2024.10.18

ENEOSサンフラワーズ田中こころ&八木悠香…Wリーグ開幕2連戦で魅せた度胸満点のルーキーたち

ENEOS期待の田中こころ(右)と八木悠香 [写真]=Wリーグ
フリーライター

■強心臓のプレーで開幕戦では11得点を奪取した田中こころ

 10月11日、「大樹生命Wリーグ 2024-25 シーズン」が開幕した。開幕戦はENEOSサンフラワーズとトヨタ自動車アンテロープスとで行われ、11日の第1戦、翌12日の第2戦ともにENEOSが接戦をものにして連勝スタートを飾った。

 2試合ともに得点面で大きく貢献した長岡萌映子や要所でのシュートを沈めたオコエ桃仁花、絶対的司令塔でもある宮崎早織と「東京2020オリンピック」の銀メダリストたちがチームをけん引。加えて大きな輝きを放ったのが田中こころ八木悠香のルーキー2人だ。

 桜花学園高校から入団したガードの田中こころは、第1戦の試合開始から約5分後に交代でコートイン。フリースローで初得点を挙げると後半も積極的な攻めを見せ、23分48秒の出場で11得点2アシスト2スティールをマークした。中でも第2クォーターには相手エース・山本麻衣のドライブに対し粘り強くついていき、最後はシュートをチェック。「山本さんとマッチアップということで今まで練習してきたのですが、そんな簡単に勝てる相手ではないので、1本スティールは絶対にしようという目標でやっていました。もっともっと負けないぐらいのディフェンスを頑張りたいと思います」と、田中は山本とのマッチアップについてこう語った。また、第4クォーター残り5分53秒、同点の場面ではドライブからシュートを試みると、これがトヨタ自動車の安間志織のファウルを誘いバスケットカウント。勝ち越し点を鮮やかに決めてみせた。このルーキーの奮起でさらに勢いが付いたENEOSが僅かに先行すると、最後はトヨタ自動車の追い上げも振り切って78ー72で勝利。

開幕戦からシュート力の高さを披露した田中 [写真]=Wリーグ


「自分の一番の役割は交代で出てチームの流れを変えることだと思っているので、それを今日はできたかなと思います」

 試合後、メディアの前でWリーグデビュー戦を振り返った田中。勝ち越しのシュートについていても、「まずは自分優先でドライブに行くという気持ちが強かったので、変なシュートになっちゃったんですけど結果的に入ってよかったです」と、笑顔を見せた。

「長岡さんや宮崎さんのところはマークも強いのですが、その分、私が新人ですけど思い切っていくことで長岡さんや宮崎さんも空いてくると思うので、そこは自信を持ってドライブだったりシュートだったりをしていきたいです」と、田中。高校時代から試合では緊張しないというが、Wリーグのキャリアスタートとなるこの日も「緊張というよりもすごく楽しみでワクワクした気持ちでアップしていました」と、言う。さらには「多少の緊張はするんですけど、コートに立ったら緊張はしないので、いつものプレーという感じです」とも冷静に語っていた。

 続く翌日のトヨタ自動車との2戦目も途中出場すると、トヨタ自動車のマークが前日より厳しくなった中で前半はミスが続いてしまう。それでも、「前半はすぐに交代という形になりましたが、そのときにコーチからボールをもっと離して、最終的に自分がもらって、そこからピックを使うようにというアドバイスをもらったので、後半はどんどんボールを離して、最終的に自分で行ったり、周りを見たりするようにしました」と、後半には好アシストなどでチームメートの得点を演出。5得点4リバウンド3アシスト2スティールというスタッツでデビュー戦を終えた。

■2戦目に登場の八木悠香は13得点でデビュー戦を飾る

 一方、京都精華学園高校出身で田中とともに今シーズンより入団した八木悠香は、初戦の出場はなし。第2戦目の第1クォーター残り10秒で初出場を果たした。すると、第2クォーター開始37秒にはオコエからのパスに合わせてリング下でシュート。これが初得点となると、その後も長岡のパスにタイミング良く反応してシュートをねじ込むなど積極的にリングに向かい、18分33秒の出場で13得点3リバウンドを奪取した。

「昨日の試合(第1戦)に出られなかったというのは、自分の中でも結構悔しかったんですけど、切り替えるようにしていました。今日は自分ができることを出せたかなと思います」(八木)

 この“自分のできること”については、「今は4番ポジションや3番ポジションをやらせてもらっているのですが、そのときのカッティングの合わせのプレーなどは自分の中では出せたかなと思います」と、言う。

初戦出場なしの悔しさを第2戦で晴らした八木 [写真]=Wリーグ


 試合では長岡の巧みなパスから八木のシュートという場面もあったが、これには「『え、ここに来る?』と思ったけど、パスを取ることができたので」と、先輩の好プレーに驚いたよう。「昨日、試合に出ていなかったので緊張はしたけれど、1本シュートが入ってそこで緊張はほぐれました」とも振り返った。

 第1戦は不出場もベンチでは相手のプレーをしっかりと観察した。「自分の中で相手のプレーが分かっていたので、(それに対しての動きも)しっかりできたと思います」と、八木。悔しい思いを持ちながらもベンチでできることを怠らなかったことが第2戦での爆発に繋がったといえるだろう。

 第2戦では田中とともに出場する場面も多く、田中からいいアシストもあった。「(パスが)来るとは思っていました」という八木に対し、田中も「いつもいいところにいてくれるので、信頼してパスを出すようにしています」という。また、「八木が頑張っていたので、負けないようにと思って後半頑張ることができました」と田中が言えば、八木も「頼もしい存在です。コートの外と中では全然違っていて、コートに入ったら田中の方が先に出てる分、引っ張ってくれるので自分の中では心強いです」と、コメント。

 2人ともに第2戦では試合終盤の緊迫した場面でコートに立っていた。指揮を執るティムルイスヘッドコーチは終盤の起用について、「2人はプレーできることを証明しているし、信頼もしています。プレータイムに関して年齢は関係ないと思っていて、高卒の選手だとしても、3年間待ってプレーさせるよりもすぐに(試合で)プレーするべき。一番勉強になることは試合に出ること。試合でミスをしたとしても、そこから学ぶことは大事です」と、言う。さらに、「あの2人はきっと伸びるし、将来トップ選手になると思います」と、大きな期待も寄せた。

 強気のプレーで堂々のWリーグデビューとなった田中と八木。

「手応えをつかんだところもあれば、やっぱりまだまだ自分に足りないなと思うところも2試合でたくさんあったので、特にディフェンスやフィジカル面で負けてしまっていたので、そこはこれからトレーニングなどで体を作って頑張りたいです」(田中)

「自分の得意とする誰とでも合わせができることに関しては、そこで点にもつながったのかなと思います。あとは合わせだけでなく、もっと自分がボールもらってピックを使うなど、そういったこともこれからしていきたいです」(八木)

 それぞれが開幕戦を通して得た自信と課題を胸に、ENEOSの新星は今後もさらなる高みを目指していく。

文=田島早苗

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