2025.09.09

テーブス海が「夢の部活体験」で高松市の中学校にサプライズ訪問…未来の選手へ伝えた”挑戦”の姿勢

テーブス海が高松市内の中学バスケットボール部をサプライズ訪問、直接指導をした [写真]=伊藤大允
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トッププロとバスケットボールを通じて分かち合った「最高の夏の思い出」

 8月21日、バスケットボール男子日本代表アディダスアスリートのテーブス海が香川県高松市内の中学校をサプライズ訪問し、バスケットボール部員を直接指導した。アディダスが3月から展開したプロジェクト”BUKATSU+キャンペーン”の一環として、多くの応募者の中から抽選で選ばれた本校において、『「夢の部活体験」supported by adidas』が実現した。突然の登場に、体育館で集合していた生徒たちは一様に目を丸くし、信じられないといった表情を浮かべた。

テーブスの突然の登場に驚きの表情を見せる選手も [写真]=伊藤大允

 練習メニューは、テーブス自身が顧問と直接やり取りして決定したもの。チームが抱えていたのは「明確なポイントガードがいない」という課題。テーブスは「誰か1人が司令塔を務めるのではなく、コートに立つ5人が全員でオフェンスを構築する必要がある」と考え、基礎と応用をバランスよく織り交ぜたプログラムを用意した。

前もって顧問から課題を聞いて、テーブス自身がメニューを作成 [写真]=伊藤大允

 最初に行ったのはボールハンドリングの基本練習。スタンスをしっかり取り、前を向いて、すぐにアタックへ移ることができる姿勢を作ることから指導は始まった。続いて「ジャンプストップ」に重点を置いたメニューへと移行。ドリブルからレイアップを狙うのではなく、一度ジャンプストップを挟む。そのワンステップを加えることで、レイアップ、ジャンプシュート、パスと多様な選択肢が生まれる。テーブスは実演を交えながら、動きの意味を何度も丁寧に解説した。

 次に取り組んだのはアウトナンバーの練習だ。2対1、3対2、4対3といった数的有利の状況を設定し、オフェンスが確実に得点につなげられるよう実践的な練習を重ねた。ここでもテーブスは積極的にコートに入り、実際にボールを持って動きを示した。時折、選手の肩に手を置いて細かく指示を送り、失敗しても「いいよ、次はこうしてみよう」と声をかける。その言葉に緊張気味だった生徒たちの表情も徐々に和らぎ、活気に満ちた空気が体育館に広がっていった。

 最後はゲーム形式で締めくくられた。当初は遠慮がちにプレーしていた生徒たちも、次第に積極性を見せ、テーブスに仕掛けていく場面も増えた。豪快なパスや鋭いドライブを間近で体感しながら、懸命にくらいつく姿は、指導を受ける前の硬さを完全に払拭していた。終了後、汗だくになりながらも生徒たちは晴れやかな笑顔を見せ、憧れの選手とともに過ごした時間をかみしめていた。

次第に打ち解けて生徒たちの目が輝き出した [写真]=伊藤大允

 練習を終えた後、テーブスは囲み取材に応じ、充実した表情で振り返った。「本当に短い時間でしたが、子どもたちが真剣に耳を傾けてくれて、すごいエナジーを感じました。ジャンプストップやアウトナンバーの場面など、伝えたポイントを意識して、しっかり取り組んでくれたので、練習前よりも上達した状態で帰ってもらえたのではないかと思います」と手応えを語った。

「今回の体験も子どもたちの記憶に残り、次のステップの励みになればうれしいです」[写真]=伊藤大允

 さらに「どんなことを伝えたかったか」という問いには、技術と姿勢の両面を挙げた。「バスケットボールの技術ではジャンプストップ。極めればプレーの幅は大きく広がり、ペイント内に侵入しても焦らず次の選択肢を探せるようになる。技術面ではそこを一番に取り組んでほしい」と説明したうえで、コート外に目を向け「努力の積み重ねが大切」とも語った。「自分も中学のころは自主練をたくさんしていましたが、もっと効率的に取り組めば、もっと早くプロになれたかもしれません。中学生の段階で正しい知識を得るのは難しいからこそ、こうした機会を通じて学んでほしい」と真剣な表情で言葉を紡いだ。

 子どもたちが「最高の夏の思い出」と口を揃えたことについては、自らの経験を重ね合わせた。「自分も中学時代にプロの選手と触れ合った経験があり、それは一生忘れない思い出になっています。成長していく過程で基準にもなりました。今回の体験も子どもたちの記憶に残り、次のステップの励みになればうれしいです」と声を弾ませた。

