2025.06.03

【インタビュー】群馬クレインサンダーズ・藤井祐眞 まだ見ぬ景色を求めて

移籍1シーズン目を終えた藤井祐眞 [写真]=B.LEAGUE
編集者、ライター

群馬クレインサンダーズはB1昇格から4シーズン目の2024-25シーズンにクラブとして初めてチャンピオンシップ出場。シーズンをとおして強固なディフェンスを築き上げ、カイル・ミリングヘッドコーチ体制1年目に確かなステップアップを見せた。その一翼を担ったのが藤井祐眞だ。レギュラーシーズンは全60試合の出場で1試合平均11.1得点3.3アシストを記録。三遠ネオフェニックスとのクォーターファイナルでは同20.5得点6.5アシスト1.5スティールの活躍でチームをけん引した。藤井にシーズンを振り返ってもらうとともに、Bリーグ優勝への想いを語ってもらった。

インタビュー=酒井伸

■クラブ初のチャンピオンシップはクォーターファイナル敗退「あとちょっとが届かなかった印象」

ーー今シーズンは昨シーズン王者の広島ドラゴンフライズを相手に開幕2連勝を飾ったあと、京都ハンナリーズ長崎ヴェルカに3連敗。その後は順調に白星を重ね、12月にはリーグ戦11試合で10勝1敗と大きく勝ち越しました。結果的に東地区3位、ワイルドカード上位となる39勝21敗で終えたレギュラーシーズンをどのように振り返りますか?
藤井 勝てていればという試合がありましたけど、全体的に見て、悪くはなかったと思っています。11月のバイウィーク明けから12月にかけてすごく調子が良く、実際に連勝を重ねていきました。チームの雰囲気も良かったと思っています。

ーー迎えたクラブ初のチャンピオンシップでは三遠に連敗を喫し、クォーターファイナル敗退。試合後には「少しの差だった」というコメントもありました。
藤井 三遠が強いことはわかっていましたが、僕たちは負けていない自信がありました。2試合とも気持ちと気持ちのぶつかり合いのようなゲームでした。第2戦は第3クォーター序盤に20点差以上もつけられました。試合では悪い時間が絶対にありますけど、その悪い時間を止められずに長引いてしまった。本当に良くなかったと思っています。それを何とか止められたらという思いです。佐々木隆成選手が3ポイントを決めるとか、(デイビッド)ヌワバ選手が強引にこじ開けるとか。そういったプレーの力技で三遠は打開していたと思います。僕たちも点数が広がる前に打開できたら良かったです。

ーー三遠とは天皇杯も含めて5戦全敗です。苦手意識があったのでしょうか?
藤井 相性というか、やりづらさはなかったですね。すべての試合が1ケタ点差での決着でしたから。そのなかには逆転負けを喫した試合もありました。ただ、三遠はやはり強くて、あとちょっとが届かなかった印象です。僕たちがオフェンスで悪い終わり方をした時、三遠はすごく走ってきました。例えば、シュートがうまい選手にアンダーしてしまったプレー。そういった1つのミスを突くのがうまいと感じました。

ーー1試合平均失点が昨シーズンの「81.9」から「71.6」まで激減しました。“ディフェンスのチーム”という自信はつきましたか?
藤井 シーズン中は何度もディフェンスについて言われてきて、プライドを持って戦ってきたつもりです。実際に数字として現れていますからね。ミリングHCが作ってくれたスタイルなので、それには自信を持っています。

ーー藤井選手はベストディフェンダー賞にも輝いたことがありますが、群馬でも自分自身のディフェンス力を活かせている手応えはありますか?
藤井 いい時はいいんですが、1対1で突破されてしまうことがありました。川崎(ブレイブサンダース)ではジョーダン・ヒース(現京都ハンナリーズ)選手というショットブロッカーがゴール下にいたので、コースを限定させて、その方向に追い込めばいい部分もありました。あとは僕が前からプレッシャーをかけても、後ろにいる選手がトラップを意識してくれるとか。ただ、今シーズンはチームでディフェンスするような感じで、なかなか難しかったです。考えながらディフェンスをしてしまったので、アグレッシブさに欠けてしまいました。

