった並里成選手との共闘は楽しみだし、小野寺祥太選手とも岩手ビッグブルズ時代以来の共闘となる。桶谷HCは琉球退団後、自分がGMを務めていた岩手の招へいに応えてくださったことがあり、当時まだ盛岡南の高校生だった小野寺選手を、チームに迎え入れたいとコーチ自らリクエストしてくれたのを覚えている。
リバウンド王のジャック・クーリー選手は今シーズン3年連続3回目のリバウンド王へのチャレンジだが、帰化選手である小寺ハミルトンゲイリー選手(茨城ロボッツから加入)と東京五輪メンバーにも選ばれた渡邉飛勇選手の加入により、クーリー選手の負担軽減とペイント内の厚みを増すことに成功。那覇にルーツを持つ、コー・フリッピン選手(千葉ジェッツから加入)がキングスの新たなエンジンになれば、ナリト・コーのラインで何本の高速ブレイクが見られるだろう。
西地区をけん引し続けてきたキングスが、大型補強でステップアップしてくる広島、島根を抑えられるのか。5年連続西地区1位をかけた戦いがもうすぐ始まる。
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