応募したキャプテンの学生と [写真]=伊藤大允

 ここからは、テーブス自身が語った「中学時代の記憶」や「未来の選手たちへのメッセージ」をお届けする。

部活訪問で感じた懐かしさ、未来の選手たちへのメッセージ

体育館をはじめ、久しぶりの中学校の雰囲気を楽しめたとテーブス [写真]=伊藤大允

――今日の感想を教えてください。
テーブス 本当に短い時間でしたが、子どもたちが真剣に話を聞いてくれて、すごくエナジーもありました。自分がメインのポイントとして挙げていたジャンプストップとアウトナンバーの場面は、みんなよく取り組んでくれて、少しは上手くなって帰ってもらえたのではないかと思います。

――実際に中学生と一緒にやってみて、どんな印象を受けましたか。
テーブス みんな本当に元気で、伝えたことに取り組む姿勢が素晴らしかったです。最初は慣れていないことも多く、特にゲーム形式では難しい部分もありましたが、だんだん慣れてジャンプストップをやってくれたり、質問をしてくれる子もいました。自分からするととてもやりやすい環境でした。

――今日のイベントはアディダスアスリートと「夢の部活体験」でした。これから子どもたちにどんな影響を与えていきたいですか。
テーブス もちろんポジティブな影響を与えたいです。バスケットボールが大好きでプロを目指したい子たちには、知識や技術面、メンタル面など普段学べない部分を共有していきたい。バスケットボールに限らず「これをやる」と決めたことに向き合う姿勢を、自分自身がバスケットボールを通して見せられたらと思います。特に中学校や小学校の年代では、その姿勢が大事です。自分もいい例に恵まれたからこそプロを目指そうと思えましたし、そうした影響は限りなく広がっていくものだと思います。だから、もっともっと共有していきたいです。

――こういう中学校の部活に来ることはありましたか。
テーブス 本当に1、2回程度ですね。今までは母校ぐらいでした。

――実際に中学校に入ってみて、どうでしたか。
テーブス やっぱり中学生のころの思い出が一気に戻ってきました。匂いも一緒で、大体どこも同じですよね。マットやボールの匂い、体育館にステージがあってゴールがある光景は全国共通だと思います。懐かしかったです。

――子どもたちの反応はどうでしたか。
テーブス 最初はちょっとびっくりしました。あれ、自分知られてないのかな、とか、緊張してるのかな、と感じる一瞬もありました。でも、後で聞いたら「目が悪くて見えなかった」とか「サウジアラビアにいたんじゃないの?」といった反応だったそうです。そういう驚きの空気も含めて面白かったですね。

――子どもたちは積極的にトライしていたように見えました。
テーブス そうですね。途中からジャンプストップを決めたら1点、といったインセンティブを加えたことで、慣れていなくても頑張って挑戦しようという雰囲気になりました。

――全体的に大人しい印象もありましたが、最後は元気でしたね。
テーブス 想像以上に積極的で、徐々に慣れてきた様子も体育館全体に伝わりました。それが一番うれしかったです。

――ご自身の中学時代の夏休みの思い出はありますか。
テーブス きつかった記憶しかないです。暑い中、2リットルのドリンクボトルを5人でシェアして外で走り、体育館に入って3メン、5メンをやって。きつい思い出ばかりでしたが、振り返れば仲間と苦しいことを乗り越える経験が大人になっても大切なんだと実感します。

――キャプテンとして悩んだ時期もこのころだったとか。
テーブス ちょうど夏休みが終わったころです。新しい代になって期待もあったのに、なかなか勝たせることができず悩んでいました。そのとき顧問の先生と話して涙を流したことを覚えています。

――アディダスが掲げるメッセージ、「YOU GOT THIS(大丈夫、いける。)」を伝えることはできたでしょうか。
テーブス はい。最初と最後では子どもたちの目の輝きが全然違いました。この年代の思い出は一生忘れないものなので、濃い時間を過ごしたいと思って臨みました。もちろん技術的な部分を持ち帰ってほしいですが、「テーブス海はみんなを応援している」というメッセージさえ伝われば十分です。

――最後に、今日の子どもたちが高校や大学でバスケットボールを続ける場合、あるいはやめる場合もあると思いますが、どんな関わり方をしてほしいですか。
テーブス どのレベルに進んでも、今日やったような基礎練習は一生役立ちます。ファンダメンタルは日本代表の選手でも毎日やっていることですから、当たり前として取り組んでほしい。そして後輩や下の世代にも共有してほしいです。そして、たとえバスケットボールをやめても、ファンとして関わってくれたら僕は本当にうれしいです。

自身の中学時代の思い出を語ってくれた [写真]=伊藤大允

取材・文=入江美紀雄
写真=伊藤大允

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