ーー所属チームでは外国籍HCから初めて指導を受けたと思います。新たな発見はありましたか?
藤井 外国籍、日本籍を問わず、HCが求めるバスケットボールでどのように自分を活かして頑張れるのか。常にその気持ちです。これまで様々なコーチから指導を受けてきましたが、その度に「こういった考え方もあるのか」と、いろいろなことを吸収しています。

ーー初めての移籍で苦労したことが多かったと思います。
藤井 辻(直人)さん、(野本)建吾以外は初めて一緒にプレーする選手でした。環境面より、昨シーズンから在籍する選手たちに加わってプレーするのが一番難しかったです。

ーー辻選手に話を聞いたら、チームメートへ積極的に指示を出すようになったということを言っていました。年齢を重ねることで何か変化はありますか?
藤井 自分としては変えていると思いませんけど、川崎ではニック・ファジーカス選手という絶対的なリーダーがいて、彼がよく指示を出してくれました。自分はそれに対して、周囲へアドバイスを送るような役割でした。ここでは思っていることを伝えなければいけないし、それをチームメートへ言わなければいけない。何か変わったことは一切なく、自分が伝えたいことを伝える。その考えですね。

ーー昨シーズンと比較して、2ポイントシュート数が「239」から「130」に減り、3ポイントシュート数が「375」から「428」に増えました。チームのスタイルによるものかもしれませんが、HCからシュートについて何か言われていたのでしょうか?
藤井 ミーティングで「ロングツーは効率が良くない」という話はありましたけど、それ以外で個人的に何か言われたというのはありません。自分であまり考えすぎないようにしつつ、でもあまり打たないようにしていたのかなと。スペーシングの問題だったと思っていますが、個人的にはもっとリングにアタックできたと思っています。

通算3ポイントシュート成功数はリーグ6位の853本 [写真]=B.LEAGUE

■「素晴らしい仲間と一緒に優勝すること。これが一番欲しいもの」

ーー4月6日の試合で史上初のB1個人通算500試合出場を達成。3シーズン連続となるレギュラーシーズン全試合出場を果たしました。これまで痛みやケガを抱えながら試合に出場したこともあると思いますが、試合へのモチベーションについて聞かせてください。
藤井 ケガをした時に「これは無理なんじゃないか」と思うものもありました。ただ、100パーセントな状態ではなくても試合に出場して、それでチームがプラスになるなら出場すると伝えていました。「ケガを治してから出場して」、「100パーセントな状態ではないならチームにとってマイナス」というのであれば、喜んで休みます。ただ、出場することがチームのためであれば、僕はその試合に何としても出場する気持ちでいます。

ーー日々のケアやコンディション面で気をつけていることはありますか?
藤井 一切ないですね。意識していないのがいいのかもしれません。体質的に太りやすいタイプではないですし、食事制限もしていません。病気やケガはほとんどないです。自分の好きなものを食べて、睡眠も寝る時はよく寝る。自分の好きなように過ごすことで、ストレスが溜まらないと感じています。

ーーBリーグ開幕後はシーズンMVPやベスト5など数々の個人賞を獲得してきました。唯一得られていないBリーグ優勝への想いを聞かせてください。
藤井 もちろん、リーグだけではなくどの大会でも優勝したいです。だからこそ、負けたら悔しいし、勝ったらうれしい。素晴らしい仲間と一緒に優勝すること。これが一番欲しいものです。

ーー年齢の近い選手や仲のいい選手が優勝する姿をどのように見ていますか?
藤井 バスケットボールはチームスポーツですから「誰が優勝している」というのはあまりないです。例えば、マコ(比江島慎宇都宮ブレックス)に関しては彼が優勝に導いていると思うので、すごく羨ましいというか、自分もそういった選手になりたいし、自分もチームを優勝させたいと思っています。

ーー群馬が優勝するために必要なことを聞かせてください。
藤井 今シーズンのディフェンスをもっともっと突き詰めること。チェンジングディフェンスも採り入れていますが、そこでのエラーが多かったり、マンツーマンでも強度が低かったり。今シーズンを通じて、ディフェンスのレベルではリーグでも上のほうだと証明できたので、しっかりと自信を持って、より高いレベルを目指していきたいです。オフェンスではバリエーションを増やしていけたら、相手からしたら守りづらくなります。ラインナップや戦術も含めて、チームとしてレベルアップしたいです。

[写真]=B.LEAGUE

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