2020.03.19
残り時間は10秒、フロースローラインには渋谷の石井講祐が立った。石井は何事もないかのようにフリースリーを2本決める。スコアは76-73で渋谷がリード。川崎はニック・ファジーカスからのパスを受けた辻直人が同点を狙って3ポイントシュートを放った。しかし、そのシュートはやや力なくリングの手前で失速。ボードに当たったリバウンドを渋谷の広瀬健太がキャッチすると、川崎はファウルで時間を止めるのが精いっぱいだった。
そして広瀬がフリースローを2本決めると勝負はここで決した。SR渋谷が前身の日立サンロッカーズ時代以来5年ぶり2回目の天皇杯制覇を達成したのだった。
石井講祐――昨シーズンまで千葉に所属し、天皇杯3連覇に貢献したその男のみがその権利を持っていた。それだけに大会期間中も注目が集まったが、常に表情を変えずコートに立ち続け、与えられた自身の役割を遂行するのみと、いつものようにクールな表情でプレーを続けた。
試合後、取材エリアでショートインタビューにこたえてくれた石井は、さすがに試合の緊張も解けたようではにかんだ笑顔を見せてくれた。
――おめでとうございます。チームが変わっているのに連覇という表現は間違っているかもしれませんが、それを意識はしていましたか?
石井 「4回連続で優勝できるチャンスだな」と思っていました。
――伊佐HC体制になって今シーズンは開幕ダッシュに成功しました。しかし、12月になり4連敗するなど、相手チームもアジャストしてきました。大会にはどのような準備をしたのですか?
石井 やっぱりいい時も悪い時も一貫性が大事だと思っているのですが、今まで続けていたことを変えてしまうと、自分が何を目指しているのかがわからなくなってしまいます。個人としてもチームも開幕前から準備してきたことを一貫してやってきたことをやり続けようと思いながら準備をしていました。
――やはりチームとして“やり切れた”ことが勝因ですか?
石井 そうですね。40分間を戦い切って、最後1点でも勝つというのが渋谷のスタイルなので。最後まで辛抱強く戦えたことが良かったと思います。
――勝負をほぼ決めた最後のフリースローはどんな気持ちで打ちましたか?
石井 たまたま最後のフリースローを打ったのが僕だったということです。それまでもディフェンスで試合をつないで、そしていいところでシュートを決めた選手が何人もいますし、チーム全体での勝利だと思います。
――緊張は?
石井 緊張はありましたけれど、ああいう場面でプレーできるように移籍したわけですから意外と落ち着いて打つことができました。入れる自信もありました。
――試合中にもチームメイトに積極的に声掛けをしていたように見えたのですか?
石井 僕がしてきた経験を伝えようとやはり声をかけていました。意識していたのは「いつも通り」ということ。それだけのものを築いてきていたと思いますし、それができれば勝てると思っていたので。特に決勝は1回きりなので意識してやっていました。
――今の気持ちを教えてください。
石井 うれしいです。最高です。でもやっぱり優勝は何回しても嬉しいことなのですが、まだまだ僕が成し遂げられることはたくさんあると思うので、満足せずにやっていきたいと思います。今は感情が爆発するというよりかは優勝を噛みしめている感じです。
――”持ってる男”石井は健在だったと。
石井 健在です(笑)。
取材・文=入江美紀雄
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