2025.12.30
東山高校(京都府)の佐藤久遠は、ルーキーながら優勝候補のスターティングファイブの一角を担い全6試合戦い抜いた。高校生活最初のウインターカップは惜しくも準優勝。悲願達成まではあと1勝届かなかったが、1年生シューティングガードが果たした役割は決して小さくはなかった。
「走ること、ディフェンス、シュートを打って得点を決める」。その言葉どおり、佐藤久遠は攻守において「SoftBank ウインターカップ2025 令和7年度 第78回全国高等学校バスケットボール選手権大会」のコートを駆け回りチームに貢献。オープンになればどんな状況でも迷いなくシュートを放ち、その果敢な姿勢が攻撃のリズムを生みだした。3点差で競り勝った八王子学園八王子高校(東京都)との準々決勝では15得点。決勝戦では福岡大学附属大濠高校(福岡県)に敗れたものの、背番号14は約37分コートに立って16得点をマークした。
ディフェンスでも相手のキーマンと対峙する重要な役目を担った。準決勝の福岡第一高校(福岡県)戦ではスコアラーの長岡大杜(3年)とマッチアップ。結果的に26得点の活躍を許してしまったが、大澤徹也コーチは佐藤久遠を長岡にマークさせ続けた。試合後にその理由を聞くと、指揮官は笑みを浮かべながら采配の意図を明かした。
「途中で久遠を呼んで、『あれが3年生の意地だぞ』という話をしました。3年生の意地を肌で感じてほしかったですし、『あなたはそれを止められるくらいのメンタルを持っているから、1本止めてこい』と伝えましたし、久遠を成長させるための1つの方法でもありました」
コートに立てば年齢や学年は関係ない。「先輩たちや試合に出られない応援団の人たちの気持ちも背負っているので、それを全部背負うつもりでプレーしています」。佐藤久遠はこの1年、覚悟を持ってプレーしてきた。1年前はまだ入学していなかったが、応援席でウインターカップの雰囲気を肌で感じたという。東山がベスト4で敗れる光景を目の当たりにし、「自分が試合に出ているわけでもないのに、泣きそうなくらい悔しかったです。だから今年はその悔しさを晴らしたいと思っていました」と振り返る。
「自分たちはこの日のために1年間死ぬほど練習してきた」。最後の力を振り絞って挑んだ1年を締めくくる一戦は、71-97という思わぬ大差で決着がついた。「最後は凪と『暴れて終わろう』って話をしていました」。佐藤久遠にとってタイムアップのブザーは、2つ年上の兄とともに東山で切磋琢磨した日々が終わった瞬間でもあった。
練習中からバチバチにやり合う意識高めな兄弟――。メディア向けの報道資料にはそう書かれている。大会期間中、「凪の弟というよりかは、自分は1人の選手なんだと気持ちでプレーしている」とも述べた久遠だが、一緒にプレーできるのは「人生で最後になると思っている」と言った。しかし、ウインターカップを終えたあと、兄の佐藤凪は弟についてこう口を開いた。
「今大会に限らずですけど、練習中もそうですし、僕が苦しいときとか下を向いてるときに真っ先に声をかけてくれるのはあいつなんです。本当に何回も久遠に助けられましたし、今大会は決して納得のいくパフォーマンスではなかったと思うんですけど、それでもなんとかチームを勝たせようと相手の3年生たちに向かっていく覚悟は本当にすごいなって思いました。自慢の弟なので、一旦ここで一緒に試合できるのは終わりになりますけど、またいつか、近い将来は同じチームでプレーしたいなって思います」
首にかけた銀メダルは、今後の東山を背負うルーキーにとって大きな原動力となるに違いない。体がボロボロになりながらも決勝戦まで導いた兄の思いも背負って、これからは“凪の弟”ではなく、東山の佐藤久遠としてチームを日本一へ押し上げる戦いが始まる。
文=小沼克年
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