2020.01.11

6年目の成果をしっかりと表現したJX-ENEOSサンフラワーズの司令塔・宮崎早織

今シーズンは「ミスを引きずらないようになった」というJX-ENEOSの宮崎[写真]=伊藤 大允
フリーライター

準決勝で25分出場。攻防においてアグレッシブな動きを見せる

「勝てて良かったです、ほんとに。まさかリュウさん(吉田亜沙美)が前半で3回ファウルするとは思っていなかったので、準備はしていたのですが、『マジか』というのが正直な気持ちでした」

 試合後、記者に囲まれたJX-ENEOSサンフラワーズ宮崎早織は、こう語りながら安堵の表情を見せた。

「第86回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会」の準決勝、JX-ENEOSはトヨタ自動車アンテロープスと対戦。しかし、第1クォーターでスターターのガードである吉田亜沙美がファウル2つとなり、開始約3分でベンチへ。代わりに宮崎が出場すると、第2クォーターでもコートに戻った吉田が1つのファウルを犯し、結局、宮崎は前半で約17分出場。一試合を通して25分を戦い抜いた。

 だが、この早々の交代にも「予想外ではありましたが、ディフェンスは水島(沙紀)さんと三好(南穂)さんのところをフェイスガードするぐらい付くように言われていたので、ディフェンス面で準備はしていました」と宮崎。実際、外角シュートを得意とするトヨタ自動車のアウトサイド陣に執拗なマークを施した。

 オフェンス面でも「タクさん(渡嘉敷来夢)やレアさん(岡本彩也花)が主体的にやってくれて、助けられました」と言いながらも、安定したボール運びにパス、そして隙あらば果敢にドライブを試みるなど落ち着いたプレーでチームを盛り立てた。

「今まではスピードだけだったのですが、少しずつコントロールできるようになってきましたし、タクさんとのパスも合うようになってきました。練習から積極的にパスは出すようにしているし、リュウさんからもパスについて聞くなどしているので、そういったことをこの大きな舞台で出せたことは、自分自身、成長できたのではないかなと思います」と宮崎も自身のパフォーマンスには手応えを感じたようだ。

スピードを武器とする宮崎は司令塔として落ち着いたプレーでチームを引っ張った[写真]=伊藤 大允

6年目を迎え自覚と責任感がさらに芽生える

 今シーズン、吉田が現役続行を決めたこともあり、新人の2人を含めてチームにはガードが5人。年齢的には宮崎がちょうど真ん中になる。そんな環境もプラスに作用にしたのだろう。「今まで年下のガードはいなかったので、ずっと上の人に頼っていたというのがありました。でも、今シーズンは(新人の)高田静と星杏璃のおかげで私も自立しないといけない、負けていられないなと思ったし、上にはリュウさんとネオさん(藤岡麻菜美)がいて、2人にも負けてられないという気持ちがあるので、今は毎日挑戦できて、すごく楽しいです」と言う。

 開幕前のチーム作りの期間は、藤岡が日本代表活動、現役復帰を決めた吉田はコンディションを戻すことに専念していたこともあり、宮崎が中心となってガード陣を引っ張ってきた。開幕戦こそ「自分のことでいっぱいいっぱいで緊張していた」と納得のいくプレーはできなかったが、「梅嵜さん(英毅/ヘッドコーチ)が少しずつ使ってくれて、自分のいいところを出してくれた」と、12月に入ってからは徐々に自信も付けた。さらに「それまでは『ミスをしたら交代だろうな』と思いながらコートに入っていたけれど、それが『バックアップの選手がいるし、自分だけが出るわけではない。自分がやるべきことをやって交代しよう』と、気持ちをシフトチェンジできたのがここ何か月か。それがいい方向に向かっているのではないかと思います」と気持ちの切り替えがうまくできたことも大きかったという。

 そんな取り巻く環境が責任感もさらに強くさせた。一時、ルーキーの高田にスターターを譲ったことについても「もちろん悔しい気持ちはありましたが、それより1年目の選手にしんどい思いをさせて、自分は何をやってるんだという思いがありました」と語る。

 日本代表の先輩たちの背中を追いながらも、下からは追われる立場にもなったことで生まれた“変化”。また、その変化だけでなく、ここまで悩みながらも前に進んできた5年のキャリアも大きい。

「遅かったですね、ここまで来るのが。ここまで来るのに何年かかったか」と宮崎は笑うが、これまでを振り返って「何でこんなにダメなんだろう、何がこんなに自分の中で引っ掛かっているんだろうとか、何で練習で調子いいのに試合ではできないのかといったことをここ2,3年ずっと思っていました。出来るずなのに何がこんなに自分を止めているんだろうと。でも、今シーズンは(シーズン前に)リュウさん、ネオさんがいなかったことで、自分と向き合う時間が多かった。それにスタートのみんなもすごく声をかけてくれるので、本当に助けてもらいながらやれていると思います」と言う。

 入団から6年目を迎えた司令塔。これまでの道のりは苦しんだことの方が多いかもしれない。それでもそこで得たかけがえのない“経験”を“自信”に変え、今、大きな花を咲かせようとしている。

文=田島早苗

第95回天皇杯・第86回皇后杯のバックナンバー